満天横丁に住まう妖怪のひとり言

満天横丁に住む満天と申します
最近、猫妖怪化してきており更新は不定期ですが…
ひとり言にお付き合い頂ければ幸いです。

精霊の守り人(作:上橋菜穂子)

2007-07-05 | 本の紹介
いや~久々に…
「3時間で、一気に読んでしまいました~」



今年30歳になる腕の立つ「女用心棒バルサ」は
新ヨゴ皇国の二ノ妃の皇子チャグムが川で溺れた所を助ける
ただの事故を未然に防いだだけっと思っていたが
皇子チャグムには秘密があった

10歳前後の皇子には、いにしえよりこの地に住んでいた
土着の民達に語り継がれた精霊の卵が生み付けられていたのである

先住民族の精霊の卵が産み付けられた皇子を疎んだ
父帝が差し向けてくる刺客より皇子を守って欲しいと
二ノ妃に頼まれたバルサは
命を賭して皇子と皇子の中に生み付けられた卵を守る為に
戦いを始める…


今年4月からNHK-BSにて土曜AM8:06より放映中の
「精霊の守り人」の本です

もともと私は本も漫画も読むのが早い方なのですが…
早く読めるっと言う事はそれだけ面白味がなきゃ~ならんとです
ここしばらく、ここまで面白い本には出会ってなかったので
久々に…「堪能した~」(笑)

この本はジャンルで言えば「児童文学」に入ります
な~んだ、子供向けの本か~っと思ったアナタ!
それは…大きな間違いです(笑)

私は世の中で一番難しい「物書き」は
「児童文学書」を書いている人だと思っています
本当に面白い「児童文学書」っというのは…実は一握りしかありません
よって…面白い「児童文学書」を書ける人も一握りしか居りません

なぜなら…小学生から大人まで読むこの手の文学を書く人は
本当の「大人」でなければ書けないからです

自分自身をも真っ直ぐに直視出来
他人のほんの小さな動作をも見逃さずに
あらゆる出来事を見抜く力を持ち
尚且つ、子供の様な冒険心を持った
そんな真実の「大人」こそが…
児童文学や本物のファンタジーを書ける人だと思っています

一見、簡単そうに見えますが…
出来上がった現代を土台に書く文学よりも
一から世界を作り上げる事の難しさってのは大変な作業なんです(笑)


私は文章を書くコトは一枚のタペストリーを
織り成す作業に似ていると思っています
図柄を考案し、色々な糸を選び、ハタ織作業に入る。

「精霊の守り人」はその始めの一枚です
作者の上橋さんは、このタペストリーを10年かけて
全部で10枚織り成しました
一枚、一枚で一つの絵が完結しており
10枚を繋ぎ合わせても一枚の壮大な絵が完成するようにもなっています

はじめは一枚で終了の予定だったのが
もう一枚、もう一枚と重なるような作り方をしています

ですのでこの最初の一枚の「精霊の守り人」は
スピード感と躍動感があり、荒削りの中にも
様々な色の糸が織り成す色彩が燃えているような絵に仕上がっています

「織り人」の技量を、絵が引きずり出しているような
物語が「織り人」の手を勝手に動かしているような
そんな文章が随所に見られ
「読み人」も自身が気付かぬ内に一本の糸となり
織り込まれたタペストリーの内部に入り
スグ目の前で物語が進行しているような錯覚に陥ります

多分…まだ読んでいない他の作品は
織り進める事で得た「織り人」の技量と
積み重ねる事で得た架空の世界に生まれた息吹と
「読み人」の感動とが織りなって…ん~
「想像するだに面白そう~」

ハリーポッターを読んだ時に
英語圏の人間に生まれなかった事の不幸をヒシヒシと感じましたが…
今回は…日本人に生まれて良かった~っと心から思えました~
だって…こんなビミョウな人間の心のヒダを
しっかりと表現出来る言語は日本語しかありえないです(笑)
これを英語に翻訳する外人さんは…大変だろうな~(アハハハハ)

さて…シリーズ続きを手に入れねばの~