私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「超高速! 参勤交代」

2015-03-26 21:05:48 | 映画(た行)
 
優秀な映画向けの脚本に与えられる城戸賞に輝き、小説化されるやベストセラーとなった土橋章宏の同名作を映画化したコミカルな時代ドラマ。幕府から無理難題を押しつけられた小藩の藩主が藩と領民を守るため、知恵を絞って、逆境に立ち向かっていくさまが描かれる。
監督は本木克英。
出演は佐々木蔵之介、深田恭子ら。




タイトルがちょっとふざけた感じだったので、コメディタッチの作品を思い描いていたのだが、どちらかというと、勧善懲悪のわかりやすいエンタメ時代劇だなという印象を受ける。
ベタだな、と思う個所もそこここにあったのだけど、退屈せずに見ることのできる作品だった。


舞台はいわきにある、湯長屋藩という極めてマニアックな小藩だ。
その藩主内藤政醇は英明な君主である。
しかし幕閣から金山を不正に隠し持っているというあらぬ疑いをかけられ、五日の短日で、江戸に出府せねばいけなくなる。

当時の参勤交代は見栄もあるので、人数少なく進めることもできず、苦労している。
その苦労はなかなか涙ぐましく、当時の苦労に思いをはせてしまう。


また藩主と家臣のチームは参勤交代の成功だけでなく、刺客の襲撃からも身を守らねばならないから厄介である。
実に波乱万丈なことだ。
それだけにちょっとやり過ぎ感はあるけれど、エンタテイメントとしての盛り上がりはあると言えよう。


そんな映画だけあり、ラストもわかりやすいくらいの大団円でまとめられている。
だがこの展開も決して悪いとは思わない。
佐々木蔵之介も、武術もできて、農民や家臣思いのすぐれた君主を演じていて悪くない。

純粋エンタテイメントとして、楽しく見ることのできる作品だった。

評価:★★★(満点は★★★★★)
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「ダラス・バイヤーズクラブ」

2014-03-17 20:08:28 | 映画(た行)

2013年度作品。アメリカ映画。
HIVを患った男が治療薬を求めて、製薬会社や政府と戦う姿を描く、実話を基にした人間ドラマ。
監督はジャン=マルク・ヴァレ
出演はマシュー・マコノヒー、ジェニファー・ガーナーら。




人は自分の死を前にしたとき何ができるのだろう。
この映画を見ていると、そんなことを感じる。

主人公のロンは結果的に、アメリカの医療界を動かし変化させたが、同時に自分自身をも変化させている。そんな風に見ていて感じた。
それが映画に深い余韻を与えている。


ロンはHIVに感染し、その治療薬を求めてメキシコに移動。そこで手に入れたエイズの治療薬を輸入販売してHIV患者に販売する。
だがそこに行きつくまでには道のりも長い。

彼は元々ヤク中で、ゲイに対する差別意識も強い男だった。
だが自分の死を自覚するに至り、手を尽くして薬を手に入れ、ドラッグからも離れていく。
そして嫌っていたはずのゲイのレイヨンとも一緒に行動するようになる。

それは明確な彼の変化だ。
流れ的に見ても、納得いくもので、しんしんと胸に迫る。


彼はエイズ治療のため、あらゆる薬に手を出し、自分で試していく。
どれもアメリカでは未承認の薬ばかりだが、それも平気で、周囲にも薬を販売する。

その様はある意味、小気味いい。
やがては金儲けだけではなく、患者のために、薬の販売に移行するところもよかった。

そしてアメリカでは副作用が強い薬を承認して、有効な薬を認めないことに対して、声をあげて行動していく。

彼が自分の人生の終焉を前に行なったのは、社会正義なのだ。
そんな男の変化と行動が印象深い一品だった。

評価:★★★(満点は★★★★★)
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「共喰い」

2013-11-06 20:52:15 | 映画(た行)

2013年度作品。日本映画。
作家・田中慎弥の第146回芥川賞に輝いた同名小説を、『東京公園』の青山真治監督が映画化した人間ドラマ。山口県下関市を舞台に、行為の際に女性を殴る性癖を持つ父親と、そんな父親の血を持つ事にいらだちを募らせる高校生とのひと夏の物語が展開する。
監督は青山真治。
出演は菅田将暉、木下美咲ら。




「共喰い」は芥川賞受賞の原作を忠実に再現しながら、映画独自の味わいをも兼ね備えた作品となっている。

原作は個人的な解釈では、性と暴力を通して血脈の連鎖を描いた作品である。
だが一方の映画は、血脈と暴力を通して性の主体性を描いているように見えるのだ。

そしてそのオリジナルの要素のおかげで、本作は男の物語から女の強さを描いた映画へと変貌しているように感じるのである。


主人公の遠馬の父親は、暴力的な男で、セックスをするたびに女を殴りつけるようなひどい一面を持っている。
彼がそんなことをするのは、そうした方が、より強い性的快感を得られるからだ。
それは一方的な男の理屈で、女はいいようにいたぶられているようなものだ。

