昭和三丁目の真空管ラジオ カフェ

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BCLブームの立役者 スカイセンサー5800 VS クーガ115

2006-12-02 | 三流オトコの二流品図鑑
男の『脱』一流品図鑑 (第1回)
 第1回目は、1970年代から80年代にかけて中高校生の間で世界中からのラジオ放送を受信するBCLブームが巻き起こった頃のワールドバンドラジオを紹介する。テレビゲームもなく、まだ外国が今ほど身近に感じられなかった時代である。

          

 BCLとはのBroadcasting Listening / Listenerの略で、放送受信を楽しむマニアのことである。基本的に海外の「短波放送」を聞く趣味を指すが、国内全国各地のAM民放ラジオ局の受信を楽しむ場合や、逆にアジア・太平洋・北米の国内向けAMラジオ局まで受信する猛者もいた。

 チューニングダイヤルを回しているとノイズが急に消えて、ラジオオーストラリアのワライカワセミの鳴声やイギリスBBC放送のビックベンの鐘の音が浮かび上がって聞こえてくる短波放送から中高校生はナマの『外国の情報、異文化』に遭遇し、心を躍らせた。
 もちろん、海外の短波放送といっても、日本語以外は判るはずもないから、各国の日本語放送とID確認(identificationの略:アナウンスほかにより放送局名を確認する手段)できる英語放送を必死になって聞いていたものだ。

 蛍光灯からの雑音を避けるため、部屋を暗くして白熱灯の灯りを頼りにダイヤルを回す。短波のいくつかある放送バンドをサーチしながら、季節や時間帯、周波数帯により日々変化する電波のコンディションを空電ノイズや常連局の状態から把握し、雑音や混信の隙間をぬって時として聞こえてくる地球の裏側からの微弱な放送を受信できたときの気持ちは、体験した人にしか理解しえない大いなる感動である。
 当時、“幻の日本語放送局”と呼ばれたRAE アルゼンチン国立放送や西ドイツのDWドイチェベレのかすかな電波を探りあてて、胸を躍らせたラジオ少年も少なくないはずだ。

          
     HCJBアンデスの声、RAEアルゼンチン国立放送、DWドイチェベレのベリカード

 外国からの電波を受信するトキメキ感に加え、その放送局へ受信報告を送ると多彩なデザインのベリカード(Verification Cardの略称:受信確認証)が外国郵便で送られてくることもBCLの大きな魅力の一つであった。またお気に入りの放送局に投稿したり、ラジオやアンテナを作ったり、研究成果を雑誌に投書したり、見知らぬ国の言葉にチャレンジしたりと、少年の「知的好奇心」を大いに刺激し、惹きつけた。

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 BCLブームとともに、大手家電メーカー各社は競って高性能短波ラジオを製造・販売する。特にソニーとナショナルは人気を二分し、BCLブーム初期の頂点が、ソニー・スカイセンサー5800 (ICF-5800)とナショナル・クーガ115(RF-1150)の相乗効果にあったことは有名である。

          
          ソニー スカイセンサー5800とナショナル クーガ115の広告

 ソニーは、すでに発売されていたスカイセンサー5500の基本設計を短波受信機能に重点を置いた内容へ大幅に見直し、アマチュア無線や業務無線が使っていたCW(モールス信号)やSSBの電波を再生できるBFOを搭載、短波3.9~12MHzまでしか受信できなかった周波数を3.9~28 MHzまで受信できるよう拡大したスカイセンサー5800(20,800円)を'73年4月に発売、BCLブームの火付け役となった。

          

 ソニーに遅れること1年半の'74年11月、スカイセンサー5800の爆発的ヒットに刺激されて各メーカーが参入し始めた時期に、ナショナルは「世界を聴く」のキャッチフレーズで1.6~30 MHzへ周波数を拡張とフライホイールのチューニングダイヤル、クーガ7で話題を集めたジャイロアンテナも採用したクーガ118(¥42,000)を発売したが、さほど人気は出なかった。

