満天横丁に住まう妖怪のひとり言

満天横丁に住む満天と申します
最近、猫妖怪化してきており更新は不定期ですが…
ひとり言にお付き合い頂ければ幸いです。

萩尾望都 マージナル

2009-06-12 | 漫画紹介






萩尾望都 「マージナル」である
marginal【形】
 〈問題など〉周辺的な; あまり重要でない
 限界の, ぎりぎりの, 最低の
 〈土地が〉生産力が(ほとんど)ない  (エキサイト辞書より)

という意味と…もしくは
「境界線上にあり、どちらへも属する可能性がある」とも言える意味がある
ま、「ヤジロベイ」みたいなもんだろうか?

萩尾さん自身は「不毛な世界」という意味を使っていたと思う

上記写真は、1994年に初版出版されたものを
いつも遊んでもらっておる「トミーさん」からお借りしたものである
うっとりするほど、素敵な絵だよな~

ところで、本書は1985年に「月刊プチフラワー」で連載されていた
見た記憶はある。だが最後まで見ていないと思う
最初のシーンは記憶にあるのだが…後半になると全然覚えていなかった(笑)

上記に書いたマージナルの意味の中に
〈土地が〉生産力が(ほとんど)ないとある
本書の場合は、土地=地球が病んで…なぜか
生殖能力を持った女性が生まれなくなった
っという設定が土台にある

正直、この設定には無理がある(笑)
男性の方が女性よりも、肉体的にも精神的にも弱い存在である
生殖能力がなくなり、絶滅するなら男の方だろう…っと私は思うのだが…(ハハハハ)
ま、アマゾネスの世界を描いても少女雑誌の読者にはウケんでな(笑)

ともあれ、地球は死にかけていた
もちろん地球以外なら生殖能力を持った女性が生まれるので
ほとんどの地球人は宇宙へと逃げた

だが、病んだからといって故郷はそう簡単には捨てられない
だから「マザー」という女性を中心に子供を作り
年に一人か二人の割合で、各地域へと払い下げ均衡を保つという
ミツバチ社会的な「マージナル」というプロジェクトが進行していた

しかし、その「マザー」も年を取り、子供が産めなくなってきた
新しい「マザー」の誕生を切望する地球の民。
地球を管理するために、他世界から派遣された長官メイヤード。
全てが滅びへの序章として動く中
イワンという科学者が作り上げた感応能力に優れた「夢の子供」キラの誕生により
不確かで無機質な希望の光が差し込むのだが…

「プロジェクト・マージナル」が静に狂っていく姿をアナタはどう見るか?

ってな漫画である(笑)

地球が病むことをテーマにする漫画や小説は多いが
確かに、病んだ地球の上で生活している生命が地球の影響を受けないはずもなく
なかなか鋭いところを指摘した漫画だと言える

長官のメイヤードは
同じく萩尾作品の『スター・レッド』ペーブマンを彷彿とさせ
手塚治虫のロックをも思い出させる。
悶々と一人悩む姿は、気苦労が多いだろうなっとつい思ってしまう(笑)

人によって作られた「キラ」は…人間と言えるのかどうかが解らない
カタツムリやミミズのような雄雌両方の生殖器官を持っている雌雄同体とは違うし
人の奇形として言われている、両性具有者とも言い切れない
人や地球の思いが「キラ」を男性にもするし、女性へとも変化させる

萩尾作品でよく表される「性のない人」…これに私は頭を悩ませる(笑)
時に少年・少女をこの「性のない人」と表す萩尾作品は
往々にして無力でどっちつかずのこの弱い立場の人を、強いモノが蹂躙する
「メッシュ」しかり、「残酷な神が支配する」しかり

これとは対極的に、萩尾作品の中では
子供が沢山いて、大らかで、太っている典型的な幸せ男女もよく描かれる(笑)
緩和剤なのか中和剤なのかは解らないが
なんとなく、好きになってしまう人物でもある
「メッシュ」のカティ、「感謝知らずの男」の看護婦ドーラなど