そんな父親に対して息子は嫌悪を抱き、その血を引いているという事実に、いらだちをもっている。
そのため恋人とのセックスのときも、彼なりに気を遣っているのだ。

しかしそんな風に気を遣っていても、恋人に対して衝動的に暴力をふるうこともあった。
そこからは血の忌まわしい連鎖を見る思いがする。


そんな男たちに対して、女たちは彼女たちなりの思いで行動する。

母親はその血と悪夢の連鎖を断ち切るために、思い切った行動に出ている。
田中裕子は冷めた雰囲気をまとっているけど、その行動はともかく力強い。

また遠馬の義母に当たる琴子さんは、夫からの暴力から逃れるためになんとしてでも妊娠しようとしたし、最終的には思い切って夫の元から離れようとしている。

それを見ていると、彼女たちは彼女たちの方法で戦っているのだろうと思えてならない。


またセックスに関しても、女たちは最後、主体的な行動を取っているのだ。

そこには前半部の、セックスによって男たちに痛めつけられる女の姿はない。
彼女たちはあくまで自分の欲望に応じて、性に望んでいるのだ。
そこからは男女の逆転現象が見られて、興味深い。
そしてそれもまた、暴力的な男たちとは違う、女たちの力強さでもあるのだろう。

そんな女たちの姿を描いたオリジナルの良さと、血の連鎖という原作の良さとが、上手く融合した佳作であると思った次第だ。

評価:★★★★(満点は★★★★★)



原作の感想
 田中慎弥『共喰い』
コメント (2)
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「天使の分け前」

2013-04-18 21:03:11 | 映画(た行)

2012年度作品。イギリス=フランス=ベルギー=イタリア映画。
スコッチ・ウイスキーが根付くスコットランド。この地は今、不況にあえいでいた。家族とうまくいっておらず何かにつけ暴力沙汰を起こしてきたロビー(ポール・ブラニガン)は、またしても問題を起こし捕まる。しかし恋人との間にできた子どもがじき生まれることを鑑みて、刑務所送りではなく社会奉仕活動をするよう言い渡される。そこで指導者のハリーと出会い、ウイスキーの奥深さを知ったロビーは、次第にテイスティングの才能を目覚めさせていく……。
監督はケン・ローチ。
出演はポール・ブラニガン、ジョン・ヘンショーら。




「天使の分け前」はやり直しの映画なのだろう、と感じる。

映画に出てくるのは、懲役刑まではいかない犯罪を行なった人物ばかりだ。
社会奉仕のカリキュラムで出会った彼らは、ふとしたきっかけで、ある犯罪計画を立てる。そういう話である。

結局やるのは犯罪なのかよ、とも思うが、それでも彼らはそうすることでしかやり直すことができないのかもしれない。


主人公のロビーは、つきあっていた彼女との間に、子どももできている。
それをきっかけにまっとうになろう、と考えるのだが、義父は彼を信頼してくれず、むかし暴力をふるった男たちは今でも復讐の機会をねらっている。

どれだけやり直そうとしても、彼の人生には過去がついて回るような状態だ。
そのために誰も彼を認めてくれない。
認めてくれるのは、妻と、仲間と、彼を見守る男だけだ。
逆に言えば、過去ではなく、今を見てくれているのはそれだけの人だということになる。


そんなロビーがひとつの犯行に及ぶのは、金がないからだし、職を得て新しいスタートを得て再出発するためだ。

その犯罪の結末がなかなか楽しい。
一言で言えば彼らの行なったのは高級ウィスキーの強奪である。
それを見ていると、どれだけお高く止まっていても、ある種の金持ちは値段でしか本質を見ることができないのだ、と感じる。
むしろ社会的に虐げられている主人公の方が、本質を知る嗅覚(文字通りだ)に恵まれているとも言えるのだ。

そしてそれは、過去の犯罪でしかロビーを見ない者に対する皮肉に満ちたメタファーでもあるのだろう。
それだけにどこか小気味良さがあるのが良い。


ラストも、気が利いている。
あれは過去ではなく、今の自分を評価し、導いてくれたことに対する謝礼なのだろう。
その視点はなんとも優しい。
それだけに、地味に心に響くすてきな作品となりえているのである。

評価:★★★(満点は★★★★★)
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「ダイ・ハード/ラスト・デイ」

2013-02-26 20:36:25 | 映画(た行)

2012年度作品。アメリカ映画。
ニューヨーク市警の不死身の刑事、ジョン・マクレーン。疎遠になっていた一人息子ジャックが、モスクワで警察沙汰のトラブルを起こし、裁判に出廷するハメに。その身柄を引き取るために、単身<言葉も通じない>見知らぬ国に乗り込んだジョンは、到着早々に壊滅的なテロに見舞われる……。
監督はジョン・ムーア。
出演はブルース・ウィリス、ジェイ・コートニーら。




