昭和三丁目の真空管ラジオ カフェ

昭和30年代の真空管ラジオを紹介。
アンティークなラジオを中心とした、自由でお洒落な、なんちゃってワールド♪

東京芝浦電気(TOSHIBA) かなりやLS 5AD-128 

2006-07-07 | 東芝 かなりやシリーズ
 昭和30年前後のラジオには、中波による通常のAMラジオのみが受信できるタイプと、中波/短波の2バンドを切替えて聞くことのできるタイプの2種類のラジオがある。かなりやシリーズの中で、短波放送の受信に重点を置いて設計され、昭和32年(1957年)発売された機種が、かなりやLSである。

          

 ラジオ放送は、周波数帯と電波形式により分類され、①AM放送(中波/MW)、②短波放送(短波/SW)、③FM放送(超短波/VHF)の3種類の放送が行なわれている。短波放送は、短波(3MHz~30MHz)の周波数特性である電離層反射により、電波が遠方まで到達するため、適切な周波数を選べば、日本全国あるいは全世界へ向けて『情報』を届けることができる。

 昭和29年(1954年)8月末、日本で唯一の民放短波放送局として日本短波放送(通称NSB)は開局した。リアルタイムで全国へ情報を配信するニーズが日本短波放送の原点であり、平日は株式市況、週末は中央競馬の実況中継を中心に番組は編成され、夕刻以降は「医学講座」「百万人の英語」「大学受験講座」「慶応義塾の時間(慶応大学通信制の支援番組)」など全国に散らばるリスナーを対象とした独自の番組を提供していた。

          

 当時のかなりやLSのパンフレットには、「世界の電波をたやすくキャッチする”かなりやLS”」とのキャッチコピーに続き、「短波が快適に受信できる4特長」として

1.短波受信用として特に高感度に設計してあります
2.針が繊細に動く大型バーニヤダイヤルと大型つまみ付で短波がたやすくキャッチできます
3.高能率スピーカーと新型真空管30A5付で、小型HiFi的音響効果
4.美しいグリーンオリーブ色を基調とした優雅な意匠により、ゆったりと落ち着いた気分で放送が聞けます

と大袈裟に謳ったコピーが続き、高度経済成長を迎えた当時の『時代の勢い』を感じさせてくれる。
 しかし基本設計は、通常のmt管5球スーパーと変わらず、バンド切替えロータリースイッチに直付けされたコイルあたりに「短波受信用として特に高感度に設計」された意図はうかがえるのだが・・・・利得損失軽減を目論と実際の効果の程は、甚だ疑問である。

          

 外観は四角いキャビネットの四隅にラウンド処理を施すとともに、中央にふくらみを持たせたヴォリューム感のあるフォルムと、正面を黒(メーカーはダークグリーンと呼んでるが・・・)/ホワイトのツートンカラー、さらに横スリットを入れた形成処理を行ない精悍さを演出している。後にパールホワイトのキャビネットも発売し、こちらはエレガントな印象である。かなりやLS 5AD-128が発売された4年後の昭和36年(1961年)に、同一機種名のかなりやLS 5YC-501が発売されているが、その関連性は別途検証する。

          

 メーカー:東京芝浦電気(TOSHIBA)『かなりやLS 5AD-128』

 サイズ : 高さ(約16.5cm)×幅(約34cm)×奥行き(約14cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1650KC/短波 3.9MC~12MC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BD6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 人気の「かなりやシリーズ」はジャンク品であってもオークションでは高値で取引されることが多い。しかしこの かなりやLS、オークションの出品者のコメントには「知り合いに確認したところ、少し調整すれば動くようです」と書かれてあったが、状態は不明。結局、居酒屋1回分の値段で、怪しさ気な かなりやLSをすんなり手に入れることができた。

          

 宅配便で届いた荷物を開梱し、いつものように外観の目視点検から始めた。プラスチック製キャビネットは数十年の間に付着した汚れ、黄ばみ、擦り傷があるものの、パーツの欠品も無く外観は中程度の部類である。
しかし・・・裏蓋を取外すと、年代相応の埃が溜まっており、外れていた周波数表示用指針がポロリっと出てきた。ヒューズは取外され、真空管もマツダ(東芝製)のものからNEC製に取替えられている。OPTへの結線も外され、怪しさが増幅する。

          

 キャビネットからシャーシーを取外してみると、案の定、バリコン・プーリーの糸掛が外れ、テンション・スプリングも無い。トランスレス・ラジオには珍しく、パイロットランプが2個付いており、バンド切り替えと連動して点灯する仕組みであるが、ゴムブッシュは劣化しており、交換を要する。当時のラジオをレストアする場合、これらの不具合は想定内なのだが・・・・。ただ何箇所か新たにハンダ付けした様子も見受けられ、前オーナーが修復を途中止めして投げ出したようなラジオはとてもボクの手に負えそうにない。
以前ご紹介したタイマーラジオかなりやPSなど、重症のラジオを思い出し、眩暈(めまい)がしてきた・・・。

          

 短波受信用として特に高感度に設計してあるというこのラジオ、当時のパンフレットに書かれていたように、、「世界の電波をたやすくキャッチする」のだろうか・・・? 「高能率スピーカーと新型真空管30A5付で、小型HiFi的音響効果に包まれながら、ゆったりと落ち着いた気分で放送が聞ける」のだろうか・・・??

          

 パンフレットの誇大広告気味のコピーを笑いのネタにしようとした目論見は外れ、凹んだ気分に追い討ちをかける。とりあえずシャーシーをエア吹き清掃後、重症と思われるかなりやLSを眺めながら、試案に暮れストレスが限界値にまで高まる、トホホな夜である。

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 日本短波放送は昭和53年(1978年)11月に局名を「ラジオたんぱ」に変更。
平成15年(2003年)社名を(株)日本短波放送から(株)日経ラジオ社に、続いて翌平成16年(2004年)4月には局名を「ラジオNIKKEI」へと変更した。

              
             
 日本経済新聞社の幅広く、有益な人材・コンテンツをグループ唯一のラジオ局として有効に活用・利用することで、これまでのリスナーからの期待に十二分に応えるとともに、新たなリスナーを獲得する制作体制整備とコンテンツ開発力に弾みをつけ新時代に備えていくそうである。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ぐふふ。 (ちゃぼた)
2006-07-08 23:29:11
店長、この手のラジオには、目がないですね(笑)僕も、オークション貧乏人生まっしぐら!ホント、オークションのコメントの付け方も、スキルアップ(笑)してますね!
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わらしべ長者 (店長)
2006-07-09 12:50:23
ちゃぼたさん、あれからオークションには出品されてませんか?

入札するのは止めよう!と心に決めても、無意識に入札ボタンを押してしまってるこの頃です。

ど~したもんだか・・・
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