私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「ミュンヘン」

2006-02-06 22:06:36 | 映画(ま行)


1972年ミュンヘンオリンピック開催中に起きたイスラエル選手団襲撃事件。これに対し、イスラエル機密情報機関モサドは暗殺チームを編成し、報復を企てる。実在の事件を元に映画化。
監督は巨匠スティーヴン・スピルバーグ。
出演は「トロイ」のエリック・バナら。


長い映画である。しかし長いにも関わらず、退屈さを感じることなく、集中力も切れることは無かった。そこら辺はスピルバーグの構成の上手さだろう。
もちろん構成だけの問題ではなく、映画そのものの魅力もそう感じた最たる要因だ。とりあえずかなり見応えのある映画だ。

本作は実際に起きた事件を元にしている。
暗殺を担当したのは、子供の出産を控えた普通の男だ。よく映画で見られるようなヒロイックな感じは無い。とはいえ、最初の方は暗殺をいかに成功させるか、民間人を巻き込まないかということを主眼に置いたある種、サスペンスチックな感じもする。そういう点はヒロイックな話といえるかもしれない。

しかし後半。狙っていた側は狙われる側になり、殲滅戦の様相を呈すにつれ、物事は一変してしまう。血で血を洗う闘争に対しての疑問が明確に浮上し、そこで悩む主人公はやはり普通の一般的な男でしかない。
アヴナーはラストで家族との暮らしに戻っていく。だが、彼はもう以前のような暮らしに戻ることは出来ないのだろう。殺し殺されという連鎖の中に落ち込んだ彼は、決定的に何かが損なわれてしまった。
これはイデオロギー云々も含め、一人の人間の物語として見ても、極めて悲劇的な映画だと思う。

パレスチナの問題に関して、僕はそんなに詳しいわけではないのだけど、ある程度のことは知っている。言い分としてはかなり前から主張されていることで、基本的に両者の言い分は分からなくも無い面はある。
だがもちろん両方が歩み寄らなければ物事の解決はならないのだろう。この映画でも似たような感じのことを伝えていたように思う。
だが当たり前だが、そんなことができているのなら、とっくの昔にこの問題は解決されている。だからこそ、ことは厄介なのだ。
しかし当たり前のことを当たり前のことだ、と主張し続けなければ、いけないのだろう。そういう観点からこの映画の存在価値はきわめて高いと感じる。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)

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