          

 しかし翌'75年にデザイン・コンセプトを一新したクーガ115(26,900円)を発売した。クーガ118の持つ機能に加え、メインダイヤルで探し出した周波数を微調整できるファインチューニングダイヤル、ボディの質感を高めたシルバーに輝くアルミパネルの採用、16cmスピーカーによる音質の良さがウケて大ヒット、BCLブームに拍車をかけることになる。

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 昨年の秋、オークションでスカイセンサー5800とクーガ115をたて続けに手に入れた。

          

埃と汚れにまみれたスカイセンサー5800を丁寧に洗浄・清掃すると、深みのある艶消しブラックのボディとその中央に位置するチューニングダイヤル、クロムメッキされたスイッチやモール類、ライトグレーのツマミ類が甦る。これらパーツのレイアウトとカラーコーディネートが単なるラジオを超えた「計測器類を連想する重厚なイメージ」を醸し出す。

          
        航空機のコックピットをイメージしたスカイセンサー5800の取扱説明書

 スカイセンサー5800の電源スイッチをONにして、まず中波を聴いてみた。メリハリの利いた良質な音で、国内各地の民放ラジオを受信する。
次にバンドスイッチを短波に切替え、FAST/SLOWのギア切替え機構のついたチューニングダイヤルを右左へ微妙に動かしながら、耳を研ぎ澄ませて雑音や混信の中から受信音と放送局名を確認する。作業は、今日のPLL式デジタルラジオでは絶対に味わえない「電波をハンティング」する感覚だ。若干メカニカルな音質は、混信や雑音の中から自分自身の耳で目的の電波を聞き分ける「聴覚フィルター」の役割を高めてくれる音でもある。

          

 一方、クーガ115は、当時各社から発売されるBCLラジオがブラック&ダーク系のカラーが大半を占めていた中で、クーガシリーズの造形コンセプトを継承しながら、ボディの前面にスクラッチ処理を施したアルミパネルを使用。16cmスピーカーを強調した高級感漂う、極めてオシャレなデザインである。
 中波の民放ラジオやFMを聴いてみた。指向性のあるフェライトバーアンテナを180°回転させ最適な方向から電波を捉えるジャイロアンテナを回し、目的の放送局を探し出す操作は、ワクワク感が高まり妙に楽しい。また現代のPLL式ラジオの音が安っぽく感じるほど、16cmスピーカーの奏でるダイナミックレンジの広い豊かな音質に驚かされる。
 対抗機種のスカイセンサー5800と聴き比べた場合、好みの問題はあるにしても、「混信や雑音の中から微弱な電波を拾う」という基本性能に関しては、ソニーに一日の長があると感じる。

          

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 クーガ115のヒットで盛り上がる'75年、ソニーはスカイセンサー5800の後継機を発表した。クリスタルマーカーとスプレッドダイヤルを併用し、『直読ダイヤル』と名づけた周波数10kHz直読機能とダブルスーパー回路を組み込んだ スカイセンサー5900(27,800円)である。。
ソニーを追うカタチで1年後、ナショナルは500/125kHzのダブルチェックマーカーによりスプレッドダイヤル不要な『直ダイメカ』と呼ぶ周波数10kHz直読機能を搭載するクーガ2200(34,800円)を発売、両メーカーは以前にも増して激しいシェア争いとともに、BCLブームを絶頂期に導いたのであった。

          
         ソニーICF-5900('75年発売)とナショナルRF-2200('76年発売)

