劇場彷徨人・高橋彩子の備忘録

演劇、ダンスなどパフォーミングアーツを中心にフリーランスでライター、編集者をしている高橋彩子の備忘録的ブログです。

ドニ・ラヴァンの枕~『眠りのすべて』

2012-01-29 01:00:40 | 観劇
1月27日・28日と行われたダンス公演『眠りのすべて』@シアターX

            

マリオン・レヴィ演出・振付のこの作品は、レヴィ自身の睡眠障害から生まれたという。
といっても開演前の世間的な注目は、レオス・カラックス監督の映画でおなじみの俳優ドニ・ラヴァンの
出演にあったかもしれない(なんと、日本公演のみのスペシャル参加だったという)。
会場に着くと、ラヴァンが客入れを行っていて驚いた人も多いだろう。

ワイヤー?のようなものをつけたダンサーのパフォーマンス後、
レヴィとラヴァンによる睡眠レクチャーがあり、やがて観客も目を閉じるよう言われる。
次に、これまた指示を受けて目を開くと、舞台上にはたくさんの白い枕が。
その前でダンサー達が、眠りをめぐるさまざまなダンスを、
時に言葉を交えながら繰り広げていく(テクストは作家ファブリス・メルキオ)。
夢か現かといった感じの不思議な世界で、どことなく悪夢のような瞬間も。

そんなダンサーたちを、ラヴァンは途中までオブザーバー的に見ているが、やがて加わって動き始める。
これがまた、ダンサーとはまた違った、人目を惹き付けずにおかない敏捷で特異な動き・存在感で、圧巻。
レオス・カラックスの映画などで見たことのある人なら、懐かしさも感じたはずだ。

終演後はクリスティアン・ビエ(パリ第10大学演劇科教授)の司会で、
ラヴァン、メルキオ、レヴィのトークも。バランスの取れた話し方のレヴィ、
やや神経質そうなインテリ語りのメルキオも面白かったが、やはり、ラヴァンの落ち着きのなさに目がいく(笑)。
ーーペットボトルを一瞬投げて自分でキャッチして飲み、噛みタバコらしきものを巻いてくわえ、帽子飾りを振りーー。
ラヴァンいわく、マイムなどを学び、映像で本格的なキャリアをスタートした自分にとって、
ダンスは演劇よりも原点に近い感覚もあり、事実ダンサーと作品を作ったこともあるため、
本格的にそちらへ移行することもができたかもしれないが、言葉のエネルギーにも興味をもったそう。
その意味で今日の舞台は本人の志向にも合致していたと言えるのだろう。

さて、この日は公演最終日だったため、終演後、主催の日仏学院の粋な計らいで、
希望者全員に枕プレゼント&ラヴァンのサイン会が。
とてもオープンな雰囲気で、優しく気さくに握手に応じてくれるラヴァン。
カラックス監督作品でのアレックスが大好きだと言ったら「souvenir d'Alex」と書いてくれた。

         

アレックス役で世界に名を馳せた彼に、役名と本人名の両方を書いてもらうとは、なんたるシアワセ。
名前のアルファベット表記、以後はaiako を使わせていただきますとも!(私的なものに限り)

取材やその流れでのイベントだと仕事スイッチが入って、ミーハー心がなくなる(or隠れる)ため、
サインや写真撮影をお願いしたことなどほとんどない私だが、
今日のように、観客みんなにサプライズ的に…という趣向は有難く、心置きなく享受してしまった。

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