墨汁日記

墨汁Aイッテキ!公式ブログ

徒然草  第八十三段

2005-10-12 19:58:07 | 徒然草
 竹林院入道左大臣殿、太政大臣に上り給はんに、何の滞りかおはせんなれども、「珍しげなし。一上にて止みなん」とて、出家し給ひにけり。洞院左大臣殿、この事を甘心し給ひて、相国の望みおはせざりけり。
 「亢竜の悔あり」とかやいふこと侍るなり。月満ちては欠け、物盛りにしては衰ふ。万の事、先の詰まりたるは、破れに近き道なり。

<口語訳>
 竹林院入道左大臣殿、太政大臣に上り成すのに、何の滞りもおありもなけれども、「珍しげなし。一上(→左大臣)にて止めた」と、出家してしまいました。洞院左大臣殿、この事を感心しまして、相国の望みなくされました。
 「亢竜の悔あり」とかいうことあります。月満ちては欠け、物盛りにしては衰う。万の事、先の詰まれば、破れに近い道です。

<意訳>
 現在では竹林院入道と名のる法師。もとは左大臣で、朝廷においては太政大臣にだって出世できたはずの人なのです。
 でも、「太政大臣なんか面白くもなんともない。左大臣でやめた」と言って出家なされてしまいました。
 洞院左大臣。この事を聞いて深く感銘し、同じく太政大臣への望みをなくされました。
 「上りきった竜に悔いあり」という格言もあり、満月は翌晩からは欠けるだけ、花は盛りにして散る。出口がなくなりゃ破裂するだけ。

<感想>
 太政大臣は朝廷の最高権力者である。
 その位につくと先がないから、世を捨てるなんて事を言う政治家ばかりになると国が滅ぶ。個人の美学としてなら否定はしない。しかし、こんな政治家ばかりだと国は確実に滅びる。
 この段は、前段の補足であるが、この時代の貴族の責任感のなさにあきれつつも、個人的にはそういうのもありかなとは思う。
 でも。一度、完成しておきながらも、自分でその全てを打ち砕くパワーのある人間が現れないかぎり歴史は動かない。
 小泉さんが、なんだかんだと人気があるのは、支持率なんか気にしてない風の行動に理由があるのだろう。

原作 兼好法師


最新の画像もっと見る

コメントを投稿