昭和三丁目の真空管ラジオ カフェ

昭和30年代の真空管ラジオを紹介。
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National RADIO NC-60 - NC-Sixty Special - (1)

2008-11-10 | アメリカ製真空管ラジオ
大ヒットした入門用受信機Hallicrafters S-38シリーズの最終モデルS-38Eに対抗して発売された、米国National Radio社 NC-60 "NC-Sixty Special" (’59-64年製造)を入手したのでご紹介する。
    
    ▲National RADIO Co., INC.  NC-60 "NC-Sixty Special"(1959)
 Hallicrafters S-38シリーズは、’46年から仕様の変更を重ねながら’61年まで、15年間にわたり生産され続けるほど大ヒットした入門用受信機であり、日本製の受信機にも大きな影響を与えた。通常の製品は、後期の方が改良・改善されるものだが、本機の場合は、'46年に発売された最初の S-38 から徐々に機能の省略化とコストダウンが行われていった点が興味深い。S-38の爆発的ヒットに影響を受けた National Radio社は、’50年に入門用短波受信機 SW-54(’50-58年)を発売し、そこそこ売れたようである。
    
    ▲(左上)S-38  (左下)SW-54      (右上)S-38E  (右下)NC-60
 一方、Hallicrafters 社の S-38は、そのアイデンティティとも言える、左右向い合わせの半円形状周波数インジケータがレイアウトされた秀逸なフロントパネルデザインをS-38Cで終了した。S-38Dからは大型横行き形状の周波数インジケータがフロントパネルを占めるデザインへ変更し、大幅なイメージチェンジが行なわれた。
Hallicrafters 社 S-38の大幅なモデルチェンジに伴い、National Radio社は、SW-54の後継機として、’59年に大型横行き形状の周波数インジケータを採用したNC-60(NC Sixty Special)を発売。これを追うように、日本製受信機も横行き周波数インジケータ・タイプの9R-59などの機種が相次いで発売された。まだこの時代の日本は、工業先進国アメリカのデザインに追従しつつ、機能と品質向上を重視する時期だった。
    
    ▲落札したNC-60は天板と側面に錆が浮いている・・・・残念!
 National Radio社NC-60 "NC-Sixty Special"は、すべての真空管にミニチュア管を採用したトランスレス5球スーパにBFO回路を加えたシンプルな回路で、中波540kHz~31MHzを4バンドに分割・連続カバーする。短波帯のデリケートな選局微調整を容易にするスプレッド・ダイヤル機構、モールス信号を受信するBFO回路を搭載し、世界各地からの電波をキャッチする受信機として登場した。なおSW-54は、’50年の発売時点で既にHallicrafters 社に先駆けミニチュア管が採用され、整流管のみGT管35Z5だったが、NC-60では整流管もミニチュア管35W4に変更されている。
    

  メーカー  : National RADIO Co., INC.  NC-60 "NC-Sixty Special"(1959)
  サイズ   : 高さ(約195mm)×幅(約343mm)×奥行き(約220mm) 5 .4kg
  受信周波数 : 中波 540~2000kC/2.0~8.0MC /8.0~30.0MC
  使用真空管 :
  12BE6   局部発振・周波数変換
  12BA6   中間周波数増幅・BFO
  12AV6   検波・初段低周波増幅
  50C5    低周波出力
  35W4    整 流
  電 源  : AC 110-120V/50-60cycles
  スピーカ: Permanent Magnet Dynamic Loudspeaker (moving coil)

 ヤフオクに出品されていたNC-60は、ブルー/ブルー・グレーのコンビネーション・カラーのスチール製キャビネットの天板と側面に錆が浮いている。フロントのプラスチックパネルには一部ひび割れがあるが、比較的キレイな状態である。通信型短波受信機というより、盆踊りの時に拡声器と一緒に使われるチューナー・アンプ・・・?! に似てると感じるのはボクだけだろうか(笑)
    
