劇場彷徨人・高橋彩子の備忘録

演劇、ダンスなどパフォーミングアーツを中心にフリーランスでライター、編集者をしている高橋彩子の備忘録的ブログです。

3.11から1年~ハーディング演奏会と、モンテカルロ・バレエ団セレモニー~ 

2012-03-11 21:51:19 | 観劇
東日本大震災から丸一年が経った。
いまだ解決していないことが多く、感慨に浸ってばかりはいられないのだけれども。

昨夜、NHKで「3月11日のマーラー」が放映された。
ハーディング&新日本フィルによって、3月11日に行われた演奏会のドキュメンタリーだ。
私もその演奏会に聴衆として参加した一人である。

あの日は出かける直前まで仕事をしており、衝撃的な津波の映像もまだ見ていなかった。
原稿をどうにか書き終えて急ぎ自転車で家を出、幾度も道に迷い、
帰宅する人の列をよけながら隅田川を渡り、1時間半かけてホールに到着した。
がらんとしたホールに響いたマーラー5番は感動的だった。
その後もハーディングは、原発事故を懸念して多くのアーティストが来日を控える中、
“日本に必要なのは人々が逃げ去らないこと”と述べ、来日を重ねてくれた。
演奏と演奏の間の休憩には、募金箱をもった彼の姿が常にあったのも忘れ難い。

                    * * *

今年の3月11日の2時46分は、
モンテカルロ・バレエ団の来日公演が行われている劇場で過ごした。
この日は震災後1年のセレモニーがあったのだ。



まず、主催者挨拶&進行の下、小池ミモザ振付の短いソロ『La Vie』が上演された。
小池が『シンデレラ』の装置の前で踊り、同僚のガエタン・モルロッティがチベットの楽器を演奏。
最後、小池とモルロッティが励まし合うように抱き合ったのが印象的だった。
続いて、芸術監督ジャン=クリストフ・マイヨーの挨拶、
そしてモナコ大公アルベール二世のメッセージの代読(モナコ公国名誉総領事による)のあと、
2時46分を迎え、しばし全員で黙祷。その後、『シンデレラ』全幕が始まった。

マイヨー版『シンデレラ』は10年前に初めて観て以来、大好きな作品だ。
ここでは仙女はシンデレラの亡き母であるという設定であり、
もう一人の、というより、実質的な主役とも呼べる存在になっている。
今回、仙女を演じた小池は身体のラインが美しくしなやか。
既にこの世の人ではない母が娘のシンデレラを助け、王子と結びつけたあと、
夫(シンデレラの父)と束の間踊る終盤のデュエットは切なく、改めて白眉だと感じた。
亡き人と遺された者の思いを綴るその内容が、胸に染み入った。

カーテンコールでは、『シンデレラ』の美術の後ろに幾つもの蝋燭が吊られた。
別日の公演『アルトロ・カント1』で用いられた装置だが、
劇場中が深い感動と鎮魂の念に満たされた瞬間だった。
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