墨汁日記

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徒然草 第百六十一段

2005-12-15 20:02:29 | 徒然草
 花の盛りは、冬至より百五十日とも、時正の後、七日とも言へど、立春より七十五日、大様違はず。

<口語訳>
 桜の盛りは、冬至より百五十日とも、春分の後、七日とも言えども、立春より七十五日、大方違わず。

<意訳>
 桜の盛りは、冬至より百五十日後。春分の日の二日後に訪れる「時正」から七日後だとか言うけど、立春より七十五日後で間違いないだろう。

<感想>
 兼行の使っていたカレンダーは、『陰暦』と言って、月の満ち欠けを基準にしたカレンダーだ。現在では「旧暦」と呼ばれている。
 現在の俺らが使っている「西暦」のカレンダーは『太陽暦』といって、地球が太陽のまわりを一周する「公転」を基準にしたカレンダーである。
 『太陽暦』ではカレンダーがないかぎり専門家でもなければ、今日が何日だかわからない。それに比べて『陰暦』なら、月の満ち欠けを毎日観察していれば素人でもカレンダーなしで今日がだいたい何日か見当がつく。
 どちらが日本の風土にあった、優れたカレンダーであるのかは、この段では関係ない。この段の話題は「桜の開花日」である。
 兼行の言う「桜」とは今で言う「山桜」のことであろう。現在の「ソメイヨシノ」とは違う別の桜だ。
 考証してみよう。
 「冬至」には、西暦も旧暦も関係ない。一年で最も夜が長い日が当時から「冬至」なのだ。西暦のカレンダーなら12月の22日頃。旧暦なら11月の頭ぐらいが「冬至」となる。では、足し算。12月22日足す150日では、だいたい5ヶ月後で西暦にして4月22日頃。
 次に「時正の日」だが、これは正確に昼夜の時間が同じ日の事である。「春分の日」の2日後がこれにあたるそうだ。「春分の日」は、西暦で3月の20日頃。足し算すると3月の27日頃になり、なぜか桜の盛りの時期が、さっきの4月22日頃と1ヶ月ちかくずれている。
 「立春」も、西暦も旧暦も関係ない。「冬至」と「春分」の真ん中ぐらいが有無を言わせず「立春」となる。そうすると西暦では、だいたい「立春」は2月5日頃になる。その75日後は足し算して4月20日頃。
 まぁ、「時正の日」から7日後ってのだけが他と外れていて、やや疑わしいけど、兼行は平気で主語とかはぶく人だから実はなんか他に言いたい事があった可能性もあるし。まー、おおむね新暦なら「4月20日頃」が桜の盛りの時期だと兼行はこの段で言いたいらしい。
 では、「ソメイヨシノ」が現在の「京都」で満開になるのは西暦で何日ぐらいだろうか?
 気象庁発表で4月の1日頃だそうだ。
 でも。
 兼行の言う桜は「山桜」だし、俺の生きる現在と兼行が生きた鎌倉時代では気象条件も違うはずだ。
 当時は寒くて桜の開花も遅かったはずという研究報告もあるそうだ。
 よくわからんけど、たぶん、当時の京都の「山桜」は「西暦」で言うなら「4月20日」頃。「旧暦」で言うなら「3月下旬」頃が「盛り」だったらしい。
 が、そもそもに、桜のみどころは散り終わってからとか言う人の語る桜の盛りだ。兼行的にはどの段階が桜の盛りであるのかもあやふやで、この段で兼行が語る事はなにもかもあてにならない。

原作 兼好法師


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