派手なストーリーである。そして見せ場も同様に派手なものだ。
そしてそれゆえに「ダイ・ハード」らしい作品でもあるな、と見ていて感じた。

マクレーンもしわが増えたが、まだまだ現役でアクションもがんばっている。
1や2のレベルにあるとまでは言えないが、さすがにおもしろい一品であった。


ストーリーはマクレーンがモスクワ警察に捕まった息子に会いに行くところから始まる。
そういった出だし自体は悪くないのだが、それ以降は雑で、いろいろハチャメチャな展開が待っている。

特に息子を見つけた後、彼を追いかけるマクレーンの行動は理解不能だった。
車を踏み潰したり、人の車を盗んだり、他人の車を廃車にしたり、もうやりたい放題で、つっこみどころも多い。
いやいや、あんた、むちゃくちゃだよ、と心の中で叫びまくっていた。

だがそれがむちゃくちゃであるほど、見ている分にはおもしろいのである。
こういうのはきっと、つっこんだら負けなのだ。


実際アクションシーンは、脳みそ空っぽにして楽しむだけの価値ある、激しいものに仕上がっている。

冒頭のカーチェイスはドハデだし、ヘリコプターがライフルをぶっ放すシーンの荒々しさはまさに興奮もの。
そして銃撃戦の火薬量の多さには、見ているだけでテンションがあがってしまう。
すさまじいまでの迫力に満ち溢れていて、単純に楽しむことができた。

結局この一件の責任は、誰が取るんだろう、とふと思ったが(少なくともマクレーン親子は責任を取っていないらしい)、そういうのを気にしても無駄だよね、って思えるところがいい。


「ラスト・デイ」もまた、「ダイ・ハード」シリーズのおもしろさが、充分現われた一品である。

評価:★★★(満点は★★★★★)
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「桃さんのしあわせ」

2013-01-21 20:32:21 | 映画(た行)

2011年度作品。中国=香港映画。
同じ家族に60年間仕えてきたメイドの桃さんが、ある日、脳卒中で倒れた。雇い主の息子で敏腕映画プロデューサーのロジャーは、もう仕事ができないからメイドを辞めると桃さんから告げられ、彼女のために老人ホームを探す事にする。ロジャーはその法外な費用に驚愕するが、かつての仕事仲間バッタの手配で、無事桃さんはホームに入所する事に。環境の変化に戸惑いながらも、芯の強い桃さんは次第に周りと打ち解けていく。
監督はアン・ホイ。
出演はディニー・イップ、アンディ・ラウら。




「桃さんのしあわせ」は、人と人との交流を描いた物語であり、少子高齢化社会の一側面を描いた物語でもある、と個人的には感じた。
そしてそれゆえに、普遍性を持つ作品でもある。


映画プロデューサー、ロジャーの家で家政婦として働いてくれた桃さんが脳卒中で倒れてしまう。身寄りのない桃さんのために、ロジャーは自分のお金で養護施設に入れて、介護を行なう。
ロジャーの姉や母も桃さんを慕っており、桃さんを訪ねては何かと世話を焼いたりする。

そういう内容からして容易に想像つくことだが、基本的にいい話である。
しかし本作では、それをお涙頂戴な展開にもっていくわけでなく、抑えた表現で淡々と描いている。
そしてその淡々としたリズムの中から、老女と雇い主の家族の交流、そして老女と施設の人たちとの交流の温かみが伝わってくるのだ。
それがしんしんと胸に沁みて、大変好ましい。


しかし養護施設の人たちを見ていると、高齢化社会の縮図を見るような思いを抱く。
施設に預けられたまま、一度も身寄りが訪ねてこない人もいるし(国のお金で施設が預かっているという話が個人的には印象的。いい制度と思うが、日本だったら絶対たたかれるのだろう)、親を施設に預けるに当たって、兄妹同士でケンカをする人もいる。
認知症の人もいるし、老いてなお盛んな人もいる。

そこにあるのは紛れもなく悲喜劇だ。
しかしそれは、人間なら実際に誰にでも起こりうる悲喜劇とも感じる。
そしてそれゆえに、本作は普遍的とも言えよう。


全体的にみると、地味な作品とは思う。
しかし目立たないながら、何かを考えさせられる、温かく優しい作品でもあった。

評価:★★★(満点は★★★★★)
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「007 スカイフォール」

2012-12-09 19:49:21 | 映画(た行)

2012年度作品。イギリス=アメリカ映画。
トルコのイスタンブールで、極秘データを盗んだ敵を追っていたMI6エージェント“007”ことジェームズ・ボンドは、敵ともみ合ううちに狙撃され、川に落ち生死不明に。MI6では007を死亡したと判断する。その頃、MI6本部が爆破され、サイバーテロ予告が届く。これらのテロはMI6を率いる“M”に恨みを抱く者の犯行だった。イスタンブールで密かに生き延びていたジェームズ・ボンドはMI6に戻り、MI6を襲う敵に立ち向かうことを決意する…。
監督はサム・メンデス。
出演はダニエル・クレイグ、ハビエル・バルデムら。




