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2012年度作品。イギリス=フランス=ベルギー=イタリア映画。
スコッチ・ウイスキーが根付くスコットランド。この地は今、不況にあえいでいた。家族とうまくいっておらず何かにつけ暴力沙汰を起こしてきたロビー(ポール・ブラニガン)は、またしても問題を起こし捕まる。しかし恋人との間にできた子どもがじき生まれることを鑑みて、刑務所送りではなく社会奉仕活動をするよう言い渡される。そこで指導者のハリーと出会い、ウイスキーの奥深さを知ったロビーは、次第にテイスティングの才能を目覚めさせていく……。
監督はケン・ローチ。
出演はポール・ブラニガン、ジョン・ヘンショーら。
「天使の分け前」はやり直しの映画なのだろう、と感じる。
映画に出てくるのは、懲役刑まではいかない犯罪を行なった人物ばかりだ。
社会奉仕のカリキュラムで出会った彼らは、ふとしたきっかけで、ある犯罪計画を立てる。そういう話である。
結局やるのは犯罪なのかよ、とも思うが、それでも彼らはそうすることでしかやり直すことができないのかもしれない。
主人公のロビーは、つきあっていた彼女との間に、子どももできている。
それをきっかけにまっとうになろう、と考えるのだが、義父は彼を信頼してくれず、むかし暴力をふるった男たちは今でも復讐の機会をねらっている。
どれだけやり直そうとしても、彼の人生には過去がついて回るような状態だ。
そのために誰も彼を認めてくれない。
認めてくれるのは、妻と、仲間と、彼を見守る男だけだ。
逆に言えば、過去ではなく、今を見てくれているのはそれだけの人だということになる。
そんなロビーがひとつの犯行に及ぶのは、金がないからだし、職を得て新しいスタートを得て再出発するためだ。
その犯罪の結末がなかなか楽しい。
一言で言えば彼らの行なったのは高級ウィスキーの強奪である。
それを見ていると、どれだけお高く止まっていても、ある種の金持ちは値段でしか本質を見ることができないのだ、と感じる。
むしろ社会的に虐げられている主人公の方が、本質を知る嗅覚(文字通りだ)に恵まれているとも言えるのだ。
そしてそれは、過去の犯罪でしかロビーを見ない者に対する皮肉に満ちたメタファーでもあるのだろう。
それだけにどこか小気味良さがあるのが良い。
ラストも、気が利いている。
あれは過去ではなく、今の自分を評価し、導いてくれたことに対する謝礼なのだろう。
その視点はなんとも優しい。
それだけに、地味に心に響くすてきな作品となりえているのである。
評価:★★★(満点は★★★★★)
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