2009年も終わりということで、今年読んだ本のベスト10を選んでみた。
1位
川上未映子『ヘヴン』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/d0/c33cc0e3a20233d1dc86334ca1a69275.jpg)
哲学的なテーマ性、キャラクター、プロット、描写力、リーダビリティなど、どれをとっても一級の作品。
「僕」とコジマに個人的には激しく共感。ゆえに後半、二人の間に亀裂が入る展開に心がゆさぶられる。
2位
レベッカ・ブラウン『家庭の医学』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/15/e7d84a0d5cfce0fee08c6ebb7fb577f8.jpg)
自分の愛する人間が苦しみながら、どんどん死に向かっていく様を、淡々と描写している点が印象的。
絶望的な状況にもかかわらず、作中には静けさが漂っており、それが深く胸を打つ。
3位
マリオ・バルガス=リョサ『楽園への道』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/b6/445662b3c97667d9a7d7e28e396433e7.jpg)
キュートで、うざくて、パワフルなフローラの姿に深く感動。野蛮なまでに情熱的な、ゴーギャンもすばらしい。
二人の主人公の存在感が、小説を魅力的なものにしていた。
4位
司馬遼太郎『国盗り物語』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/c1/f4b52efe026de551ce73b228894f87f7.jpg)
前半の斎藤道三のピカレスクっぷりもすばらしいが、後半の明智光秀はそれ以上にいいキャラをしている。
心理描写も的確で、くそマジメな光秀が謀反を起こすに至った背景には、確かな説得力があった。
5位
村上春樹『1Q84』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/78/710bb652e1d39c4829c0e028d8e9f3d7.jpg)
まだ未完のようなので、少し順位を下げたが、エンタテイメント性も文学性も兼ね備えた春樹らしい作品。
ファンだからという贔屓目もあるが、BOOK 3が待ち遠しいと心から思う。
6位
吉田修一『悪人』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/55/84437aafe178cc67a155975d865baac3.jpg)
ある平凡な事件に関わることになった、各人物の状況を重層的に、心理を丁寧に描き出していて、好印象。
光代と祐一という二人の主人公の、愚かで不器用な姿が、あまりに悲しい。
7位
佐藤多佳子『一瞬の風になれ』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/83/17c9c39c384ac53dd4041e552d41b8d7.jpg)
その迷いのない、まっすぐすぎるくらいの王道展開に、強く心を動かされる。
小説全体に疾走感が感じられ、登場人物の爽やかさには感動する。まさに一級の青春小説。
8位
角田光代『八日目の蝉』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/96/0d53552c6f09628b27e6b0bcffe5ef60.jpg)
前半の愛情をもって接する誘拐犯の話も、後半の自分の過去と向き合う少女の話も、どちらもすばらしい。
ラストからは人間の底力のようなものが感じられ、非常にポジティブな印象を受けた。
9位
スタニスワフ・レム『ソラリス』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/6d/47dc2b381717ec826b5205b4d52670a5.jpg)
エンタテイメント性と、哲学性が絶妙に融合した、優れたハードSF。
自分とは違う存在とコミュニケートすることの困難さを、イマジネーション豊かに語っている点に心惹かれる
10位
村上龍『半島を出よ』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/11/71/f320d2696dc923e3bef88f354a75b1ab.jpg)
北朝鮮のゲリラ兵が日本を統治するという、ハッタリに満ちた話を、想像力を駆使して描く筆致に感服。
ディテールの確かさ、プロットの運び方など、村上龍の力量を再認識させられた。
◎番外
金子みすゞ『金子みすゞ童謡集』
村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ『星の王子さま』
上記の作品は以前に読んだことがあるので、ランキングからは外した。
どれもすばらしいまでの傑作である。
◎蛇足
本つながりということでついでに書くと、今年の私的マンガランク1位は、大石浩二『いぬまるだしっ』だった。
ネタっぽく見えるが、ガチだったりする。
●総括
1位と2位の作品には、ほとんど差がない。
順位の違いは、『ヘヴン』の方が最近読んだため印象が強いこと。この一作で、川上未映子のファンになったからということ。そして作家の今後に期待を込めてのものである。
できれば『ヘヴン』は何かの賞をもらってほしいものだ。
目に見える形で、世間的にこの作品が評価されてほしい。
『家庭の医学』は小川洋子が誉めていたから読んだ作品。
本にしろ何にしろ、アンテナを張っておくと、いいものに出会えるという好例であり、僕にとって忘れがたい作品となった。
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