個人的には作品のテンポにどうも乗り切れず、ボチボチという程度にしか楽しめなかった。

しかし作品そのものはレベルの高い一品である。
いくつかの点が趣味ではなかったので点は低いが、アクション、ストーリー展開等、内容自体はよくできた作品と素直に感じることができる。


まず冒頭のアクションシーンからしびれてしまう。

冒頭はトルコの猥雑なマーケットの中をカーチェイスする場面だが、そこから早くも心は持っていかれてしまう。
このけれんみたっぷりのアクションは嫌いじゃない。
バイクでバザールを疾走するシーンといい、列車の上での決闘といい、見応え抜群で、じりじりしながら見入ってしまう。
そこは007シリーズの良さを引き継いでいると言えよう。

それ以外のアクションシーンも盛り上がるようねらってつくられていて、さすがにおもしろい。


ストーリーも考えてつくられている。

任務のため、冷酷にエージェントを切り捨てることも辞さないMだが、ボンドもMの判断で危うく命を落とすところまでいっている。そんな中で、Mに切り捨てられたエージェントが復讐のためにスパイ情報を奪い、敵に情報を流してしまう。
というのが本作の流れだ。

エージェントの仕事と、Mの人間性の二点が本作のテーマといったところだろうか。
そういったストーリーのつくりは上手い。


また本作では、敵役のハビエル・バルデムが独特の存在感を放っていた。はっきり言って少し気持ち悪かったくらいだ。
「ノーカントリー」のときでもそうだったけれど、この人はちょっとイカれた感じの役を演じるのが上手いのかもしれない。いい役者だ。


といったように、誉める要素に満ち溢れた作品である。
これでテンポが良ければ文句なしだったが、まあボチボチ楽しめたから良しとしよう。
エンタテイメントらしさにあふれた一品であった。

評価:★★★(満点は★★★★★)



そのほかの007シリーズ感想
 「007 カジノ・ロワイヤル」
 「007 慰めの報酬」
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「終の信託」

2012-11-07 21:20:19 | 映画(た行)

2012年度作品。日本映画。
呼吸器内科医の折井綾乃は、同じ職場の医師・高井との不倫に傷つき、沈んだ日々を送っていた。そんな時、重度のぜんそくで入退院を繰り返す江木秦三の優しさに触れて癒やされる。やがて、お互いに思いを寄せるようになる二人だったが、江木の症状は悪化の一途を辿る。死期を悟った彼は、もしもの時は延命治療をせずに楽に死なせて欲しいと綾乃に懇願する。それから2ヵ月、心肺停止状態に陥った江木を前に綾乃は激しく葛藤する…。
監督は周防正行。
出演は草刈民代、役所広司ら。




テンポは悪いのだけど、尊厳死について何かと考えさせられる一品になっている。
個人的な印象を語るなら、そんなところだ。
扱いにくい題材なだけに、それに挑戦したつくり手の気概をまずは誉めたいと思う。


そう最終的に思えただけに、序盤のテンポの悪さは残念であった。
本作は2時間半という少し長めの作品だが、2時間くらいには収められたように思う。
実際端折れるんじゃないの、って思えるような間が少し多い。
エピソード的には必要なのかもしれないけど、一個一個の内容に時間をかけすぎていて、焦点がぼやけているような気がする。

おかげで全体的にダラダラしてしまい、締りないものになっていた。
特に前半は派手な見せ場もないので、余計にだらけた印象ばかり残ったように思う。


だがそれも、安楽死の場面に至ってからは緊迫感が増してくる。
特に呼吸器を外したときのシーンには目を見張った。
そのシーンの役所広司の動きは恐ろしく、何よりあまりにむごたらしい。
人の命が終わるという重みがそこからははっきりと伝わってきて、戦慄を覚えてしまう。

その後の、検事が医師を追いつめていくシーンもすばらしかった。
何よりヒリヒリするような緊張感にあふれているのが良い。
このシーンに関しては、大沢たかおの迫力が存分に出ていたように思う。助演男優賞ものの名演だったと感じる。


さて物語の方だが、結果から言えば、女医の勇み足ということなのだろう。
実際問題、彼女の行動は他者に対する説明が不足していて、独りよがりの部分も多い。
だが患者が尊厳死を望んでいて、それに対して、どう応えるかを考えたとき、そこには簡単には出せない答えがある。

彼女の選択はまちがっていたが、そこには彼女なりの善意はあった。
だから良いと言うつもりはないけれど、それだけにやるせない。

ともあれ難しい問題に対し、可能な限り誠実にせまった一品と感じた次第だ。

評価:★★★(満点は★★★★★)
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「天地明察」

2012-09-27 21:19:06 | 映画(た行)

