絶版プラモデルやじ馬考古学・ボックスアート美術館(なつかしき50~60年代アメリカプラモの世界)

古き良き時代の絶版プラモを発掘する、インターネット考古学。現在、・ボックスアート美術館にてエレール特別展を開催中!

アトラス編「ボックスアートを楽しむ:Everything is Go すべては、うまくいった」

2006年12月04日 | プラモデル


諸君!
アトラスの講義のために
ブックマークに、いろいろ資料を
用意しておいたゾ。
当然予習は完璧なはずじゃ。喝!


ボックスアートを楽しむ                                                              
                                                        
                                                            
                                                         
                                                                   

プラモデル野次馬考古学

マーキュリー/アトラス編

Everything is Go アメリカの歓喜、勝利の予感、そして偉大なる目標へ


ボックスアートに、デンと載せられた「Everything is Go」の文字。

「すべては、うまくいった」
このタイトルに、当時のアメリカの本音が秘められています。
考えてみてください。世界初の人工衛星は、アメリカが打ち上げる予定でした。
しかし、開発がモタついたすきに、ソ連は1957年10月4日に人工衛星スプートニク1号を打ち上げ、アメリカのメンツは丸つぶれの状態。
これをなんとか挽回するため、急きょジュピターCを打ち上げたことは、以前このブログでご紹介した通りです。

ソ連の宇宙開発計画はとどまることを知らず、ついに1961年4月12日ガガーリンによる人類史上初の有人宇宙飛行を成功させ、ソ連の優位を全世界に知らしめたのでした。

二度にわたって、顔にドロを塗られたアメリカ。
この汚名挽回をすべく、計画されたのがマーキュリー計画であったのです。
そんなわけで、1962年2月のジョン・グレン搭乗のフレンドシップ7による有人宇宙飛行成功は、アメリカの失いかけた自信をよみがえらせた、という点で大きな意義があったといえます(その喜びようはハンパじゃない、ということがわかりますよネ)。
そして、ソ連に追いつき、いつの日にか追い越す日が到来することを予感させる「勝利への予感」をアメリカ国民に持たせたことも、見逃すことのできないポイントだったといえるでしょう。

「Everything is Go」という文字には、こうしたアメリカ国民の想いが凝縮されているのです。

ところで、このキットのボックスアートなんですが、マーキュリーカプセルを切り離したアトラスをダイナミックにとらえた構図でGOODなのですが、よく見ると描き方がチョッとラフだな、という感じがしませんか。
とくに、背景の地球など簡単にサッサと描いたように見えます。
このボックスアートの作者が、誰かは不明です。
作風からJack Leynnwood氏かな、という印象を受けますが、よくわかりません。
ただ、彼の作品であれば、もっとていねいで緻密な描き方をするのになあ、と思います。もしかしたら、ボックスアートの注文をたくさん抱えていたため、制作時間が十分に取れなかったのかな、などと考えてしまいます。
ボックスアートを見て、制作現場の裏側の事情が読めると面白いですね。



さて、下はヒストリーメーカーズのボックスで、キットの完成写真。
こうやって見てみると、主役はアトラス本体よりも発射台の方だ、というのがよくわかります。
以前取り上げたジュピターCの発射台に比べると、その巨大さがイメージできます。
これも、ICBMがもつ巨大パワーの産物なのでしょうか。
とにかく、デカイねェ!

ちなみにボックスの完成写真はアトラスが斜めの位置になっていますが、実物のアトラスはこのまま垂直に立てて、発射台にセットします。
どのようにして垂直に引き起こすのかというと、発射台の隣(キットの完成写真でいえば、発射台右側)に設置された巨大な整備塔(キットには入っていませんが)から出たワイヤーケーブルをアトラスを載せたトレーラーにつないで、整備塔の大型ウインチを使ってトレーラーごと引き起こすようにして垂直に立てます。この作業風景は、なかなか壮観だったでしょうね。


なお、アトラスの輸送は通常このトレーラーを使って行われますが、長距離輸送の場合、専用の大型輸送機で空輸されます。
ダグラスC-133カーゴマスターがそれで、本機は当時戦略ミサイル専用輸送機ということで、かなり知られた機体でした。子ども向けの飛行機図鑑にもよく紹介されていて、小学生だった私は、あの大きなミサイルをどのようにして運ぶのかな、と思っていました。実際は、ミサイル(アトラス)を載せたトレーラーごと機内に搭載して空輸するのですから、いやはやスケールのデカイ話ですよね。




この精密さを、トクとご覧あれ。
このキットは、発射台の構造と運用方法がよく理解できる、いい見本です。
実際の写真だけでは、イマイチよくわからなくても、プラモデルなら立体的に把握できます。あるイミで、プラモデルは教材なんです。
たかがプラモデル、なんていっているとバチが当りますよ。ホント







参考資料:偉大なる目標、月面へ‥‥の場合

下は、アポロ・ルナ・スペースクラフト(1/48)のボックスアート。
マーキュリー/アトラスのボックスアートに比べると、おとなしい感じ。「われわれは、ついにやったんだ!」という溢れんばかりの歓喜は見られません。
なにか淡々と描かれている、そんな印象です。

どうしてでしょうか。
おそらく、このキットの発売時点で、ソ連の有人宇宙船による月面着陸は、すでに断念されており、アメリカの一人勝ちがはっきりしていたため‥だと思います。
マーキュリー計画のときとは状況が違いますよ、ということでしょうか。





さらにオマケ:文献紹介


「マーキュリー計画」に関する書籍で、もっとも有名なものが、コレ。
ワーナー映画「ライト・スタッフ」の原作本です。

ザ・ライト・スタッフ

 トム・ウルフ著

 中野圭二 加藤弘和 訳

 中公文庫(単行本もありました)  ただし、現在は絶版です。残念!

 内容は、ご存知の方も多いと思います。
 緻密な構成で、大変読み応えのある書籍です。
 アメリカ初期の有人宇宙飛行計画の概略を知るには、この本一冊あればOK。



大空をイメージさせるブルーをベースに、「ライト・スタッフ」の文字の中に、7人の宇宙飛行士が見えるなんて、なんて奇抜なレイアウトでしょうか。このデザインを担当した人のセンスが光ります。

続く




「オイ、相棒

これもロケットだぜ」

???????????????????









次回のチラリズム                                                           
                                                                      
                                                                
                                                               
                                                                  



ワォー!
組み立て図を見ることによって、発射台の構造が理解できるゾ。



                                       プラモデル野次馬考古学