絶版プラモデルやじ馬考古学・ボックスアート美術館(なつかしき50~60年代アメリカプラモの世界)

古き良き時代の絶版プラモを発掘する、インターネット考古学。現在、・ボックスアート美術館にてエレール特別展を開催中!

自由研究脱線編:リンカーン・フューチュラの巻

2006年09月19日 | プラモデル

今回の発掘品は『KIT No.H1270 リンカーン フューチュラ 1956年製』です。



なんて独創的なスタイルなのでしょう。

ジェット戦闘機をイメージさせる、バブルタイプの風防。
垂直尾翼をイメージさせる、ピンと張った後部の大型フィン。
ジェリーアンダーソンのスーパーマリオネット作品「スーパーカー」(かなり古いけど、ご存じですか)をイメージさせる、流線型のボディ。
リンカーン フューチュラは、まさにクルマと航空機の融合だったのです。

このフューチュラは、1955年の自動車ショー・モトラマで、フォードのドリームカー(今日的な言い方では、コンセプトカーかな)として、華々しくデビューしました。
V-8エンジンという強心臓をもち、変速機もオートマチックでした。
今の日本では、乗用車のほとんどがオートマチックで、商用車やトラックでもオートマチックは珍しくなくなりましたが、1955年の時点でこのようなメカを装備していたのは、さすが自動車大国のアメリカです。
この時代のアメリカ自動車業界は、まさに黄金時代で、装甲車のような巨大で頑丈なボディーに、クロームメッキキンキラキンのゴツいバンパーを取り付け、さらにヒコーキの垂直尾翼を思わせるデカいテールフィンを取り付けて、これでもかこれでもかという超ド派手なデザインのクルマを、次から次へと生み出していました。

その頃の日本はどうかというと、高度経済成長がスタートしたばかりで、庶民がマイカーを手にするのは、まだ先の話でした。
クルマもオート3輪車(ミゼットなんて、なつかしい。でも、今のミゼットとは別物です)などの商用車が多くて、乗用車だと少し遅れてスバル360(1958年発売の、あのテントウムシです)が比較的多く見かけるようになりましたっけ。
私が幼稚園、小学校低学年の時、友だちの家でマイカーがあったところは、やはり親が会社経営をするとか、商売をしているとかで、割と金持ちのところが多かったですね。でも、さすがに外車(外車=アメ車の時代です)を持っているところはなかったです。
アメ車というと、近所の開業医が一台所有していたので、他を圧倒するような巨大なクルマに乗って、往診に出かける姿(看護婦さん同伴‥‥今なら看護師と呼ぶのでしょうが‥‥)を、時おり見かけたものです。高い往診料をとったのでしょうね(関係ないけど)。
一般家庭では、電化製品を中心とした耐久消費財が普及しだしたのもこの頃で、「三種の神器」、つまり白黒テレビ(当時テレビは超貴重品で、駅前の広場に設置された街頭テレビは、いつも黒山の人だかりでした)、電気冷蔵庫(わざわざ電気と謳っているところがミソで、それまでは木製の冷蔵庫の中に氷を入れて冷やしてました。氷だって、氷屋まで買いに行ってましたヨ)、電気洗濯機(これも電気というのがミソで、当時はデカいタライに洗濯板を入れて、手でゴシゴシ洗っていました)が、超目玉商品でした。
ちなみに、1960年代後半になると「新三種の神器」で、ようやくクルマの名前がでてきます。他にクーラー、カラーテレビが、当時の目玉商品というわけです。

またまた話が脱線してしまいましたが、このフューチュラは、ドリームカーとしてデビュー後、1959年公開のラブコメディ映画「It Started With a Kiss」に登場し、さらにその後意外
なところで活躍していました。
テレビ放映版「バットマン」の、バットモービルとしての登場です(この事実を知ったのは、かなり後でした)。
バットマンとロビンが悪人退治のために、バットモービルに乗って秘密基地から出動するシーンが好きで、毎回かかさず見ていました。車体後部の噴射口から炎を噴出して、ドヒューン!とスタートする姿は、カッコよかった!!
私の脳裏には、フューチュラ版バットモービルの姿が焼き付いているので、1990年代に公開された劇場版に登場するバットモービルを見て、あれは本当のバットモービルじゃない!‥‥と勝手に怒っておりました。


ボックスアートを見ていきます。

この絵に、1950年代なかばのアメリカが凝縮されています。
豊かなアメリカ、ハッピーなアメリカ、ビッグなアメリカ、輝くアメリカ、ゴージャスなアメリカ、そして、ナンバーワンのアメリカ‥‥。
当時のアメリカンライフが、うかがい知れます。
それに、ふたりの笑顔を見てください。なんてハッピーなんでしょう!
リッチなダンナとセレブな奥サマは、これから豪華なディナーへ行くのでしょうか。
‥‥そんなことを、連想させる絵です。
この作品は、当時レベルのアートディレクターをしていたRichard Kishady氏の作で、キラキラと輝く、ゴージャスで光沢感のあるフューチュラのボディを見事に再現しています。
さらによく見ると、リンカーンとかフューチュラとかのロゴや、エンブレムも手書きのような印象を受けます。もし、これが本当に手書きであるとするならば、なんと暖かみのある絵なのでしょうか。
原画は、ロゴ等が描かれていないので、おそらく別途ロゴ、エンブレムを個別に作成し、印刷用版下作成時に組み合わせたのでしょう。