2012年度作品。日本映画。
代々将軍に囲碁を教える名家に生まれた安井算哲は、対局よりも星と算術に夢中になり、時間を忘れてのめり込んでしまう事もしばしばだった。ある日、会津藩主の保科正之から日本全国で北極星の高度を測り、その土地の位置を割り出す北極出地を命じられる。一年半の任務を終え、暦のずれが判明すると、今度は新しい暦作りの総大将に任命される。天体観測と数理解析を重ねた結果、幕府は改暦を帝に請願するのだが…。
監督は滝田洋二郎。
出演は岡田准一、宮崎あおいら。




原作が好きだからと言って、その映画化作品も好きであるとは限らない。
僕にとって「天地明察」は、そんな作品の一つとなってしまった。

なるべく原作のことを忘れて見たつもりだけど、それを抜きにしても何かが合わなかった。
僕個人の好みの問題なのだけど、やはり残念な話である。


物語は日本独自の暦をつくった安井算哲、後の渋川春海を描いた話である。

と書くと堅苦しいが、体裁は時代劇の形を借りた青春ものと言ってもいい。
算術に熱心で、好きなものには夢中になる性格の彼が、日本の暦をつくる事業へとやがては引き入れられていく。
そんな彼の挫折する姿や、目標に向けてまい進する姿を描いていると言えよう。

そういうストーリー骨子は悪くない。
にもかかわらず、僕がこの映画に入り込めなかったのは、単純に演出が合わないからだ。本当に僕の趣味だけど。


基本的にこの映画の感情表現や演出は過多である。

岡田准一は嫌いじゃないが、彼の演技はいちいちオーバーアクションで、そのせいか、安井算哲の感情に同調することができなかった。
岡田准一が苦悩しているのを見ても、ああ、岡田准一が苦悩しているんだね、としか思えず、いらだっているのを見ても、ああ岡田准一はいらだっているんだね、という以上の印象しか湧いてこない。
人は知らないが、僕には、安井算哲の感情が伝わってこず、どうも引いて見てしまう。

そのほかにも演出面に関して、言いたいことはある。
特に気になったのは、反対勢力に襲撃されたときの山崎闇斎だろうか。
多くは言わないが、どうしてああしたのか、僕には理解できない。もっとちがう描き方をしようと、誰も考えなかったのだろうか。


何かネガティブなことばかり書いているが、いい部分もある。
たとえば役者陣は豪華で、見応えはある。特に北極出地の二人はおもしろかった。
またなんだかんだ盛り上がるようにつくられているので、退屈さはない。

僕には合わない作品だったが、世評も高いようだし、好きな人は好きなのだろう。
そんなことを思った次第だ。

評価:★★(満点は★★★★★)
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「トガニ 幼い瞳の告発」

2012-08-30 21:30:39 | 映画(た行)

2011年度作品。韓国映画。
聴覚障害者学校に赴任する事になった美術教師イノは、トイレから少女の泣き叫ぶ声が聞こえたり、教師が男子生徒に執拗な体罰を与えたり、不審なものを感じていた。ある放課後、寮の指導教員の少女への壮絶な体罰を目撃したイノは、その少女を匿う。その少女は男女複数の生徒が校長を含む教師から性的虐待を受けているという驚くべき事実を告げた。様々な妨害を受けながらも学校側と戦う事にし、子供たちと法廷に立つイノだが…。
監督はファン・ドンヒョク
出演はコン・ユ、チョン・ユミら。




世の中には理不尽なことがいろいろあるわけで、たとえば大きな力で相手の自由や尊厳を奪うってのはその典型なのだろう。

そういった理不尽に対して、大抵の人はひどいな、とか、腹立たしい、なんて思ったりするのかもしれない。
でもどれだけの人がそんなひどいことを、実際に止めることができるのだろう。
現実的には日和ったり、周囲の状況に流されてしまうこともあるのかもしれない。

本作を見ていると、そんな苦々しい事実について考えさせられる。


映画は、韓国の聴覚障害者学校が舞台で、生徒たちは校長をはじめ教員たちから暴行を受け、レイプもされている。
展開が速くテンポがいいので、終始画面には惹きつけられた。
このスピーディな流れは、この映画の魅力の一つだろう。


だがそこで描かれている内容は言うまでもなく、ひどい話である。
現実に起きたことのようだが、どうしてこうも簡単に人を踏みつけることができるのだろうと思わずにいられない。
幼い少女に対する性暴力は特に最悪だ。

しかし罪を犯した教員たちに罰を与えるには、多くの難題が待ちかまえている。
何より被告人が地方の名士で、バックの支援者も多いというのは最大の障害だ。
相手は被害者側の切り崩し工作を行ない、罪から逃れようとする。

その結果、かなり大甘な判決となってしまうのがあまりに悲しい。
確かに現実的にはありそうな話だけど、その事実は理不尽としか言いようがない。


だがその理不尽に対して、人はそれぞれのあり方で抵抗することはできるのだ。
主人公の男は病気がちの娘もいて、生活は苦しいし、それを見越してか、敵側からの切り崩し工作も受けている。
それでも娘に誇れる父親であろうと良心に照らし合わせて行動している。

