《奨学金の会 声明》
2012年9月11日、日本政府は中等・高等教育無償化の漸進的導入を定めた国際人権A規約(社会権規約)13条2項(b)(c)について、『留保』を撤回した。1966年に国際規約が実現してから46年。政府が『留保』を決定した1979年から33年後の国際社会への仲間入りであり、私たちはこの政府決定を歓迎するとともに、永年にわたり教育無償化を求めてきた諸団体の運動と共同の広がりに対して深く感謝するものである。
そもそも国際人権A規約は世界共通の人権規範として、最も実現が進められている規範であり、その13条1項には「締結国は、教育についてのすべての者の権利を認める」として「人権としての教育」を掲げている。さらにその基本的人権の「完全な実現を達成するため」、2項では(a)初等教育の義務・無償、(b)中等教育の漸進的無償化、(c)高等教育の漸進的無償化、(d)基礎教育の奨励強化、(e)適当な奨学金制度と教職員の条件改善を締結国に求めている。
日本政府はこのうち(b)(c)項の責任を『留保』し続けてきたのであり、すでに批准した160ヵ国中、『留保』を続ける国が日本とマダカスカルのみになるまで、世界から孤立させてきた歴代政権の責任は重大である。
政府が『留保撤回』を公表した同日、経済協力開発機構(OECD)は国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出割合を発表した。日本は比較できる加盟31ヵ国中(平均5.4%)、3年連続(2007年~2009年)最下位(3.6%)という不名誉な結果であった。
高い教育費の私費負担は経済力による教育格差を広げ、学費の高騰に対応して高額になった貸与制有利子奨学金は、雇用破壊がすすむ中で新たな貧困をうみ出している。
学費の軽減と返還の必要がない給付制奨学金の実現は、今や主要政党や経済界も掲げざるを得ないほど、急務の課題となっている。
しかるに、政府が9月7日に公表した2013年度予算概算要求では、文部科学省が過去3年連続要求化してきた高校向けの給付制奨学金や、昨年初めて要求化した大学等の給付制奨学金について、要求自体を見送っている。
さらに7月31日に閣議決定され、概算要求の基礎となった『日本再生戦略』には、「教育ローンの保護者貸付から学生本人への貸付への変更について制度的工夫を図る」ことが明記され、教育無償化に逆行する奨学金の学生ローン化をすすめようとしている。親の教育費負担の軽減のために、子を借金づけにすることが、人権としての教育を保障することになるのだろうか。
今回の『留保撤回』によって、政府は中等・高等教育無償化を誠実にすすめる義務を負うのであり、それを後退させることは、国民と国際社会を欺く行為といわざるを得ない。
私たちは、『留保撤回』を契機に、教育への公財政支出の大幅な拡大を実現し、給付制奨学金をはじめとする、すべての教育段階での無償化をめざし、一層奮闘するものである。
2012年9月19日
『奨学金の会』(2012/9/19)
http://www1.ocn.ne.jp/~shogaku/
◎ 政府の国際規約【中等・高等教育無償化】『留保撤回』を歓迎し、
いまこそ教育無償化を確実にすすめよう
いまこそ教育無償化を確実にすすめよう
2012年9月11日、日本政府は中等・高等教育無償化の漸進的導入を定めた国際人権A規約(社会権規約)13条2項(b)(c)について、『留保』を撤回した。1966年に国際規約が実現してから46年。政府が『留保』を決定した1979年から33年後の国際社会への仲間入りであり、私たちはこの政府決定を歓迎するとともに、永年にわたり教育無償化を求めてきた諸団体の運動と共同の広がりに対して深く感謝するものである。
そもそも国際人権A規約は世界共通の人権規範として、最も実現が進められている規範であり、その13条1項には「締結国は、教育についてのすべての者の権利を認める」として「人権としての教育」を掲げている。さらにその基本的人権の「完全な実現を達成するため」、2項では(a)初等教育の義務・無償、(b)中等教育の漸進的無償化、(c)高等教育の漸進的無償化、(d)基礎教育の奨励強化、(e)適当な奨学金制度と教職員の条件改善を締結国に求めている。
日本政府はこのうち(b)(c)項の責任を『留保』し続けてきたのであり、すでに批准した160ヵ国中、『留保』を続ける国が日本とマダカスカルのみになるまで、世界から孤立させてきた歴代政権の責任は重大である。
政府が『留保撤回』を公表した同日、経済協力開発機構(OECD)は国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出割合を発表した。日本は比較できる加盟31ヵ国中(平均5.4%)、3年連続(2007年~2009年)最下位(3.6%)という不名誉な結果であった。
高い教育費の私費負担は経済力による教育格差を広げ、学費の高騰に対応して高額になった貸与制有利子奨学金は、雇用破壊がすすむ中で新たな貧困をうみ出している。
学費の軽減と返還の必要がない給付制奨学金の実現は、今や主要政党や経済界も掲げざるを得ないほど、急務の課題となっている。
しかるに、政府が9月7日に公表した2013年度予算概算要求では、文部科学省が過去3年連続要求化してきた高校向けの給付制奨学金や、昨年初めて要求化した大学等の給付制奨学金について、要求自体を見送っている。
さらに7月31日に閣議決定され、概算要求の基礎となった『日本再生戦略』には、「教育ローンの保護者貸付から学生本人への貸付への変更について制度的工夫を図る」ことが明記され、教育無償化に逆行する奨学金の学生ローン化をすすめようとしている。親の教育費負担の軽減のために、子を借金づけにすることが、人権としての教育を保障することになるのだろうか。
今回の『留保撤回』によって、政府は中等・高等教育無償化を誠実にすすめる義務を負うのであり、それを後退させることは、国民と国際社会を欺く行為といわざるを得ない。
私たちは、『留保撤回』を契機に、教育への公財政支出の大幅な拡大を実現し、給付制奨学金をはじめとする、すべての教育段階での無償化をめざし、一層奮闘するものである。
以上
2012年9月19日
国民のための奨学金制度の拡充をめざし、無償教育をすすめる会(奨学金の会)
『奨学金の会』(2012/9/19)
http://www1.ocn.ne.jp/~shogaku/
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