    ▲お洒落なブルー/ブルーグレーのカラーリングのキャビネット
NC-60 "NC-Sixty Special"のキャビネットは、①ブルー/ブルーグレー、②ブラック/グレーのコンビネーションおよび③ブルー単色の3種類のヴァリエーションがあったようだが、その仕様の詳細な違いは不明。
    
    ▲(上)ブラック/グレーのコンビネーションおよび(下)ブルー単色 のキャビネット
 インダストリアル・デザイナーの視点で見た場合、同じ横行きダイヤルの短波受信機でも、ライバルであるHallicrafters S-38Eは、造形美も含めて "大人の短波ラジオ" としての趣が醸し出され、無骨なNC-60と比べ断然スマートだ。
    
    ▲ライバルであるHallicrafters S-38Eは、NC-60と比較すると断然スマート
 戦後、高級通信型受信機が続々と市販されている米国で、「手軽に短波放送を味わってみよう」という人々にとって、ブルー/ブルーグレーの明るい色調にカラーリングされたNC-60は、"通信機の重さ" を感じさせず、入門者に敷居の低い短波受信機として提供されていたことが、当時の広告から推察できる。
        
 NC-60の特長でもある大型横行き形状のメインダイヤル周波数インジケータには、marine(船舶無線)、aircraft(航空無線)、amat(アマチュア無線)、foreign(海外放送)、wwv(標準電波)といった短波帯を使用する電波の業務区分別の帯域表示が細かく印刷され、世界各地から届く微弱な電波に乗った "情報" に浸る楽しみが、この箱にギッシリ詰まっていることを物語っている。
    
 世界中を駆け巡る微弱な電波は、季節や時間帯、電離層のコンディション、受信機やアンテナの機能などの様々な要因により、キャッチできたり、できなかったり日々変動する。そうした不確定要因の中から、偶然の延長線上として思わぬ遠方の電波を捉えたとき、受信者は発信元に手紙で受信状況をフィードバック(報告)し、発信者はその報告へのお礼を込めて「報告された電波が自分が発信したものに間違いない」ことを確認する証であるVerification Card(受信確認証)が発行される。こうして世界各地から届く業務無線の電波を傍受するSWL(Shortwave Listening / Listener)や、遠隔地の放送局の番組をキャッチすることに勤しむBCL(Broadcasting Listening / Listener)たちにとっては、受信した証をコレクションすることも楽しみの一つなのである。

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7 コメント

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NC-60とS-38E (ラジオ親父)
2008-11-13 21:44:59
店長殿
どちらも似たような構成のトランスレス5球スーパーですが、店長殿の仰るとおり断然S-38Eのほうが洗練されていますよね!
もっとも親父は根っからのハリクラファンですが(笑)
横行ダイアルの受信機はあまり好みではありませんが、S-38Eならいいかと食指が動いています
別室に単独で置いてBCLラジオと割り切れば、良いインテリアかも?
丁度ヤフオクに程度の良いものが出品されているので思案中で~す
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おひさしぶりです (ヒロ)
2008-11-13 23:17:19
この前は、思いがけない場所で再開できて、びっくりしました。この度は当社をご利用、ご搭乗いただき、ありがとうございます。でもまさかニイニイがClass-Jに乗り込んでくるとは思いませんでした・・・・ でも思いっきり熟睡してましたね。
ラジオは大人の趣味なので私には理解できない部分も多いながら、私の狭い部屋に置いてもおしゃれだと思います。
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NC-60とS-38E (店長)
2008-11-14 22:40:59
今日は6時までの会議を終え、同僚8人と居酒屋ミーティングを終え、今しがた帰宅し、ホッと一息ついたところです。
昨日は同級生の警察官・救急救命隊員の野郎3人が集まり安い焼き鳥屋で飲み、やっぱ連荘はきついっすね。

ラジオ親父殿
実はラジオ親父殿と同じ品を狙ってましたが、今、¥13000の値をつけてますね。
先日、S-38DM(マホガニーのキャビネット)が、¥30,000で落札されたのにはちょっとビックリでした。e-bayだと本体より送料の方が高いので、こちらも微妙ですね。

