満天横丁に住まう妖怪のひとり言

満天横丁に住む満天と申します
最近、猫妖怪化してきており更新は不定期ですが…
ひとり言にお付き合い頂ければ幸いです。

いたいけな瞳(全1~8) 作:吉野朔実

2012-11-09 | 漫画紹介


1990年~1993年 ぶーけに連載された作品。
今回、ブログ仲間の「asagiさん」からお借りして読んだ。
物凄く面白かった。ありがとう~~~。

■いたいけな瞳:1巻■

○自殺の心得
「私より好きな人が出来たのなら、それはいいから、それでもいいから
私2番目でいいから…」
そこまで言っても拒否をされ、彼の目の前で電車に飛び込み自殺を図ろうとした彼女に
1人の男性が声をかけた。「背中、押してやろうか?」
彼女にフラれ、彼女を殺して自分も死のうと思っている男と
彼氏にフラれ、彼氏の目の前で飛び込み自殺を図ろうとした女が、駅のホームで出会った。
でも、前向きに歩いて行こうと思い始めた二人には、決定的な違いがあった。
駅のホームに落ちていた花束が生と死を分ける。

※若いころは2番目なんて絶対に嫌!っと思っておったが…。
最近は妻が大勢いる夫もエエかも? っと思っている自分が居る。
人の考えなんぞ、変われば変わるもんだとつくづく思う(笑)

他、ラブレター・幼女誘拐・愛の名のもとに 4収録。

■いたいけな瞳:2巻■

○おとうさんといっしょ
「ほんとうは ぬいぐるみが欲しかった。
百科事典が欲しいといったのは そういえば父が喜ぶと思ったからだ」
もうすぐ父親になる男は、妻が出産のために実家へ帰っている間、子供になった。
昔、父親の顔色ばかりをうかがい出来なかったことを、次々と決行していく。
もうすぐ自分が父親になる。あの怖かった父親に…。
「いやだなぁ おとうさんになんか なりたくないな」
なる、ならない。欲しい、欲しくない。
好きじゃない方でも、それが正しいと感じたなら、人は迷いながらも選ぶ
そうして人は、大人になっていくのだろうか?

※子供の頃、親に言われた言葉
「迷っている2つがあったら、嫌いな方を選べ。それがお前の身になるから」と。
塾へ行きたくない、塾へ行く。嫌いな方は塾へ行く。
選ぶ能力が劣っている子供に対しては有効な方法かも。
でも…付き合う人は、私しゃ好きな方を選んだがの(笑)

他、愛が怖くてテロが出来るか・少女漫画家の瞳には、三等星の星が光る・橡(ツルバミ)4収録

■いたいけな瞳:3巻■

○ささやかな不幸
「不幸によって人格は形成される
好き嫌いはいけないという脅迫観念から、ついつい嫌いなものばかり取ってしまう」
そんな新郎が選んだ嫁は誰もが羨む美人。
結婚式場に見え隠れする終わった恋に続いている恋、はたまた秘めた恋。
嫌いなものを選ぶことも必要だけれども、好きなものを選んだ時に感じる…
あの至福を諦めてはいけない。皆が幸せになるために。

※好き嫌いはいけないと言われて育ったので、
嫌いなものを先に食べ、好きなものを最後に食べる癖がある。
だもんでよく夫に「嫌いなの?」っといわれ奪われる。私の好きなものは、体に悪い。
ヘラっと奪い続ける夫の体が心配だ。

他、ギブニーシェルター・ローズフレークス・本物の贋物 4収録

■いたいけな瞳:4巻■

○恐怖のおともだち
「おとうさんも嫌がるゴキブリを瞬き一つせず一撃で叩き殺す
怖いもの知らずの独眼竜」そんな家政婦の白玉が
人一倍怖がりで常備薬を手放せないほど弱虫のボクの家に居る。
家政婦の白玉がボクに教えてくれたこと。
恐怖を受け入れた時、恐怖と仲良くなった時、いじめっ子を撃退する力が付いた。
あの家政婦のミタを彷彿させるが…こちらの方が古いし好き。
今でも常備薬を手放せない私だから(笑)

※子供の頃に、我が家にも家政婦が居た。小太りな弱々しい人だった。
突然辞めたのでどうしたのかと思ったら、父に手籠めにされたとか…。。。
ん~。他人を家に入れる事の難しさを痛感した小学5年生の私であった。

■いたいけな瞳:5巻■

○犬
よく晴れた冬の朝、父はいつものように出かけて行った。
そしてそのまま会社に行かず、誰にも会わず、家に帰ってこなかった。
父に捨てられた母と息子とそして犬の元へ、1人の男が現れる。
「その犬とお父さんの情報を交換しよう」と言う彼に、息子は強い違和感を感じる。
犬とお父さんを天秤にかけた時、どちらが大事だろう?
ずっと一緒に居てくれた犬と、自分を捨てた父と。