我々が世界を変えるのではなく、世界に我々が変えられないようにする。
そんな感じのセリフが作中にあったが、彼の行動はまさにそういうことなのだろう。

それは口で言うほど容易ではない。
けれど、それが人にとって重要なことでもあるのだろう。

そんな社会正義に関するいろいろなことを、深く考えさせられる。なかなかの佳品だ。

評価:★★★★(満点は★★★★★)
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「ダークナイト ライジング」

2012-08-08 20:13:24 | 映画(た行)

2012年度作品。アメリカ映画。
ジョーカーとの戦いから8年、バットマンはゴッサム・シティーから姿を消し、ブルース・ウェインは隠遁生活を送っていた。そんな彼の家にセリーナ・カイルという女性が忍び込み、彼の指紋を盗み出す。彼女に盗みを依頼した組織が何か大きな計画を立てていると気付いたブルースは、再びバットマンのコスチュームに袖を通す。その頃、不気味なマスクをつけたベインという男が、ゴッサム・シティーの地下で大規模テロを計画していた…。
監督は「メメント」のクリストファー・ノーラン。
出演はクリスチャン・ベイル、マイケル・ケインら。




「バットマン」はティム・バートンのころから見ているけれど、タイプ的には、どうも合わないと、これまで感じてきた。
実際、世評の高い「ダークナイト」だって、僕的には今一つだったりする。
本作は予告編がおもしろそうだったので、見てみようと思ったわけだが、不安がないわけでもなかった。

しかし、見てみると、これがまたおもしろかったりするのだ。
どんな作品も見てみるまでは、わからない。そんなことを思い知らされる。


前作で、悪徳刑事の罪を一身に引っかぶったバットマンだが、街は平和になり、彼自身は引きこもりになっている。そんな中、新たな敵が現れて、、、
というのがメインプロットだ。

上映時間は2時間40分の長尺で、正直な話、長いと思ったことは否定できない。
だがそれでも、最後まで楽しめたのは、映像の迫力と、ストーリーのおもしろさにある。


特に映像は、バットマンのマシンの描き方がよかった。
これまで同様、その描写は相変わらずかっこよくて、見ているだけで惹きこまれてしまう。
加えて迫力満点だからたまらない。
メカ系の描写はいつだって、男の心を捉えて離さないようだ。


物語も非常におもしろい。
せまり来る敵や、それに巻き込まれるウェイン、複雑に絡み合った人間関係などを追うのは非常に楽しい体験だった。
その中でウェインがバットマンとして再び動き出すのを、無理なく見せてすてきである。

ラストの展開も見事だ。
最後にバットマンが選んだ選択もすばらしかったし、エピローグで示されたウェインの真相、そして若い刑事の最後に取った行動からは新たな展開も期待でき、心に残る。


映像、ストーリー共に力強く、ある種のダークな雰囲気はあるが、それがむしろ好ましい。
見て損はない、満足の一品だ。

評価:★★★★(満点は★★★★★)
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「ダーク・シャドウ」

2012-05-31 22:30:18 | 映画(た行)

2012年度作品。アメリカ映画。
18世紀半ば、コリンズ家が築いた港町 “コリンズポート”で、「家族こそが財産」という父の教えを胸に若き当主となったバーナバス。が、名うてのプレイボーイでもあった彼は使用人のアンジェリークにも手を出し、残酷な運命を招く事になる。彼女の正体は嫉妬深い魔女だったのだ。呪われたバーナバスはヴァンパイアにされて生き埋めに…。200年後の1972年、蘇ったバーナバスは見る影もなく没落した一族の再興に乗り出す。
監督はティム・バートン。
出演はジョニー・デップ、ミシェル・ファイファーら。




人それぞれ好みはあろうけれど、個人的に「ダーク・シャドウ」は合わなかった。
というか、僕個人の印象で言うなら、これは失敗作だ、と思う。

だから以下に記すのは、大半ネガティブな言葉である。


個人的に本作で気になった点は、メインストーリー以外のどうでもいいところに、細かな設定を盛り込みすぎていることにある。要はつめこみすぎなのだ。

そのせいで、説明不足な面もあるし、メインストーリーの焦点がぼやけ、全体的に散漫。
結果、退屈な作品になっているのが、どうにも残念だ。


一応メインストーリーをまとめるなら、二百年前、魔女の手によりヴァンパイアにされてしまった男バーナバスが、現代に甦り、自分の末裔たちの元を訪れ、没落した一家を建て直し、魔女とも張り合う、といったところだろうか。

だがつくり手は、主人公と魔女以外の人物に、わりに多くの時間を割いている。
そして悲しいことに、それがほとんど蛇足に終わっているのだ。

たとえば、クロエ・グレース・モレッツ演じる末裔の少女の、ラストの真相は典型的だ。
あれは別になくても、物語としては成立可能なのに、なぜ描いたのか理解に苦しむ。

ほかにも、多くは語らないが、もっと削ってもいいのにという部分が多く見られた。
早い話、脚本がまったく練れていない、ということなのだろう。
そういう点においても、本作はどうしようもなく失敗作だと思う。