ヒロ様
いや~~~~、こちらこそビックリしましたよ!
ANAのスーパーシートは勿体なくて座りませんが、クラスJならチョットだけ自分へのご褒美に利用します。
しかし全然気付きませんでした!!
hallicraftersはプレゼントできないけど、国産品なら1台あげようか?
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NC-60 (ラジオ親父)
2008-11-15 18:12:10
店長殿
NC-60のリペア記録をアップしました
古物etcのところにあります
S-38Eの入札は微妙なところですね?
熱くならないようにしよ~(笑)
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9R-59 (かめ)
2008-11-16 13:02:23
店長 さま

今日は日曜日、1人で勤務しています。
3ヶ月ほど前の明け方、道路の向かいの電柱に車がぶつかって、電柱を壊してしまいました。今日は電柱の交換で半日停電しました。
応急修理で壊れた電柱を補強し、そばに臨時の鋼管柱を建てて通電し、壊れた電柱を抜いて新しいコン柱に交換、新しいコン柱にトランスを乗せ換え電線を張り替えるそうです。それに30mぐらい伸びる大きなクレーンも来ています。これって、任意保険に入ってなくて、全額工事費を請求されたらびっくりしますよ!

さて、本題のラジオに戻ります。
アマチュア無線をはじめた時、トリオの9R-59を使っていましたが、NC-60やS-38Eがお手本になっていたのは知りませんでした。9R-4シリーズのお手本もS-38だし、当時はアメリカのコピーだらけだったのですね。私もオークションのS-38Eを見ました。2万円ぐらいで落札されたようですね。
ではまた
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S-38E&9R-59 (店長)
2008-11-17 22:08:14
今しがた帰宅しました。月曜だというのにトホホです。

ラジオ親父様
NC-60のリペア記録拝見しました。店長風にリライト、アレンジさせていただきます♪
しかしS-38Eにしても、Hallicraftersのデザインは、なぜこうも人を惹きつけるんでしょうね。

かめ様
9R-59は高1中2の回路構成に加え、NC-60よりは遥かに上等な受信機に見えるのですが、実際に使った感じはどうなのでしょうか? 
科学教材社か川島電機だったかプラグインコイルを使ったシングルスーパーキットで短波を聴いていた時期がありましたが、12MHzより上の周波数では使い物にならなかった記憶があります。

無灯火で歩道を走っていた中学生の自転車が、お年寄りと衝突し、死亡事故となりました。結果は、中学生の責任100%で3600万の賠償責任が生じたとか。。。
安全衛生委員会での報告に、自転車でもバカにならないと愕然とした次第です。
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9R-59 (かめ)
2008-11-20 08:54:24
店長様

もうずいぶん昔のことなので、良く覚えていないのですが、9R-59は10Mhzより上になると、極端に感度が悪かったと思います。当時、電話級だったので14Mhzの感度がどうだったかは分かりません。3.5と7Mhzは問題ありませんでした。21と28が電話級にも開放になりましたが、そのままではローカル局しか聞こえなかったと思います。先輩(ハリクラを持っていた)所に行ったら、21と28はクリスタルコンバーターを作って、21と28Mhzを10Mhzあたりに変換して受信していました。その感度の良さにびっくりして、私もコンバーターを作って、21と28Mhzで使っていました。21は電離層にスポラディックEが発生すると、北海道など国内のDXが聞こえてくるし、外国とも交信が出来たので良くON THE AIRしました。当時太陽黒点が少なかったのか?28はあまり聞こえなかったように思います。
当時の受信機は、バリコンは同じもので、バンドごとにコイルを切り替えて、500Khzから30Mhzまで、受信するのですから、いくらバンドスプレッドがあるからといって、周波数が高くなると周波数が詰まってきて、「チョットツマミに触っても極端に周波数が動いてしまうと言う感じでした。それに比べると、コリンズの最小メモリはどこのバンドでも1Khzですから、どの周波数でもメインダイアルを廻した時の感覚がが同じなのは感動ものでした。
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