本来は男女が恋をし、幸せ一杯で…だから食べ物も美味しく
体型は太り「ガハハハハハ」っと笑うところにこそ、本当の幸せがあるんだよ
っとでも言っているようにも感じる

過去日本でもヨーロッパでも、女性は太っている方が美しかった
いつのころからか、生殖性の感じられない男の子っぽい細身の体型が尊重され
美しいと評価されるようになる
だから女性は痩せるためなら食事すら抜くようになる
痩せた女性を美しいと感じる男性は、本来の生殖活動が細り
猛禽類から草食類へと変化し、女性も男性も中性への道を歩み初めている

しかも、争うことを極端に嫌い…自分の言いたいことを心にしまい込み…
いや、心で思うことすら疎い、無理に他人と同調しようとするこの中性人たちは
「性のないキラ」によく似ている
たまりに溜まった感情を制御する術を持たず、時に爆発し、時に病むからである

必然的に生産性は衰え、地球の「マージナル化」(不毛化)は進む(笑)

私の単なる思い込みかもしれんが…
萩尾作品の大らかで太った女性を見ると「ホっ」とするのは
そんな理由からかもしれない

最近、男性の数が減ってきているそうな~「男性人口減少」
「逆マージナル化」(生殖能力を持った男性が生まれなくなる)時代が来るかも…

最後のオチに多少の納得のいかない部分もあるが…
この手の作品にスッキリとしたオチを求める方が、間違っているのかもしれん
なかなか味わい深い、面白い作品なので
機会があれば、読んでみてほしい~

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22 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
私も好き~ (たれぞ~)
2009-06-12 15:19:17
萩尾作品は数も多いので、あまり読みこなしていないのだけと、この「マージナル」は私も持っているよん
コミックス版でリアルに買ってたので思い出が深いの。

萩尾さん作品はどれも奥深いと言うか、難しいトコが多いけど、その分何度でも読み返せるよね~

わたしゃ~あのメイヤードが最期につぶやいた言葉で泣けたね~
あぁ不毛の地でマザー計画の推進者である彼自身が一番悔しく悲しかったのだろうと・・・
マザを作り続けながら、一番そのシステムを憎んでいたのは彼かもしんないなと

キラとメイヤードが生と死というか、光と影のようなコントラストを生んでるよね

やっぱり人間は惹かれあい、結ばれるのが自然の摂理なんだろうけど、そこからはじき出されたモノだからこそ知る悲しみと嫉妬がねぇ・・・

まぁ何にせよ、あんな未来は来ないことを祈るわ
返信する
ご返事どす~ (たれちゃんへ)
2009-06-12 17:39:28

メイヤードが、一番マージナルの世界で
マトモなんじゃなかろうか?っと私は思うだ
体はマトモじゃないが、精神がね(笑)

彼。マージナルをぶっ壊そうとは思っていたけど…
こんな形でぶっ壊れるとは思っていなかっただろうし
意外に真面目で実直なあの性格からして、
可なり焦ったことだろうっと思うと
可哀想だな~なんぞと思っただ

んっ?そうやって見続けると…彼もやっぱり偏屈で変人か?(笑)

この頃の萩尾作品は…まだ私の中で理解できる内容だと思うだ~~
もそっと経つと…何が?言いたいんじゃ~っと頭をかきむしりたくなるがの(笑)

>やっぱり人間は惹かれあい、結ばれるのが自然の摂理なんだろうけど、そこからはじき出されたモノだからこそ知る悲しみと嫉妬がねぇ・・・

たれちゃん。深いね(笑)
子供を作らない結ばれ方をするのは人間だけだもんな~(ハハハハハ)
自然に逆らう動物が自分の上でのさばっていたとしたら…
地球はどうするだろう?私らは地球時間で言えばアっという時間しか生きてないけど
チラっと地球がウザイっと思ったら
何が起こるか解らんもんな~

地球にはウザイと思われるかもしれん人間だけど…
私は人間が好きよん
特に、流れから弾き飛ばされた者たちが
嫉妬と悲しみをバネに力強く立ち上がる姿がね
えてして
ノホホンと大河を泳ぐ魚の方が、急流でもまれた魚より弱いのだ
ね。だから人って好き(笑)
返信する
これ大好きです。 (ちと)
2009-06-12 20:36:37
自分で感想書いてたと思ってたのだけど、調べてみるとまだ書いてませんでした。
きっと内容が深すぎて、書きたいことがいっぱいありすぎて結局書けなかったんだと思います。

「逆マージナル化」になるかもしれないというご意見、私も同感です。
草食系男子が増えてるとか、Y遺伝子がどんどん小さくなっているとか、男性が絶滅するのも時間の問題なのかもしれません。

メイヤードがロックに似てるって私もそう思ってました。ロックタイプって私の好みです♪

追伸:
<友達>ありがとうございます~!これからもヨロシクです~!





