劇場彷徨人・高橋彩子の備忘録

演劇、ダンスなどパフォーミングアーツを中心にフリーランスでライター、編集者をしている高橋彩子の備忘録的ブログです。

MET ライブビューイング・ニーベルングの指環第2夜『ジークフリート』

2011-12-01 23:12:59 | 観劇
メトロポリタン・オペラの舞台映像を映画館で楽しむMET ライブビューイングで、
ニーベルングの指環第2夜『ジークフリート』を観て来た。

このニーベルングの指環はカナダの演出家ロベール・ルパージュによる新演出。
昨年秋に序夜『ラインの黄金』、今年春に第1夜『ワルキューレ』が上演され、
この『ジークフリート』を経て、来年春の第3夜『神々の黄昏』で完結する。

ルパージュはこのシリーズの装置として、計24枚の板が並んだ巨大鉄琴のようなマシンを導入。
総量45トンのマシンのために、メトロポリタン歌劇場は床の補強工事を行わなければならなかったほどだ。
この板は、照明が当てられたり映像が投影されたりして色合いを変えるのはもちろんのこと、
装置そのものが回転したり波打ったりそそり立ったりと変幻自在。
その上や間を、宙づりになった歌手が移動したりもする。とにかく凄い舞台だ。

↓シリーズが始まる前の、打ち合わせ・リハーサルの映像




さらに今回の『ジークフリート』では、
3D技術が取り入れられるなど、そのハイテク舞台はバージョンアップ。
肉眼で観たらさぞかし大迫力だろうが、スクリーンでも充分楽しむことができる。

↓『ジークフリート』開幕にあたってのルパージュの解説




歌手陣も充実。ブリュンヒルデのデボラ・ヴォイト、さすらい人のブリン・ターフェル、
ミーメのゲルハルト・ジーゲル、森の小鳥のモイツァ・エルドマンなども良かったが、
今回は、タイトルロールのジェイ・ハンター・モリスの健闘を讃えたい。

彼は、ジークフリートにギャリー・レイマンの病気降板により、
初日の一週間前にアンダースタディから抜擢されたのだそう。
世界的な歌劇場に立てるワーグナー歌いの数は限られていて、数年後まで予定はぎっしりだと聞く。
そんな事情もあって有名な代役が立てられなかったのかもしれないが、
それまで無名だった彼が一躍脚光を浴び、ライブビューイングでもミニ特集が組まれていた。
決して美男ではないが、均整がとれた容姿の持ち主。
07年、東京のオペラの森『タンホイザー』ヴァルター役で、来日している。
舞台上でも、ドキュメンタリー内の本人と同じくひたむきで茶目っ気たっぷりでキュートな姿を見せ、
英雄の素質を備えながらもまだまだ子供っぽいジークフリート像を造形していた。

その歌はといえば、初めこそ、少々物足りなく感じられなくもなかったのだが、
テンションをしっかりと持続し、終盤に向けて上がり調子になっていたと思う。
ブリュンヒルデとの二重唱は聴き応えがあった。

全国の映画館で上映中なので、ぜひ!
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