2014年度作品。アメリカ映画。
名門音楽学校に入学したドラマーと伝説の鬼教師が繰り広げる狂気のレッスンとその行方を描き、第30回サンダンス映画祭でグランプリと観客賞に輝いた人間ドラマ。
監督はデイミアン・チャゼル。
出演はマイルズ・テラー、J・K・シモンズら。
内容的にはほとんどスポ魂ものである。
ジャズバンドの教師と、ドラムマンを目指す青年の物語なのだが、ノリはスパルタの体育会系で少年マンガ的な魂のぶつかり合いが展開される。
その内容の熱さが忘れがたい作品だ。
とは言え、フィレッチャーのスパルタ教育には問題が多い。
たとえばバンドの練習中、フレッチャーはニーマンのリズムがおかしいと言っては、何度も何度も彼に演奏のやり直しを命じる。
そして演奏をさせるたびに、速いとか遅いとか指摘して罵りもするのだ。
仮にそれが意味のある行為に見えるのなら許せよう。
だがリズムの違いなんて、見ていても何が違うのかわからないのである。
実際、ニーマンもなぜダメなのかわからず、フレッチャーのびんたを浴びて困惑している。
見ていて、正直悲しくなってしまうほどだった。
またドラムマンを誰にするのか決めるため、深夜になるまで、三人にドラムをたたかせるシーンも悲しく痛ましい。
それは本当に狂気じみて見える。
だがそんなフレッチャーの特訓に、ニーマンは必死になって食らいついていく。
そして正規のドラムマンになるため、交通事故にあってでも、演奏会に参加するほどの執念を見せている。
本当に痛ましい、としか言いようのない関係である。
しかしフレッチャーがスパルタ教育をほどこすのは、彼なりに考えがあってのことなのだ。
フレッチャーは才能ある者が一流になるのは、ぬるい環境で満足するのではなく、苛酷な環境を覆すほどのハングリー精神を示したときだ、と考えている節がある。
そんないずれ現れるだろう天才のために、あくまで鬼教師の役割を担い続けている。
それが良いことか悪いことかはともかく、信念があることはまちがいなかろう。
そして一旦挫折しかけたニーマンは、フレッチャーの挑発に乗って、渾身のドラム演奏を行なうこととなる。
このシーンはなかなか迫力があった。
ニーマンとフレッチャーの双方の執念がぶつかり、見事なセッションが生まれる瞬間の爆発力は見事そのもの。
そのすさまじさが忘れがたく、心に残る一品となりえているのだ。
評価:★★★★★(満点は★★★★★)