昭和三丁目の真空管ラジオ カフェ

昭和30年代の真空管ラジオを紹介。
アンティークなラジオを中心とした、自由でお洒落な、なんちゃってワールド♪

東芝(マツダ)  かなりやQS 5LQ-269

2007-11-18 | 東芝 かなりやシリーズ
 東芝かなりやシリーズの魅力は、昭和30年代の10年間、時代の消費者ニーズを捉えようと、デザイン的な試行錯誤を重ねた『バラエティーあふれる豊富なデザイン性』にある。今回は、かなりやシリーズの中でもトップクラスに入る奇天烈(キテレツ:奇想天外)なデザインのかなりやQSを紹介します。

        
 昭和32年('57)、R-7ロケットで史上初の人工衛星スプートニック1号の打ち上げに成功したソビエト連邦に対抗したアメリカ合衆国は、昭和33年にジュピターロケットによりエクスプローラ1号の打ち上げに成功。 昭和30年代から40年代は、米・ソの2大国による宇宙開発競争に、世界中の人々が興奮し、固唾を飲んだ時代でもあった。
日本も昭和33年('57年)から始まった国際地球観測年(IGY)への参加を決め、数々の工夫と試行錯誤を重ねた結果、2段式ロケット、カッパ6型の開発に成功。翌年、上層大気の風速風圧と宇宙線観測に成功し、国際気象観測年(IGY)への参加を果たした。
        
         ▲ランチャーに設置されたkappa(カッパ)型ロケットと見学者

 そんな時代の中、キャビネットのデザインに工夫を加え、アバンギャルド(前衛的)な意匠をこらし、消費者にアピールした機種の一つがかなりやQSである。
かなりやQSのキテレツ振りは凄まじく、ロケットを連想させる円錐状の形成処理された白いラインがロイヤル・ブルーのキャビネット正面を横切る。
ロケットの噴射機部分に縦型ダイヤル、尾翼部分の上下に二つのツマミが配置され、人々の「宇宙への憧れ」を盛り上げようとしたデザイナーの意図がうかがえるデザインだ。
        
         ▲青空に飛翔するロケット・・・に見えます?

 かなりやシリーズが発売される以前からリリースされていたマツダ・ピアノラジオ や 地球儀ラジオ といった洒落っ気たっぷりのラジオには及ばないものの、
ロケットをモチーフにデザインされたかなりやQS の当時のメーカー担当者やデザイナーが大真面目に議論している姿を思うと、つい笑ってしまう。
ちなみにロケット噴射機部分の縦型ダイヤルは、選局ダイヤルではなく音量調整用ダイヤルだ。下側のツマミが選局用で、上側は電源ON/OFFを兼ねた中波/短波切替スイッチです。
工業デザインの視点から考えると、あり得ない配置だが、今のようにマーケティング理論やデザイン工学も発達していなかった当時って、大雑把でホントにいい時代じゃなかったのかな・・・と微笑ましくさえある。
        
 かなりやQSはオークションに出品されることも珍しく、過去2~3回遭遇したが、キャビネットに大きな欠けがあったり、落札価格が高騰し、捕獲できなかった機種でもある。
ところが最近、真空管ラジオ人気が下火になったのか、このかなりやQSのキテレツなデザインにアンティークラジオファンは引いてしまったのか、居酒屋1軒(キャバクラ1セット)に立ち寄る価格で落札できた。

 メーカー:東京芝浦電気(マツダ)『かなりやQS 5LQ-269』

 サイズ : 高さ(約16.5cm)×幅(約31cm)×奥行き(約12cm)

 受信周波数 : 中波 530KC~1650KC/短波 3.9MC~12MC

 使用真空管 :12BE6(周波数変換)、12BA6(中間周波数増幅)、12AV6(検波&低周波増幅)、30A5(電力増幅)、35W4(整流)

 宅急便で届いた かなりやQSは、何十年も放置されていたのだろう・・・プラスチックキャビネットの表面は脂質が抜けた状態になっており、全体の汚れも酷い。
幸いエンブレムやツマミ等の欠損や酷いダメージは見られない。
裏蓋にトグル・スイッチを取付けるなど、改造が施されている・・・回路図との付き合せが必要となるので、レストアするにも厄介だ。
        
キャビネット内部は、いつもながら汚い! 堆積した大量の埃とかび臭さには毎度、閉口するが、まぁこれも誰の手もついていない初出し品の証拠・・・・ 掃除屋・店長の腕の見せどころだ♪
同時期に発売された かなりやPSと同様、バリコン・コイル・バンド切替スイッチで構成されたユニットと、真空管他主要部品を搭載したプリント基板ユニットに別れた設計になっている。
        

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1 コメント

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Unknown (感電するのはいや)
2008-10-23 17:40:10
金属部品に触ると感電するトランスレスの真空管ラジオ、どの家庭にもこれでラジオ体操からナイター、落語まで聞いていました、カッパー6型固体ロケットはIGYで60kmまで観測し、その実績を評価されユーゴスラビアとマレーシアに輸出されました。ロケットの搭載電子機器もすぐに寿命がくるガラスでできた電池式真空管から省エネ小型のトランジスター回路に代わる時期でした
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