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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

長崎の語り部

2006年07月29日 | ノンジャンル
原爆忌を前に長崎被爆講話規制問題解決

イラク派遣、靖国、天皇責任、憲法…
被爆講話「政治抜き」で 長崎平和推進協が要請
語り部猛反発

(『東京新聞』2006/4/14)

 長崎での被爆体験を修学旅行生らに話す「語り部」たちに、財団法人長崎平和推進協会が、イラクや靖国などの問題を講話で取り上げないよう要請し、語り部側が不快感を示している。
 協会は長崎市など官民が一九八四年に設立。三十八人の被爆者が語り部として所属している。
 発端は一月だった。語り部たちが集まった協会の「継承部会」臨時総会で、舩山忠弘副理事長が「イラクヘの自衛隊派遣」「靖国神社」「天皇の戦争責任」「憲法改正」など八項目を「国民の中で意見が分かれている」として、発言を慎むよう求めたのだ。
 協会事務局によると、一部の学校から「被爆体験の話はほとんどなく、個人的な政治的意見ばかりだった」と指摘があったことがきっかけ。永田博光事務局次長(四月一日付で市に異動)は「協会は長崎市からも運営費が出る公益団体で、不偏不党の立場。聞き手に誤解されては困る」と説明した。
 語り部には怒りや戸惑いが広がった。広瀬方人さん(七六)は「語る内容はそもそも規制できるものではない」。内田伯さん(七六)も「意図的に政治的問題は出しておらず、配慮している。協会はわたしたちを信頼していない」と憤る。
 広島平和研究所の浅井基文所長は「表現の自由の侵害。平和問題に後ろ向きな世論の雰囲気を感じ、自主規制しようという消極的な姿勢が見て取れる。要請は撤回されるべきだ」と話している。

長崎の「被爆以外…」問題
「話すな」撤回へ 語り部「伝える」
進む高齢化 継承も課題

(『東京新聞』2006/7/16)


 長崎市の外郭団体「長崎平和推進協会」が、修学旅行生らに被爆体験を語り伝える「語り部」に対し、憲法改正など政治問題への言及を控えるように求めていた文書を一転、撤回することになった。
 異例の要請から半年近く。六十一回目の「原爆の日」を控えた関係者にあらためて聞いた。(竹内洋一)

 「撤回は当然。もっと早く解決していれば、大騒動にはならなかった。ただ、平和と政治・教育について議論が広がり、かえってよかったのかもしれない」。語り部の一人、元小学校教諭の山川剛さん(六九)は今回の問題をこう評価する。
 要請文書は今年一月、語り部三十八人でつくる同協会の「継承部会」総会で示された。文書は「国民の間で意見が分かれている政治的問題について発言は慎んでいただきたい」と呼びかけ、▽天皇の戦争責任▽イラクヘの自衛隊派遣▽有事法制-など八項目を列挙した。
 これに反発した被爆者や教師らは、市民団体を立ち上げ、三月に要請の撤回を求めた。被爆者の全国組織である日本原水爆被害者団体協議会(被団協)も四月、「被爆者の平和への願い、誠実な話を規制することにならないか」とただす公開質問状を協会に出した。
 予想以上の反発を受け、協会は継承部会の議論を尊重する形で、早期に事態を収束させることにした。六月二十四日に開かれた継承部会総会は、賛成多数で協会に撤回を求めることを決定。協会は今月二十日の理事会で、要請文書の撤回を正式に決める。

「文書の表現で誤解を招いた」

 協会の多以良光善事務局長は「文書の表現や構成に明らかに問題があった。誤解を招いたことを反省している。公益法人である協会の不偏不党の立場には、これからも語り部の方に配慮をお願いしたい」と話す。
 そもそもなぜ、こんな文書を出してしまったのか。協会事務局によると、修学旅行に訪れた学校から、被爆者の講話に対して「被爆体験と関係ない話が長かった」といった苦情が一部寄せられていた。
 事務局は、こうした問題を改善する議論が、継承部会に任せただけでは進まないことに危機感を強め、要請文書を作成したという。
 前出の山川さんは「問題のある講話があるとは聞いているが、個別に注意すればすむ話で、その方がよかった」と振り返る。協会関係者は「継承部会は高齢化が進み、口頭でお願いするだけでは了解事項を徹底できないことがあった。事務局が文書を作ったのは、体験講話を下支えしたいという思いからだった」と釈明する。

「平和案内人と交流を進める」

 協会の語り部の平均年齢は七十五歳。いずれ、被爆体験者から直接体験を聞くことはできなくなる。一連の騒動は、六十年以上前の戦争体験をどう後世に語り継ぐのかという課題を浮き彫りにする。
 同協会は、被爆遺構や原爆資料館をガイドするボランティア「平和案内人」の育成に取り組んでおり、被爆体験のない九十人が所属する。多以良事務局長は「案内人と継承部会の双方から被爆体験の継承のために交流したいという声が上がっている。年内には実現させたい」と意気込む。
 被爆体験の継承に重要な「教材」となる録音テープは干三人分、ビデオは約三百六十人分に及んでいる。
 語り部の側も継承への意識は高い。山川さんは「誰が、何を、どう語り継ぐのか、本腰を入れた議論が必要だ。状況はせっぱ詰まっているが、語り継ぐことは可能だと信じている。今を生きる私たちの責務は、被爆体験を残らず語ることだ」と強調する。
 元小学校教諭の森口貢さん(六九)もこう話す。「非常に厳しい被爆体験は、その人にしか分からないかもしれないが、平和を追求する姿勢、核兵器を絶対に使ってはいけないという教訓は、未来につなげていくことができる」

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