もちろん本作にだって良かった場面はある。

個人的にすばらしかったのは、エヴァ・グリーン演じる魔女だ。
これがなかなかタフで押しが強く、それでいて、妖艶さもあって、魔女って雰囲気が良く出ていて、見ていて楽しかった。
ジョニー・デップと抱き合うシーンなんかは、いい意味でバカバカしい。

そういった映像を見ていると、ティム・バートンはティム・バートンなりに、楽しい映画をつくろうとしていたことはわかる。
それが上手くいっているかはともかく、意気込みだけは見事だ。

ともあれ、有名監督とはいえ、いい作品ばかりは描けない。そのことを示す一品である。

評価:★(満点は★★★★★)
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「ドライヴ」

2012-04-02 21:27:20 | 映画(た行)

2011年度作品。アメリカ映画。
天才的なドライブ・テクニックを武器に、昼はアクション映画のカースタント、夜は強盗の逃走を請け負う運転手をしているドライバー。ある晩、彼はアパートの同じ階に住むアイリーンという若妻と偶然エレベーターに乗り合わせ、ひと目で恋に落ちる。だが彼女には服役中の夫スタンダードがいた。やがて服役から戻り更生を誓うスタンダードを見たアイリーンは、ドライバーを思いながらも家族を守る選択をする…。ドライヴ - goo 映画
監督はニコラス・ウィンディング・レフン
出演はライアン・ゴズリング、キャリー・マリガンら。




「ドライヴ」はジャンルとしてはアクションのくくりになるのだろう。
けれど、アクションにしてはずいぶん静かな雰囲気であった。


そう感じた理由は、主人公のキャラクターに負うところが大きい。

主人公のスタントマンにして、犯罪者のドライバーを務める男は基本的に無口である。しゃべるときでも、ぼそっていう口調の場合が多い。
おかげで何を考えているのか、パッと見、わかりにくい。

だけど根は優しい青年だということがだんだん見えてくる。
実際隣人がトラブルに見舞われたときなどは、女に惚れていたということもあるが、その夫に対しても、一肌脱ぐくらいの義侠心を持ち合わせている。

ともあれ、そんなキャラの影響からか、映画全体のトーンは抑えられたものになっている。
そして、ハードボイルドな空気すら立ち上がってきているのが、印象に残った。


物語自体は、前半こそ、平坦な内容だが、映画の中盤から加速度的に盛り上がってくる。
血で血を洗うという表現を思い浮かべるような、殺るか殺られるのかの展開がくり広げられ、ハラハラさせられる点が良い。
また適度な緊迫感が漂っているあたりも、魅力だった。
また車のシーンも派手さはないものの、見応えのあるものになっているのが良い。


ともあれ、個人的には満足の一品である。
世間的に見れば、地味な作品だ、と思うし、これっていう売りにはいくらか乏しいとは思う。けれど、映画のつくりとしては上々だ。
目立たないが、なかなかの佳品、と思った次第だ。

評価:★★★★(満点は★★★★★)



出演者の関連作品感想
・ライアン・ゴズリング出演作
 「ラースと、その彼女」
・キャリー・マリガン出演作
 「17歳の肖像」
 「パブリック・エネミーズ」
 「プライドと偏見」
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「ドラゴン・タトゥーの女」

2012-02-17 21:30:48 | 映画(た行)

2011年度作品。アメリカ映画。
雑誌「ミレニアム」の発行責任者ミカエルは実業家の不正を暴くが、逆に名誉毀損で有罪判決を受ける。そんな中、かつての経済界の大物一族の長ヘンリックがある依頼をする。40年前に起きた、彼が最も愛情をかけていた16歳の娘ハリエットの失踪事件の謎を解く事だ。やがて彼の助手として情報収集能力に長けた天才的ハッカーの“ドラゴン・タトゥーの女”、リスベットが加わる。そして2人は、一族の忌まわしい過去を知る事になる。(ドラゴン・タトゥーの女 - goo 映画より)
監督は「セブン」のデヴィッド・フィンチャー。
出演はダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラら。




「ドラゴン・タトゥーの女」の原作は未読だが、スウェーデン映画バージョンの「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」は見たことがある。
比較するのもどうかと思うけど、個人的にはスウェーデン版よりも、デヴィッド・フィンチャーバージョンの方がおもしろい、と感じた。
情報の整理の仕方や、物語の運び方や見せ方が、僕としてはしっくりくるのである。
何よりオープニングがむちゃくちゃかっこよくて、しびれてしまう。

スウェーデンを舞台にして、俳優全員が英語をしゃべっているのはどうかと思うけど、「ドラゴン・タトゥーの女」という作品の良さを、この作品を通じてはっきりと教えられた思いだ。


