湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

※旧ブログの一部コラム・記事、全画像は移植していません。こちらのコンテンツとして残します。

ファリャ:三角帽子第一組曲・第二組曲

2018年12月20日 | その他ラテン諸国
ロジンスキ指揮RPO(westminster/scribendum他)1958/4-5・CD

ロジンスキは色々振っているものの割と演目を選ぶところがある。得意はリヒャルト・シュトラウスをはじめとする近現代の中欧音楽であり、次いで国民楽派以降のロシア音楽。規模が大きな作品ほど板についてくるのはミトロプーロスのように即物的指揮者であるせいか。余り作品によってスタイルを変えることなく技巧で押し通すうえで、センスに合う合わないは出てくるもので、ラテン物は合わない方だと感じる。リズム感があまり良くなく縦に整えた感じが強い(それでしかもドイツ的な表現主義の雰囲気もない。特徴はゼロである)。セッション録音尚更、救いはオケが透明感ある技巧派のロイヤル・フィルなところで、それでもガチャガチャしてしまう、スタジオですら軋みを生じているのはもうファリャの力の入れどころと抜きどころをわきまえず全部に力を入れようとした感じである。木管ソロなどうまいが、合奏はノリが悪く教科書的ですらある。発音のみにロジンスキらしいキレが感じられ、前半は響きもよく浸ることはできるが、北方的で固いのは致し方ない。第二組曲は世にあまたある録音の中で凡演と言わざるを得ない。もっと盛大に弾けるためには聴衆の存在が必要だったのだろう。
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ヴォーン・ウィリアムズ:交響曲第4番〜Ⅲ、Ⅳ(コルバーン吹奏楽編曲)

2018年12月20日 | ヴォーン・ウィリアムズ
コルバーン指揮アメリカ海兵隊吹奏楽団"The President's Own"(marineband)CD

自主制作でYoutubeにイギリス音楽アルバム"Hope and Groly"全て公式アップされている。いささか堅く前に向かわないスタイルだが精度はそのぶん高く、拡散的になりがちな弦楽器をともなうオーケストラよりも、ヴォーン・ウィリアムズの転機となる立体的な書法を細部までしっかり音にして真価を問うてきている。盛り上がりどころであまり見栄を切らず、尻すぼみの構成もそのまま音になってしまっているが、最後は派手に〆るし、ブラスだけによるヴォーン・ウィリアムズというのをこれだけ聴かせられるのは編曲もさることながら合唱と弦楽器で聴かせてきたようなヴォーン・ウィリアムズの意欲作だった証だろう。そしてこのあとヴォーン・ウィリアムズが色々な楽器に取り組み賛否はあるがブラスにおいても確かな腕を発揮していくことになるのを、改めて実感させてくれる実験的な取り組みとも言えると思う。おそらくほとんどの非RVWマニアのリスナーが原曲との区別がつかないのではないか。管楽器のみのアンサンブルという点での緊密さ、がっちりとした組み合い方が聞き物。なかなかでした。コメントにあるようにゴールドブラムがスタートレックに翻案したり、日本でもビールのCMに剽窃されたりとても格好のいい、しかし独特の悪魔的なスペクタクル音楽で、これ以後の作品が自作も含め映画音楽と関係付けられていくのがよくわかる。録音は新しいので大丈夫。
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プロコフィエフ:バレエ音楽「鋼鉄の歩み」〜Ⅹ.工場

2018年12月19日 | プロコフィエフ
ロザンタール指揮ORTF(ina配信)1956/2/2live2/9放送

ひょっとこが出てきそうな音楽だが古き良き未来派の雑音をプロコフィエフ的に処理した「スキタイ」のオネゲルバージョンみたいなもの。ノイズとわかりやすさの同居はプロコフィエフの味でもあり、伊福部昭などに繋がっていく要素であり、ストラヴィンスキーからバルトークのやっていた硬質の暴力を肉弾戦に落とし込んだ、ソヴィエトへの道はまだ遠いが志向する方向はすでにそちらだったという、巨大なハンマー持ち上げてバタバタするバレエ音楽をやるにはロザンタールは柔らかくまとも過ぎたかもしれない。もっとバチコーンきたほうがこの曲らしい。色彩の明るく派手なところはロザンタールらしさで、なぜか客席は派手にわいている。プロコフィエフを垢抜けさせてくれているのだが。モノラル。ina.frだとPHD89036288。組曲では終曲。アンコールにあたる。
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プーランク:バレエ音楽「典型的動物」組曲

