■今回のまとめ
1)世界的な株高は、流動性を背景にしている可能性がある。
2)流動性相場が続くと、商品市場が上がる可能性もある。
3)商品市況が上昇すると、企業のコスト増加のシナリオが考えられる。
米国市場の上昇が続いていますが、流動性を背景にしている可能性があります。今回は、流動性が続いたときの投資マネーの動きについてレポートします。
昨日の米国市場では、NYダウが小幅続伸ではあったものの、2008年5月以来、3年8カ月ぶりの高値更新で取引を終了しました。
米国のFRBが「少なくとも14年末まで」事実上のゼロ金利政策を延長すると発表したのが1月25日でしたので、「流動性相場」の期待が株式上昇を支えている可能性も高いと思われます。
流動性相場は「不景気の株高」ともいわれる現象です。株が上がるのは、企業業績が良くなることが前提といえますが、景気が悪くなると政府や中央銀行が低金利政策を行った結果、行き場のないお金が「株式市場に流れる」というものです。
米国だけでなく、中国など新興国の経済成長が鈍化してきましたから、世界的な低金利政策継続の可能性が高まっています。このため、世界の投資マネーが「不景気の株高」を作り、NYダウが高値を更新していると考えることができます。
ただ、投資マネーが向かう先は「株式市場だけ」ではないといえます。2010年11月から2011年6月まで実施されたQE2(米国の量的緩和策第2弾)のときには、原油や金などの「商品市場」が大きく上昇しました。
現在の株式市場と商品市場をチャートで比較してみると、商品市場に出遅れ感が見られています。
NYダウ(株式市場)と代表的な商品市場をQE2実施時の高値と比較しますと、株式市場は高値を更新している一方で、原油やその他の商品(CRB商品指数)は、大きく出遅れていると見られます。
ただし、金市場については、リスク回避(リスクオフ)のときに投資マネーが退避する市場という傾向のため、株式市場が大きく下がったときに急騰したと考えられます。
最近では、投資マネーが活発に動くと「リスクオン」、投資マネーが安全性を求めて国債や金市場に向かうことを「リスクオフ」と表現されます。不景気であっても、低金利の流動性を背景にして「リスクオン」が続くなら、出遅れている商品市場に資金が流れる可能性も考えられます。
ここから考えられるシナリオは、投資マネーの運用者が「株は高くなったので、利益確定して商品を買おう」と選択することです。そうなると、割高な株を売って、割安な商品市場に資金が流れる可能性も考えられます。
もっとも、商品市場は米国の株式市場に比べてとても小さい市場ですので、一気に資金が流れて株式市場が急落するとは考えにくいことです。むしろ、原油などの商品が急騰してしまうと企業コストが上昇しますから、株価水準が高いだけに「新たな懸念材料」と専門家が騒ぎ出す可能性の方が現実的ではないかと思います。
一方、商品高のシナリオをネガティブではなく、ポジティブに受け止めるのであれば、国内株式市場で、総合商社や石油、非鉄などの資源関連銘柄が注目される可能性もあります。
ただし、前提としては「リスクオンが続く」ということです。欧州の財政問題だけではなく、何かの危機が起きて「リスクオフ」になれば、株式市場も商品市場も急落する危険性は十分にあります。
個別株でも株が急落するときはとても早く、数ヶ月ゆっくり上がった分を数日で吹き飛ばしてしまうことが何度も起きています。注意しても突然起きる急落は避けられませんから、個人投資家は「大きく上昇したら現金化する」「高値では買わない」という「リスクオフ」の予防策をすることが重要だと思います。
レポート担当:ケンミレ株式情報 市原 義明
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