名誉毀損で訴えられた雑誌記者が、数十年前に行方不明になった富豪の姪の事件を探り出す、というのがメインの物語である。

ミステリタッチの作品で、犯人が誰なのか、という謎もあるためか、情報量が結構多く、頭の中で内容を整理するのが、ときどき難儀に感じることもある。
だがストーリーを追えないというほどでもなく、無理はない。

スウェーデン版の方を見ているので、事件の真相も犯人も知っているのだが、それを知っていても、退屈と感じることなく、最後まで楽しめることができる。
それは物語そのものがおもしろい、ということもあるだろう。だがそれ以上に、観客に対し適度に期待を煽り、物語を魅せてくれているから、とも思う。
デヴィッド・フィンチャーの手際の良さを存分に堪能できる格好だ。


本作の良さは、そんなプロットや演出ばかりでなく、キャラクターにもあると思う。
当然注目すべきキャラはドラゴン・タトゥーの女、こと、ちょっとイカれた雰囲気のリスベットだ。

外見はちょっとぶっ飛んでいるけれど、おどおどしている雰囲気もあり、それでいてかなり乱暴なことも平気で行ない、だけどかわいらしいところもあれば、性的に奔放であったりする。
これほど小気味よく、魅力的な女性もなかなかいない。

そしてそんなリスベットが、性的に抑圧されている女性たち、という裏テーマを適切に表現していて、なかなか手がこんでいる。
ともかくも質の高い映画だ。


この作品の原作は三部作構成で、スウェーデン映画版では、三作とも製作され、上映もされたが、僕は結局一作目だけで見るのをやめてしまった。

フィンチャーがこの映画の続きを描くかはわからない。
だがもしも続編がつくられるのなら、是非続きを見てみたい。
デヴィッド・フィンチャー版「ドラゴン・タトゥーの女」は、そう思わせるだけの魅力を持ち合わせた作品である。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)



製作者・出演者の関連作品感想
・デヴィッド・フィンチャー監督作
 「ソーシャル・ネットワーク」
 「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」
・ダニエル・クレイグ出演作
 「エリザベス」
 「007 カジノ・ロワイヤル」
 「007 慰めの報酬」
 「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」
 「ディファイアンス」
 「ミュンヘン」
 「ライラの冒険 黄金の羅針盤」
・ルーニー・マーラ出演作
 「ソーシャル・ネットワーク」 
コメント (2)
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「TIME/タイム」

2012-02-12 22:44:28 | 映画(た行)

2011年度作品。アメリカ映画。
近未来か別の世界か。そこではお金の代わりに“時間”が通貨として売買されている。25歳になった時から体内時計が余命の時間を刻んでいく。スラムゾーンに住む青年ウィルは余命あと23時間だが、偶然ひとりの男から100年分の時間をもらい、富裕ゾーンに入りこむ。そこでは、半永遠の命を持ち贅沢な生活を送る人々がいた。ウィルはそこで富豪の娘シルビアと知り合う。しかし、時間の秩序を守る監視局員たちがウィルを追跡していた。(TIME/タイム - goo 映画より)
監督はアンドリュー・ニコル。
出演はジャスティン・ティンバーレイク、アマンダ・セイフライドら。




トータルの印象としては、ハリウッドらしい映画だな、というところに帰結するだろうか。
盛り上がりはあるもののつっこみどころがいくつか見られるストーリー、それなりのアクション、安い恋愛などは、いかにもハリウッド的。
しかしそれゆえに、「TIME」は楽しい娯楽作品にもなりえている。


時間がマネー代わりの価値を持つ時代、数時間単位の時間しか持たない、スラムの人間がひょんなことから100年もの時間を手に入れ、時間を多く持つ富裕層に復讐する。そういう話だ。

そういった設定からして当然だとは思うのだけど、映画のストーリーには、つっこみどころが見られる。
どこがどうと、いちいち挙げるのは野暮なのでしないが、納得いかねえよな、と感じる部分はいくつかあった。たぶんどんな人でも、そう感じる箇所は、一個くらいは見つけられると思う。


しかしそういうのをつっこんでも仕方ないのである。

この映画は、時間に追われる人物が主人公のためか、テンポが極めていい。
見ている間は、細かいところをつっこまず、脳みそスッカスカにして、そういったテンポの良さに乗っていればいいのだ。
そうすれば、ハラハラ感がわりにあって、カーチェイスなどもそれなりにおもしろく、ストーリーも予測の範囲を超えないが、二転三転あって飽きさせず、勧善懲悪でわかりやすい、本作を楽しめること受けあいだ。

個人的には、悪役とも言うべきタイムキーパーが存在感を放っていて、印象に残っている。
ネチネチした感と、誠実に相手と向き合う雰囲気は悪くない。


というわけで、後には何も残らないタイプの作品だけど、エンタメとしては申し分ない。
個人的にはそこそこ好きかもしれない。

評価:★★★★(満点は★★★★★)



出演者の関連作品感想
・ジャスティン・ティンバーレイク出演作
 「ソーシャル・ネットワーク」
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