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深イイ~! (いっさん)
2009-06-13 00:48:28
読んだ事無い作品ばっかりだ~

手塚先生の「ロック」は何度も読んでるけど・・・似てるんだ~

それにしても昨今の少子化はその“中世人”の出現が原因の一つなんだろうなァ

腹筋が明らかに分かる女性よりも、丸みのある
ウェスト(往年のアグネス・ラム)を持つ女性
の方が絶対にエエに決まっとるよ~!

ただし“鎖骨”(酒井和歌子)は出ていないと駄目だけど・・・
返信する
Unknown (独裸絵悶)
2009-06-13 08:01:00
最近、逆の男が少ない世界の本を読んだ。
ようこそ女たちの王国へ (ハヤカワ文庫SF) レビューで☆☆☆☆
おもしろかったよ。




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Unknown (asagi)
2009-06-13 16:48:05
「マージナル」昔読みました(^^)
あ、でもこの本の表紙、コミックスとは違って、東逸子さんの絵ですね。

どういう結末だったのかさっぱり思い出せない…。
ところどころ、ものすごく鮮烈に覚えているシーンがあるのに。
きっと私には内容が難しすぎたんですね(^^;

萩尾望都さんのSFは、とにかく難しいものが多い気がします。
「銀の三角」なんか、難解すぎてもう…。
でもなぜか惹かれるんですよね~(^^;

満天さんの分析、面白い&奥が深い!
私も、絶滅するなら男が先だろ~と思います(笑)

PS.私の読書量なんてたいしたことありませんよ~!!!
とにかく、読むのがすごく遅いので。
どう見ても満天さんのほうがマメに更新されてるし、何より内容が深いです。
私のは絵本がほとんどですしね~(^_^;)
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ホッとしてちょ~ (まるめろ)
2009-06-13 22:43:53
「メッシュ」と「残酷な神が支配する」は
読んだ事あるが、この「マージナル」ちゅう
作品はまだ読んで無いわぁ~、でも満天さんの
解説でほぅほぅとなんとなくわかったような・・・
”まるめろ”の周囲は、28歳だけど、子作りしないまま
生殖能力を無くした女がイッパ~イ イッパ~イ
まぁ、なんだな・・・未婚女性にも安心して子供を産める社会を切望するね~
結婚は勘弁な・・・・


”まるめろ”は大らかで太った女だ
「ホッ」としてちょ~~~~
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はじめまして♪ (くろねこ)
2009-06-14 18:26:16
たれぞ~様・トミー様ところから
飛んでまいりました。漫画ファンくろねこです。よろしくお願い致します。
この表紙は初めて見ました~。美しいですね。
この男しかいない世界がきっちり書かれてるとこがすごいですよね。
キラって結局なんだったんですかね~?
難解な作品ですがいろんなことに思いをめぐらせられるってのも
萩尾さんの作品ならではでしょうね~



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ヨーロッパ (どいつりす)
2009-06-14 18:33:04
萩尾作品ってヨーロッパ、またはヨーロッパ人らしき人々が出てくるものが多いのでしょうか。
日本にいた時は全く気にしなかったのですが、
ここにいると「どうしてヨーロッパばかり日本人が描く?」
って気になってしまいます。
容貌、に関しては東洋人は太刀打ちできないので、
描きたくなるのだろうな。
萩尾作品、どれもきれいに人々や街並みを描いているし。
こちらでこれだけ描ける人、いないのかも。


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Unknown (作太郎)
2009-06-14 22:17:36
萩尾望都 「マージナル」
満天さんの知っている世界は僕が知らない世界がたくさんあって奥が深いですね~
な、なに。満天さんのいまテーマは
生殖能力をもった女性だけの世界・・

冗談はさておき
>男性の方が女性よりも、肉体的にも精神的にも弱い存在である
ハハハハ、僕はここだけはツッコミをいれたくなったのですがどうでしょう?
肉体的はわかりますが、満天どん、自分で精神的に弱いなんて思ったことないでしょう(笑)
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