2013年度作品。アメリカ映画。
『サイドウェイ』のアレクサンダー・ペイン監督が、しばらく疎遠になっていた父子が、モンタナ州からネブラスカまでの車での旅を通して歩み寄っていく姿を描く人間ドラマ。
監督はアレクサンダー・ペイン
出演はブルース・ダーン、ウィル・フォーテら。
パンチは弱いが、滋味深い作品である。それが本作の率直な感想である。
そう感じたのは、親と子の関係を丁寧に描いているからだろう。
物語は、老いた父がどう見てもインチキとしか見えない手紙を信じ、宝くじが当たったと思い込んでネブラスカまで賞金を受け取りに行くところから始まる。
父はガンコなため、周囲の説得にも耳を貸さず、周りの人間はうんざりする始末。
母親などはその口撃の急先鋒で、やかましく父を攻め立てる状況だ。
このエキセントリックなまでの妻の口撃には、見ているこちらまでげんなりしてしまう。
次男のデイヴィッドもそんな父に辟易しているが、彼だけが父親の願いを叶えようとして行動する。
彼が動く理由は、たぶん親に対する愛情、家族愛によるところが大きいのだろう。
だがそんな家族愛は、激しい口撃を父にくり返していた母にも言えるという点が良い。
彼女は相手を圧倒するほどの次々と言葉でまくしたてるけれど、その裏では旦那のことをちゃんと心配しているのだ。その関係は何よりも良い。
さて問題の当事者である、父親は基本的には物事を信じやすい人である。
そのせいでほかの人間につけこまれ、軽んじられている節もある。
だがそんな父に対する周囲の態度は、彼が金をもっていると知った途端、がらりと変わってしまう。そして何とかして金をたかろうとするのだ。
この態度の変化はかなりリアルだ。
だがそれが一点、ガセネタだとわかれば、すかさず元の態度に戻る。
こちらもリアルである。それだけに、周囲のヤツらのひどさは際立ってくる。
だからこそ、むかしの父の共同経営者に対する、息子の行動は胸がすくのだ。
彼の行動は父を守りたいという思いの表れと見える。
そこにあるのは親子のきずなだ。
そんなゆるやかな親子の姿を丁寧に描いていて、好ましい。
しんしんと沁みる一品だった。
評価:★★★(満点は★★★★★)