2018年12月19日 | フランス
ロザンタール指揮ORTF(ina配信)1956/2/2live2/9放送

平易で美しいだけの音楽。最初はプーランク版「蜘蛛の饗宴」かなと思うが、ルーセルよりさらに遡ったくらいの平易な喧しさが耳をつんざき、これはどうなんだろうと思う。プーランクの洒落た戦前的な夢見る心地は戦後のパリ聴衆を魅了したかもしれないが、いかにも大衆的で古い。原詩を頭に入れて聴かないと映像がなければよくわからない描写的表現も多く、ロザンタールだから派手派手で押し切れるが、弱い指揮者だと印象付けることは難しいかもしれない。オケはプーランクに似合った懐かしい音を出すが、俊敏すぎる書法の場面ではギリギリ。拍手はまあまあ。この放送は当然モノラル。ina.frだとPHD89036288。
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サンカン:ピアノ協奏曲

2018年12月19日 | フランス
作曲家(P)ロザンタール指揮ORTF(ina配信)1956/2/2live2/9放送

独特の曲。サンカン教授だから弾きこなせるしサンカン教授だからブーイングより拍手が大きいのだろう。強いて言えばプーランクが前衛に走ったら、という感じか。部分部分にスクリアビンの半音階など要素はあるにはあるが、ほぼ「サンカン」である。かといって新味を追うだけの前衛ではなく親しみやすい範囲の書法も織り込み何とか聴衆に取り付く島を与えている。まずもってピアノの技巧を見せつける曲か。面白みを感じられるのは現代曲に慣れている向きだけだろう。最初で嫌になったら、三楽章だけ聴けばスポーツとして楽しめる。プーランクと言ったとおり娯楽的な和声もなくはない。サンカンの現代一歩前の曲は一部に受けるのか、かつて一曲につき書いたらえらくアクセスがあった。ina.frだとPHD89036288。
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コープランド:交響曲第3番〜Ⅳ抜粋

2018年12月19日 | アメリカ
作曲家指揮NYP(unitel)1958/2/1放送 ヤング・ピープルズ・コンサートlive・BD

旺盛に振っていたころの映像記録で、代表作のひとつの、しかも最も有名なアメリカの曲のひとつ「庶民のためのファンファーレ」(太平洋戦争勃発時に愛国心鼓舞のため委嘱作曲されたとされる)を取り込んだ四楽章ほぼ全曲を演っている。オケがかなり乱れがちだがコープランドはいつもの冷静さを欠き、展開部では異常なスピードで煽る。笑みを浮かべながら時に歌いながら、きびきび振るコープランド、これはなかなかめずらしい(いつもの四角四面の作曲家指揮者振りじゃない!)。弦の必死さが伝わるが、このオケだからなんだかんだいってやりきる。ブラスはもう少し弾けてもいいと思うが録音のせいかもしれない。ラスト近くでやっとテンポを緩め盛大に終わる。エンドロールの向こうで勢いよく指揮台を降りるのが清々しい。拍手が最終音に被ってもいいでしょう。まだ三十年活動を続けるコープランド。ちなみにバーンスタインもまたほぼ同時期に燃え尽きている。
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コープランド:バレエ音楽「ビリー・ザ・キッド」抜粋

2018年12月19日 | アメリカ
バーンスタイン指揮NYP(unitel)1958/2/1放送 ヤング・ピープルズ・コンサートlive・BD

静かな場面の切り取りだがコープランドはここで演奏されるどのアメリカの作曲家より抜き出てきこえる。恐らく単純な要素を売りにした、たとえばジャズであったり、たとえば疑似ストラヴィンスキーであったり、そういう一点突破ではない個性をこの単純な佇まいのなかにうち持っていたからだろう。とても美しい響き。
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ハリス:交響曲第3番抜粋

2018年12月18日 | アメリカ
バーンスタイン指揮NYP(unitel)1958/2/1放送 ヤング・ピープルズ・コンサートlive・BD

これは終楽章の楽天的な主題を切り取っただけでじつに惜しい!もっと聴きたい。やや弛緩した莫大な演奏にきこえる。
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ウィリアム・シューマン:アメリカ祝典序曲抜粋

2018年12月18日 | アメリカ
バーンスタイン指揮NYP(unitel)1958/2/1放送 ヤング・ピープルズ・コンサートlive・BD

ごく短い抜粋だが魅力的な「アメリカ」を打ち出したもの。カッコよさを追求しそれゆえ空疎になった虚仮威し、という感じもしなくもない。コープランドに近い。
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コープランド:劇場のための音楽抜粋

2018年12月18日 | アメリカ
バーンスタイン指揮NYP(unitel)1958/2/1放送 ヤング・ピープルズ・コンサートlive・BD

比較的モダンな曲だがジャズの紹介として演奏される。クラリネットなどソロ楽器がしっかりしてれば変則的なリズムだけ押さえておけばなんとかなる、とおもうが一部ソロに乱れが。まあライヴということだろう。
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ガーシュイン:パリのアメリカ人抜粋

