ウィトゲンシュタイン的日々

日常生活での出来事、登山・本などについての雑感。

バッハに憩う

2012-11-07 16:42:09 | 音楽

この8月、睡眠中に突然目が覚める発作が起き、睡眠障害ということで通院
眠りを深くする(レム睡眠が起きにくくなるらしい)薬が処方された。
薬はどうやら合っているとみえて、徐々に睡眠中の発作は収まり、よく眠れるようになった。
ところが…、夜によく眠れるようになったのは良いが
日中にいろいろな不具合が出るようになってしまった
挙げればきりがないのでここには書かないが
睡眠障害に遅れて発症した口腔アレルギー症候群も、ぴすけの下降線に追い打ちをかけた。
大好きだった野菜や果物が食べられなくなり、食欲が徐々に低下。
そうこうしているうちに、日常生活が苦痛になってきてしまった。
さらなる追い討ちをかけるように、実家の近所で立て続けに御不幸があり
小さい時からお世話になっている方だっただけに、突然の知らせに驚くとともに
母の消沈ぶりも気掛かりでならなかった。
こういう時こそ好きなことをすればいいのだが
どん底の時は、好きなことをする気力も体力もなくなるのだ。
目を開けるのがつらかったので本も読まず、音が気に障るので音楽も聴かず
山を歩く気持ちにもならず、食べ物や調理法が限られてしまったので好きな料理も苦痛になった。
通院するので精いっぱい、買い物をしていても途中で気分が悪くなり
這う這うの体で家に逃げ帰るような有様


日中の不具合も、騙し騙し付き合えるくらいで収まってくれなくなり
これはまずいと主治医に相談したところ、新たな薬が追加された。
こうして薬が追加されることが良いか悪いかは別として
飲み始めた2日間は猛烈な眠気と意欲減退に悩まされたが
その後は眠気もなくなり、なんとなくやる気が出てきたのには、正直なところ驚いた
薬ってすごい
だが、今はたんに薬によってつらい症状を抑えているだけなので
体調が落ち着いたら、根本の問題について考え、対処しないでいたら
今後も同じようなことが繰り返されるだろうから、おいおい次の方策を考えねば。
そんな気持ちになってきた一昨日から、なんとなく音楽を聴く意欲が出始めた。
そういえば東日本大震災後、郡山で被災した万年バロック青年
しばらくは大好きな音楽さえ聴く気持ちになれなかったと話していたことを思い出した。
どん底の時は、そういうものなのかもしれない。


一昨日、ラジオから聞こえてきた歌声に興味を持ち、ダーリンに誰が歌っているのか尋ねると
「元ちとせだよ。」
と、教えてくれた。
早速CDを借りてきて聴く。
うーん…
初期の楽曲は面白くないが、歌は上手い。
近年の楽曲は面白いが、歌が下手になっている。
独特の節回しを随所にちりばめて歌っているものの
意地悪な見方をすれば、それで一本調子な歌い方を隠しているようにも聞こえる。
だな。
…と、J.S.バッハ、バッハがあるではないかと、気づき
『フーガの技法』・『ゴルトベルク変奏曲』・『無伴奏バイオリンのためのソナタ2番 イ短調』・
『無伴奏バイオリンのためのパルティータ2番 イ短調』を、次々とかけてみた。
おおーーっこれは良い
古楽器の乾いた音色によって、短調でもずっしりした重さではなく
まるで涙が涸れるまで泣き明かした後の、妙な爽快感(?)にも似た感触が心地よい。
そういや最近、涙が涸れるくらいまで泣き明かすなんてこと、ないよな。
大江広元は「元服してから後、涙を流したことがない」と自ら述懐したという逸話があるが
それほどではないにせよ、思い切り泣くことなどなくなった。
泣いたとしても、必死の努力で堪えてしまう。
泣きたくないのならともかく、涙が出てきた時は、素直に泣いた方がいいのではなかろうか。
最近、そんなふうにも思う。


バッハを聴くことで、泣き明かすのと似た感触を得られて
ぴすけはつかの間の心の平安を、バッハに見いだしたのであった
バッハ「に」憩う。
「で」ではないところが、ミソなのである







最新の画像もっと見る

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
なら、バッハがいてよかった。 (ぽぴ)
2012-11-07 18:49:03
寝られないこと、食べたいものが食べられないこと、それが波状的に続くことはさぞきつかろうとおもう。。。


今日は貴女がバッハに少し憩うことができたのなら、バッハがかの昔この世に現れ、そんな音楽を生み出し今に遺してくれていたことに。。。友人として感謝。
返信する
泣くことは、泣けることは (芝刈り爺さん)
2012-11-07 19:08:17
泣くこと、泣けることは癒しの始まりといいます。言えてる気がします。じーーんしみじみと、あるいは突然わく涙、泣きたいとき、泣けるとき泣くのも、いいですよね。

私は、何とか最悪は脱したもののまだおなかの具合が今一歩。私はこの頃かつてよく聞いた宗次郎さんのオカリナを聞いてごろごろしています。
返信する
現代人の進歩は物質的 (ぴすけ)
2012-11-07 20:17:34
>ぽぴさん
吾妻小舎に行った時くらいの、低位置安定ならまだしも、負のスパイラルがかかり始めたら一気にどん底に。
かなりつろうございました。
今週は、少々上向き加減。
これも怖いのですが、気にしすぎですかね?
音楽にせよ哲学にせよ、古の人と現代人とでは、大差ないどころか、現代人の進歩はあまりに物質的だし、性急だと感じます。
私ゃ現代のスピードについていけないよ

>芝刈り爺さん
オカリナですか!
クラシック=バスカーズというイギリスの笛吹きコンビは御存じですか?
それはさておき、私、実は夏まで声楽のレッスンを受けていました。
「声楽」などとというと聞こえがいいのですが、発声練習とイタリア歌曲の課題が出て、先生に指導してもらうのです。
ところが、睡眠障害が出てから日毎の好不調が激しく、しかもレッスンの場所が世田谷とあって、新宿を越えるのがかなり厳しく(買い物でもおかしくなってしまうのですから、世田谷まで行けません)、長期のお休みをしています。
歌うのがあまり好きではないので(では、なぜ声楽のレッスンなど?と思いますよね)、レッスンがないと全く歌いません。
でも、なぜかリコーダーは吹きたくて吹きたくて仕方がない時があるのです。
不思議です。



返信する
病気ならしょうがない。 (can)
2012-11-08 10:31:52
睡眠障害、食欲の低下等々・・・。経験がないからわかりませんが。薬にたよらざるをえないというなら、病気なのでしょうね。薬は毒です、メリットもあればデメリットもある。大きな声で笑い、音楽を聴いて、うまいものを食べて、山を歩いていれば、病になる余地はないと思うのは私だけでしょうか?ぴすけさん『物事を真剣に考え過ぎる』、病は”気から”ですよ・・・。
返信する
病気か病気でないか (ぴすけ)
2012-11-09 13:24:28
canさん、以前にも似たようなことを書いた記憶がありますが、病気か病気でないかは、本人や周辺の人々にとって、苦痛か苦痛でないかがかなり重要になるのでは?
世の中では「やつはクルッテイル」と思われる人も、本人から見たら「世の中クルッテイル」わけです。
もう絶版かもしれませんが、ちくま文庫から1986年5月に発行された、なだいなだ著『くるい きちがい考』は、その辺のことが書かれていて、かなりお薦めです。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。