小林真 ブログ―カロンタンのいない部屋から since 2006

2006年開設の雑記ブログを2022年1月に市議当選でタイトル更新しました。カロンタンは40歳の時に飼い始めたねこです

世界は“戻れる”か~藤田紘一郎『パラサイトの教え』

2006-06-07 10:40:12 | 読書
原稿も書かねばですが、ラピッドライティングのトレーニングに5日連続更新。これまた半年前の読書です。

【introduction】
寄生虫学の立場から「超清潔思向」に真っ向から食ってかかる著者の発言は、新聞などで読んで注目していました。著書は初めて。

【review】
たまたまブックオフで見つけたので買った文庫版だが、茂木健一郎氏の著書に続き選択ミス。おもしろくなくはないが、インドネシアにばかり焦点が当てられていて著者の全体的な考えには触れられなかった。

とはいえ、第2次世界大戦直後の日本人の大部分には回虫がいたとか、寄生虫がいなくなったからアトピーなんかも出てきたんだという部分には納得。もしそうなら、生き物というのは何と不思議なものだろう。

世に少なくない「はだしの教育」のようなものも、きっと著者のような思想も取り入れられているのだろうが、ひょっとしたら私たち現代日本人もさまざまな“自己選択”の1カテゴリーとして、「きれいにするかどうか」を選ぶべき時代にたどり着いたのかもしれない。
もし寄生虫が本当にアレルギーに有効なら、乱暴なようだが学区に関係なく小学校を選ぶように、健康のために“きれいでない環境”に入るという選択が考えられていいのではないだろうか。臨床データがあればぜひみたい。

ここでも、世界は“戻れる”か、という問題を考えなければいけなくなる。
先行きの見えない時代でノスタルジックな共同体再生論もよくきくが、“進んで”しまった世界を人間は戻すことが可能なのだろうか。

不確かな根拠ながら、私は世界はもとのかたちには戻らないと思っている。養老孟司氏がいうよう社会が脳によってつくられたものなら、脳が戻るのでなくあるものの上に積み重なっていくことのアナロジーとして、世界は決してもとと同じには戻らないだろう。
だとすれば、もとのかたちをもう一度つくるか、ヒトにとってふさわしいまったく新しいかたちをつくり出すしかない。共同体にしても、身体環境にしても。

とはいいつつ、これだけ清潔化した社会の一部に不潔を築くということ、つまり“人工的な不潔社会”が、具体的にどういうことかはまったくイメージできないのだけれど。ビオトープとか、テーマパークみたいになってしまうのだろうか。

05年11月17日読了 ブックオフで購入

(BGMは「不潔」といって思いあたった90年代のグランジの名盤、ニルヴァーナ "never mind" 。この前、WOWOW のリーガ・エスパニョーラ総集編できいたヒップホップ版もよかったが、"smells like teen spirit" というのはやはり名曲。といって、ほかの曲はほとんどきかないのだが。ところで、アルバムタイトルはどういう意味だろう)

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2 コメント

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Unknown (同級生M)
2006-06-08 18:03:27
いつもお世話になります。

映画などでも昭和を「古きよき時代」だと懐かしむものが昨今多いですよね。



しかしあれらも、いわゆる脳内ワールドであり、「古きものの良いとこどり」でしょう。

昭和の町並みを再現したテーマパークなどもありますが、あの居心地の悪さには嫌悪すら感じます。やはり元に戻すことって出来ないのじゃないかと思います。



しかし元には戻せないけど、良き物の継承は出来るのではないでしょうか。清潔、不潔とはあとから加えられた概念。人にとって住みやすい世の中は何だったのか・・・と、それを検証し受け入れる覚悟があれば、世界は変わるものだと信じたい・・ですね。



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世界は戻らない (カロンタンのエサやり人)
2006-06-09 09:11:55
そう世界はやっぱり戻らない、だからこそ『リプレイ』は貴重な思考実験として私たちに訴えかけるのでしょう。

継承もまた可能。よりよき世界をつくることは、今に生きる者の仕事なのだと思います。

ただ清潔・不潔はずいぶん前からあったわけで、その物差が変化し世界全体でその変化の方向に同一の傾向があることが、M君の敵であるマクドナルドと同様に問題なのでしょう。
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