側面ボックスアートです。この絵も、アメ車好きにはこたえられない絵ではないでしょうか。
左からキャデラック・エルドラド、フォード・フェアレーン、リンカーン・コンチネンタルMKⅡで、キャデラックとリンカーンがJ
ack Leynnwood氏の作、フォードがKishady氏の作となっています。
アメリカ自動車業界の1956年の出来事としては、リンカーンがフルモデルチェンジをしており、1948年型の発売以来、生産が中止されていたコンチネンタルを、MKⅡとしてリバイバルした年でもありました(当然、話題の中心はコレです)。
ですから、コンチネンタルのリリースは、レベルにとってまさに時流に乗ったすばやいものだったのですネ。いつの時代でも、プラモデルメーカーは流行に敏感です。
ちなみに、実車のお値段ですが、2ドア・スポーツクーペで9、970ドル(当時)。
今なら、どれくらいの金額なのでしょうか。

 

 

左から、ビュイック・リビエラ、クライスラー・ニューヨーカー、マーキュリーで、ビュイックとニューヨーカーがkishady氏の作、マーキュリーがLeynnwood氏の作となっています。
どれを見ても、豊かなアメリカを象徴するようなクルマばかりです。

ここで問題です。画像がよくないので、チョッとわかりにくいかもしれませんが、上記6車で、デザイン上共通している点がありますが、それは、何でしょうか。
わかりますか。じつは、ヘッドライトがどれも2灯式、つまり二つ目だということです。
ナンだ、そんなことかと思われるかもしれませんが、アメリカ車の主要1958年モデルからは、4灯式、四つ目になりました。これはアメリカ車のデザイン史上画期的なことだったのです。これによって、二つ目が一挙にすたれてしまったのですから…
1957年モデルでは一部の車種で四つ目が採用されていましたが、見た目のカッコよさから1958年モデルからはほとんどの車種が四つ目となっています。、この時点で二つ目の乗用車は、とうとう消滅してしまったのです。。
トリビアではありませんが、第二次大戦後の古いアメ車(乗用車)は、ヘッドライトの数で1958年モデルより前か、後かがわかる‥‥というわけです。
また、航空機の垂直尾翼みたいなテイルフィンが 、流行りだしたのもこの頃でした。
                                        
                                                 完

 「貴様かァ!!
前回のブログで、オレの腹が出ているだ、
ガ二股だとかぬかしたヤツは。
銃殺だ!」

「いいか、死人ども。
次回も、フューチュラの続きをやる。
しっかり、予習をしてこい。
わかったな!
復唱ッ!!」

 ※ダーリンの当惑の原因究明は、パーツ編で行います。 
  スミマセン。

 

 



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4 コメント

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コメントを、ありがとうございます。 (prinzougen2)
2006-09-22 13:24:06
先日、ドイツレベルのジュピターCが入荷したという情報をキャッチしたので、模型店にスッ飛んでいきました。

私も過去にヒストリーメーカーのものを買ったことがあるので、内容についてはわかっていたのですが、初版と同じJohn Steelのボックスアートで再版されるということだったので、思わず衝動買いをしてしまいました。

中身は、ロケット本体と発射台は白でしたが、それ以外は赤のプラスチックで成形されていて、けっこうハデハデでした。

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やっぱりそうですか! (たんたん)
2006-09-21 22:53:38
やっぱりそうでしたか。ジュピターCは、ヒストリーメーカーズのものをかつて作ったことがあります。最近NHKで放映したロケット開発に関するドラマに本物が出てきて、当時のレベルのキットの出来に改めて驚きました。このようなキットをドンドン復刻して欲しいものですが、なかなか出ませんね。出てもすぐ品切れになるし。。。
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ジュピターCとレッドストーンは同じです。 (prinzougen2)
2006-09-20 17:10:03
コメントを、ありがとうございます。



レベルのジュピターCとレッドストーンは、ロケット本体および発射台については、まったく同じものです。



レッドストーン、マーキュリー/レッドストーン、ジュピターCと、3回のご奉公、お疲れさまでした‥‥と、いいたいです。
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フューチュラー (たんたん)
2006-09-20 12:37:00
フューチュラ、かっこいいですねー。

ところで、ジュピターCのキットに入っているロケットとレッドスト-ンのキットは、台も含めて同じものだった記憶があるのですが、合っていますでしょうか?(衛星の有無の違いはありますが)
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