劇場彷徨人・高橋彩子の備忘録

演劇、ダンスなどパフォーミングアーツを中心にフリーランスでライター、編集者をしている高橋彩子の備忘録的ブログです。

夢を見た日 ~新しい歌舞伎座 初日の第一部へ~

2013-04-02 17:46:58 | 観劇
待望久しかった新生・歌舞伎座の開場。
その初日の第一部へ足を運んだ。



最初の演目『壽祝歌舞伎華彩 鶴寿千歳』が始まり、
上手から春の君の染五郎、女御の魁春が登場すると、
二人が中央に着座するまで、拍手は鳴りやまず。
さらに、鶴の藤十郎に、盛大な拍手が送られた。

続く『お祭り』では、幕開きから「中村屋!」の大向こうが乱れ飛ぶ。
言うまでもなく、十八世中村勘三郎に向けられたものだ。
鳶頭の三津五郎を中心に、ゆかりの俳優たちがずらり。
花道から現れた勘九郎と七之助が連れていたのは、勘九郎の子息・七緒八2歳。
彼が名優になる日が楽しみだ。その第一歩に立ち会えたことが嬉しい。
なお、『お祭り』につきものの「待ってました!」「待っていたとはありがてぇ」の応酬はなし。
そうだよね、それは十八代目が言うはずだったのだから。

この2演目は、夢心地のうちに終わったというのが、正直なところ。
じっくりとドラマを楽しむことができたのは3演目めの『熊谷陣屋』。
玉三郎の相模、ドラマティックな役柄造形がさすがだ。その愁嘆は胸に迫った。
仁左衛門の義経にもうっとり。実に凛々しく美しい義経で、かつ、
弥陀六(歌六)と話す時は少年のころを思わせる闊達さを見せて魅力的だった。
そして、吉右衛門の熊谷直実。
しみじみと発せられた最後の台詞「十六年は一昔。夢だ夢だ」には
何とも言えない感慨が表れ、味わい深かった。

こうして振り返ると、いい演目立てだったと思う。
夢のように華やかな2演目を楽しみ、3演目め、
「有為転変の世の中じゃなあ」から「~夢だ」までの台詞にただただうなずく。

新生歌舞伎座には、前歌舞伎座の面影が、そこここに。
それでいて、違いもあり、当たり前だが、新しい。
変わっていないと涙し、変わった・綺麗になったとまた泣いて、
舞台上の俳優に目を輝かせ、同時にそこにいない俳優を想う・・・
人間というのはつくづく、業が深いなあ。

 

屋上庭園には、河竹黙阿弥が晩年を過ごした浅草の家にあった石灯籠や蹲踞も。



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