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2011年度作品。中国=香港映画。
同じ家族に60年間仕えてきたメイドの桃さんが、ある日、脳卒中で倒れた。雇い主の息子で敏腕映画プロデューサーのロジャーは、もう仕事ができないからメイドを辞めると桃さんから告げられ、彼女のために老人ホームを探す事にする。ロジャーはその法外な費用に驚愕するが、かつての仕事仲間バッタの手配で、無事桃さんはホームに入所する事に。環境の変化に戸惑いながらも、芯の強い桃さんは次第に周りと打ち解けていく。
監督はアン・ホイ。
出演はディニー・イップ、アンディ・ラウら。
「桃さんのしあわせ」は、人と人との交流を描いた物語であり、少子高齢化社会の一側面を描いた物語でもある、と個人的には感じた。
そしてそれゆえに、普遍性を持つ作品でもある。
映画プロデューサー、ロジャーの家で家政婦として働いてくれた桃さんが脳卒中で倒れてしまう。身寄りのない桃さんのために、ロジャーは自分のお金で養護施設に入れて、介護を行なう。
ロジャーの姉や母も桃さんを慕っており、桃さんを訪ねては何かと世話を焼いたりする。
そういう内容からして容易に想像つくことだが、基本的にいい話である。
しかし本作では、それをお涙頂戴な展開にもっていくわけでなく、抑えた表現で淡々と描いている。
そしてその淡々としたリズムの中から、老女と雇い主の家族の交流、そして老女と施設の人たちとの交流の温かみが伝わってくるのだ。
それがしんしんと胸に沁みて、大変好ましい。
しかし養護施設の人たちを見ていると、高齢化社会の縮図を見るような思いを抱く。
施設に預けられたまま、一度も身寄りが訪ねてこない人もいるし(国のお金で施設が預かっているという話が個人的には印象的。いい制度と思うが、日本だったら絶対たたかれるのだろう)、親を施設に預けるに当たって、兄妹同士でケンカをする人もいる。
認知症の人もいるし、老いてなお盛んな人もいる。
そこにあるのは紛れもなく悲喜劇だ。
しかしそれは、人間なら実際に誰にでも起こりうる悲喜劇とも感じる。
そしてそれゆえに、本作は普遍的とも言えよう。
全体的にみると、地味な作品とは思う。
しかし目立たないながら、何かを考えさせられる、温かく優しい作品でもあった。
評価:★★★(満点は★★★★★)
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