 10kHz直読機構やPLL式周波数デジタル表示機能が搭載された機種が発売される以前に発売されたスカイセンサー5800、クーガ115といったアナログチューニングのワールドバンドラジオでは、“ダイヤルを回して目的の放送局を耳で確認する”、いわゆる「手探り受信」により、目的の放送局を探し出していた。
「手探り受信」は「だいたいこのくらいかな」というところにダイヤルをあわせるため、放送が始まらないとそのチューニングが正しいのか間違っていたのかが判らない。 そのため、放送開始の「こちらは○○放送です」というアナウンスや、インターバルシグナル(放送前に流れるその局独特の音楽)を聴くなど偶然に頼るしかない。僅か数十分から1時間単位でしか放送されない海外放送を受信するには、放送開始前から目的の放送局の周波数前後に聞こえる放送局をまず探し、ダイヤルを慎重かつ小刻みに回して最終的な電波を探りあてる動作を必要とした。

 趣味の醍醐味は、『準備段階を含めた自分の時間と空間』にあると言える。
最近、当時のワールドバンドラジオを手に入れて、夜中にラジオ放送を楽しむオヤジが増えつつあると聞く。

 30年という時代を超えた「男の『超』一流品」は、仕事や日常にチョイ疲れ気味のオヤジに、まだ純粋だった元少年の頃の夢を今に甦らせる一品である。
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6 コメント

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お久しぶりです。 (UZ@仕事中 A^-^;)
2006-12-03 19:08:43
店長さん、1周年 おめでとうございます!
今後 益々の ご発展を お祈りいたします。

さて、σ(^_^) も 5800&115 には 現役で ハマった口でして、
当事 新聞配達をして 5800 1台のみ 購入しました。
BCL 作業は これ1台で 全て まかなえてた 気がします。

30年以上経った今、某オークションで、当事 買えなかった
BCL 名器たちを 大人買いしています。
特に 上記 名器達は 何台 所有しててもまた 欲しくなるもので、
レストア完品も 何台か 友人に譲りました。

今 手元に 残ってるものは、
5500 3台。5600 2台。5800 4台。5900 1台。
115 2台。118 2台。2200 2台。クーガ7 5台。
888 黒3台、赤2台、青2台。こんな感じです。

まあ、店長さんと同じで、病気です。(^^ゞ

あ、そうそう、「INSPIRE」 シリーズ 2曲目 完成しました。
良かったら 聴いてみて下さい。

http://www.fancyfree.jp/INSPIRE_UZ/E3.htm
ラジオ病友の会 (店長)
2006-12-03 21:29:12
UZさん、ご無沙汰しております。
ギックリ腰も癒えたと思ったら、もう12月・・・年々1年過ぎるのが早く感じるのは、年のせいか、世の中のスピードが早くなってるからなのか。

ICF-5800は噂によると100万台以上出荷したとか。
マスターが勤められていたメーカーからも、重厚長大産業グループ的なデザインのジー○ムが発売され、ラジオ短波で「ハロー、ジー○ム」なるBCL向け番組を放送していたらしいですね。

マスターも当時の反動で、思いっきり「大人買い」されてるのも、当時のラジオが、男の『超』一流品だからこそだと思います。

「INSPIRE」のレコーディング順調ですか?
明日の昼休みにでも、聴かせていただきます♪
1周年おめでとうございます(^-^) (yuki)
2006-12-05 00:23:14
これからも高尚かつちょっぴりマニアックな記事を楽しみにしてます(≧▽≦)
高尚かつちょっぴりマニアックな・・・ (店長)
2006-12-05 22:51:11
yukiさん
いつも、知性と品格溢れる当ブログにおこしいただきありがとうございます。
 「知性? → 恥性 の間違いじゃないの?!」 
と、約1名からツッコミ入れられそうですね。

店長のおバカさん指数も、これからますます上昇しますが、引き続きコメントを宜しくお願いいたします♪
質問です (BCL小僧)
2015-05-08 23:41:31
はじめまして、
私めも、40年ぶりに、他人の家で、最近
古い5800を見つけて、手に入れ
オークションでクーガをふたたび手に入れ、
ました。ところで、5800を洗浄したとありますが、どういった洗剤等を使用するのでしょうか?教えてくださいませ 
Unknown (Unknown)
2016-02-25 03:31:27
sony icf-5800L

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