2018年12月18日 | アメリカ
バーンスタイン指揮NYP(unitel)1958/2/1放送 ヤング・ピープルズ・コンサートlive・BD

「アメリカ音楽ってなに?」の冒頭で中間部から最後まで演奏された。大仰でラフな演奏だけれどガーシュインはこのほうが「らしい」かもしれない。ソロ楽器はさすが巧み。バーンスタインの身振りは千両役者。
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リヒャルト・シュトラウス:歌劇「ばらの騎士」組曲

2018年12月18日 | ドイツ・オーストリア
ロザンタール指揮ORTF(ina配信)1956/2/2live2/9放送

モノラルで耳ざわりなノイズも混じるが、音そのものは明瞭で音場に広がりがあって聴きやすい。最初はロザンタールらしさというか、リズムが前に向かわず拡散的でぶよぶよしてしまう感もあるが、それはそれで劇音楽の幕開けとしてはスケールがあってよく、続いてまるでレスピーギなどを思わせる清新な音楽に「これがリヒャルト?」と思わせる。プロコフィエフを思わせる人を食ったような、書法的にはアグレッシブなところもロザンタールにかかるとほんと、ラテンやフランス音楽を派手にやっているといったふうで、ずちゃずちゃしているといったら言い過ぎかもしれないが、とても舞台的だ。舞曲の連続になってくると響きは引き締まる。スケールは維持したまま力強い回転が至極まっとうに演じられ、打って変わって古風なウィーン風ワルツとなる。これもしかしORTFとは思えぬ煽情性がある。透明感と色彩性はORTFないしロザンタールそのものだが。この指揮者のわかりやすい芸風は近現代音楽でもっとも映える。それは地域に依らない。なかなか聴きごたえがある。ina.frだとPHD89036288。
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ベートーヴェン:交響曲第1番

2018年12月18日 | ドイツ・オーストリア
クーセヴィツキー指揮ORTF(PASC)1950/6/25放送live

大袈裟で野蛮な発音も目立つが、力強さと勢いはロシアのそれである。音が割れるのも厭わない。激しく突っ走るため、小気味よいような、前時代の空気も保った1番を期待すると圧が強すぎて聞けないかもしれない。ノイジーだが残響を加えた録音だと、キリキリ締め付けられたオケの捻り出す分厚い響きが、とくに四楽章など弦のアンサンブルになるとORTFと思えない精度を伴い、まるで5番のように偉大に響く。拍手喝采もわかるクーセヴィツキーの底力を見せた演奏。
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マックス・フィードラーのライヴ音源発掘(本編にも書いた)

2018年12月18日 | Weblog
唐突に昭和11年のマックス・フィードラー指揮ライヴ録音、Pascから。初出。録音時代にブラームス自身に演奏を聴かせたのはワインガルトナーとフィードラーだけ。ビダルフ等で2,4番や協奏曲が出ていたがヒゲジョは初か。運命とラインも入って二枚組相当。後で聴く。 https://www.pristineclassical.com/products/pasc547

ちょっとトリッキーな書き方しましたのは、トスカニーニをブラームスは聞かなかったのかなあという点で。活動範囲が重ならなかったとは思うが。ブラームスは瘻管に自演を収めたくらいの時代の人です。
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マシューズ:ノーフォーク行進曲(2016)

2018年12月17日 | イギリス
イエイツ指揮国立ロイヤルスコティッシュ管弦楽団(dutton)CD

ヴォーン・ウィリアムズ曲集に入っているのは編曲等でかかわっているからだろうが、半世紀以上遡ったような穏健な作風ではあるが、ヴォーン・ウィリアムズに作風が近いから、とは言えない。極めて美麗でダイナミックな描写風音楽である点は近いが、ヴォーン・ウィリアムズほどの癖はなく弦楽合奏の扱いのみ共通点として感じさせ、楽器の用法はモダンだし、洒落た和声は特に序奏部などオネゲルを彷彿とさせるし、本編は派手な行進曲だがヴォーン・ウィリアムズよりも押しが強く、それが末尾では退嬰的になって具象的なものを伴わない描写音楽となり、ウォルトン風の空疎な音世界からソロヴァイオリンの気狂い風の走句で終わる。ディーリアスを思わせるところも無くはないが、多分2世代くらい後の表現だ。ヴォーン・ウィリアムズの音詩好きなら楽しく聴けるだろう。ヴォーン・ウィリアムズ狂いの人は聴けないだろう。演奏はこの上を求められないレベル。素晴らしい。
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