※犬が居た。セントバーナードで名前はエルザ。食事も掃除も世話は全部私がやった。
でも、父と私が同時に呼ぶとエルザは真っ直ぐに父の元へ飛んで行く。
理不尽だ。いつも一緒の私より、群れのリーダーを選ぶなんて。
それとも、自分がこの家でノホホンと暮らしていけるのは、父の稼ぎのお蔭っと解っていたのか
私も犬のエルザを見習うべきだったかな~?(笑)

他、いつも心にスキップを・天使の祝福・夢喰い 4収録

■いたいけな瞳:6巻■

○嘘をつかずに男を騙す方法について
同時に5人の男と付き合い、同じ指輪のプレゼントを5個もらった女は、
内4個を質屋へ持って行った。が、質屋の主の言うことにゃ1個だけ贋物があると言う。
自分に贋物を贈った男は誰なのか? 贋物を手元に置き、本物を売りさばき真実を追う。

※同時に付き合ったことは皆無。そんな面倒なことは私には出来ない。
彼にデートに誘われて、女友達との約束の方を優先し、別れたことがあるくらいだもの。
本当の愛は一つでいい。本当に愛せるという確信は、重ねたデートの数では決まらない。
私と夫は出会って、2回のデートで3ケ月で結婚した。
遠距離だったのもあるが、恋と違って愛と結婚とはそんなもんだと思う。

他、花の眠る庭・ライオンタンポポ・百合の吐息 4収録

■いたいけな瞳:7巻■

○ピクニック
太陽の元では生きていけない病気の彼は、いつも夜の公園で1人でピクニックをする。
そこで拾った指名手配中のテロリスト(2巻:愛が怖くてテロが出来るかに登場)、
結婚式場をテロリストにぶっ壊して欲しいと願う女。思わぬ事態に賑わう彼の家。
そんな状況に一人喜ぶ彼の願いとは?

※どんな理由があったとしても、テロ行為は嫌い。
だって関係のない人を殺したからって、関係ある人の心に、それが響いた例がないもの。
都会の夜は明るいというけれど、北海道に居た時の方が夜は明るいと思った。
空が澄んでいて星や月の明かりがあったから。
都会は一見、明るげに見えて、その実、少し陰に入ると暗さが深い。
違った方向から見れば、また違ったやり方が見つかるはずなのに。
思い込んだら、もうそれしか手が無いように思うのは、どうしてだろう?

他、レンタル家族・夢の格子 3収録

■いたいけな瞳:8巻■

○死は確かなもの 生は不確かなもの
ある朝、氷を抱いている夢を見た。
あんまり冷たくて、手がしびれて、目を覚ますと、妻が隣で死んでいた。
子供の時から死体を見たことがない夫は、部屋のエアコンを冷房にし
毎日妻と一緒のベットで眠る。南極へ移住することを夢みて。

※ジー様もバー様も死んだが、死体は見たことがなかった。
夫の母が亡くなった時に、始めて見たが、それからは次々と…見ている。
私の年齢が年齢だからか? 死に出会うことが増え、最後に会ってやってっと言われる。
でも、いつも思うが…まったくの別モノと感じてしまう。私の知っている彼や彼女じゃない。
生前と同じと皆は言うが、まったく別モノだと私は思う。でなきゃ、火葬なんて出来ない。

他、極めて個人的な病気・薄紅・潤む炎(最終話) 4収録


久々に長々とレビューを書いた。本当に面白かった。
作者の絵の確かさが、複雑な人の心をよく表現していると思う。
それぞれの巻に、私の想いを書いた。読んでくれれば解るように
少し斜に構え、冷静だが熱く、熱いのかと思えば肩すかしをくらうような文章が付いている。
そんな雰囲気の漫画だったのだ(笑)

「いたいげな瞳」とタイトルは銘打っているが、同名作品はない。
「いたいけ」とは、幼気と書く字のごとく、幼げで可愛いらしいの意味もあるが
子供っぽい痛々しさとか、いい歳してなど哀れっぽい気持ちも含む

この作品の中には、いたいけな子供も出ているが、いたいけな大人も多く出ている。
でも、そのいたいけな大人の気持ちがよく解るんだよな~。
誰もが一度は経験した他人には隠しておきたい「いたいけ」な部分がよく表現されている。
だからついつい、2度3度と読み返してしまう。

しかも1度目よりも2度目、2度目よりも3度目の方がより面白く感じるから不思議だ。

ぜひ、機会があれば、読んでみてくだされ。
エエ~作品であった。

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