2012年度作品。日本映画。
呼吸器内科医の折井綾乃は、同じ職場の医師・高井との不倫に傷つき、沈んだ日々を送っていた。そんな時、重度のぜんそくで入退院を繰り返す江木秦三の優しさに触れて癒やされる。やがて、お互いに思いを寄せるようになる二人だったが、江木の症状は悪化の一途を辿る。死期を悟った彼は、もしもの時は延命治療をせずに楽に死なせて欲しいと綾乃に懇願する。それから2ヵ月、心肺停止状態に陥った江木を前に綾乃は激しく葛藤する…。
監督は周防正行。
出演は草刈民代、役所広司ら。
テンポは悪いのだけど、尊厳死について何かと考えさせられる一品になっている。
個人的な印象を語るなら、そんなところだ。
扱いにくい題材なだけに、それに挑戦したつくり手の気概をまずは誉めたいと思う。
そう最終的に思えただけに、序盤のテンポの悪さは残念であった。
本作は2時間半という少し長めの作品だが、2時間くらいには収められたように思う。
実際端折れるんじゃないの、って思えるような間が少し多い。
エピソード的には必要なのかもしれないけど、一個一個の内容に時間をかけすぎていて、焦点がぼやけているような気がする。
おかげで全体的にダラダラしてしまい、締りないものになっていた。
特に前半は派手な見せ場もないので、余計にだらけた印象ばかり残ったように思う。
だがそれも、安楽死の場面に至ってからは緊迫感が増してくる。
特に呼吸器を外したときのシーンには目を見張った。
そのシーンの役所広司の動きは恐ろしく、何よりあまりにむごたらしい。
人の命が終わるという重みがそこからははっきりと伝わってきて、戦慄を覚えてしまう。
その後の、検事が医師を追いつめていくシーンもすばらしかった。
何よりヒリヒリするような緊張感にあふれているのが良い。
このシーンに関しては、大沢たかおの迫力が存分に出ていたように思う。助演男優賞ものの名演だったと感じる。
さて物語の方だが、結果から言えば、女医の勇み足ということなのだろう。
実際問題、彼女の行動は他者に対する説明が不足していて、独りよがりの部分も多い。
だが患者が尊厳死を望んでいて、それに対して、どう応えるかを考えたとき、そこには簡単には出せない答えがある。
彼女の選択はまちがっていたが、そこには彼女なりの善意はあった。
だから良いと言うつもりはないけれど、それだけにやるせない。
ともあれ難しい問題に対し、可能な限り誠実にせまった一品と感じた次第だ。
評価:★★★(満点は★★★★★)
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