《第4回「日の丸・君が代」問題等全国学習・交流集会から》
◎ 「表現の自由」を「公共の福祉」で制約するのは国際人権規約違反!!
国旗国歌の強制に反対意見を表明した元教員への刑事罰を正当化する日本政府報告書に反論
1,国連にカウンターレポートを提出しました。
国内的には最高裁判決(2011年7月7日)上告棄却で決着がついたかに見えた「板橋高校卒業式事件」ですが、日本政府が国連自由権規約委員会に提出した報告書(2012年4月)の中で、「"公共の福祉"で"表現の自由"を制限した判例」として、この最高裁判決を引用してくれたことで、逆にこの判決こそ"公共の福祉"を人権制限に誤用した、国際社会では通用しない悪い見本であることを、カウンターレポートとして国際社会に向けて訴える必要が生じてきました。
というわけで、私たちは、2013年7月末にカウンターレポートを提出しました。2013年10月に日本政府報告に対する事前審査が行われ、2014年7月に、本審査が行われる予定になっています。
2,「公共の福祉」概念の曖昧な使用を止めるように勧告されていた日本政府
わが国が「公共の福祉」を名目に、様々な人権行使を制限していることは、国際社会から注目されており、1993年(第3回)、1998年(第4回)に続き、前回(2008年第5回)の『総括所見』でも次のように勧告されていました。
※2008年自由権規約委員会総括所見 パラグラフ10
10.委員会は、「公共の福祉」が、恣意的な人権制約を許容する根拠とはならないという締約国の説明に留意する一方、「公共の福祉」の概念は、曖昧で、制限がなく、規約の下で許容されている制約を超える制約を許容するかもしれないという懸念を再度表明する。(第2条)
締約国は、「公共の福祉」の概念を定義し、かつ「公共の福祉」を理由に規約で保障された権利に課されるあらゆる制約が規約で許容される制約を超えられないと明記する立法措置をとるべきである。
これに対し、今回(第6回)の日本政府報告書(2012年)で、「公共の福祉」の使い方について最高裁判例を引用しつつ、釈明を試みました。『報告書』のパラグラフ3と4です。しかし後述するように、規約違反を自認するものです。
※2012年日本政府報告書(日本国憲法における「公共の福祉」の概念) パラグラフ3,4
3.憲法における「公共の福祉」の概念は、これまでの報告のとおり、各権利毎に、その権利に内在する性質を根拠に判例等により具体化されており、憲法による人権保障及び制限の内容は、実質的には、本規約による人権保障及び制限の内容とほぼ同様のものとなっている。したがって、「公共の福祉」の概念の下、国家権力により恣意的に人権が制限されることはもちろん、同概念を理由に規約で保障された権利に課されるあらゆる制約が規約で許容される制約を超えることはあり得ない。
4.このような基本的人権相互間の調整を図る内在的な制約である「公共の福祉」についての典型的な判例としては、これまでの報告のとおりであるが、最近のものとして、次の最高裁判所2011年7月7日小法廷判決(要旨)等でこの判断が踏襲されている。(以下略)
3,板橋高校卒業式事件とは
卒業式に来賓で招かれた藤田勝久元教諭が、
○学校で国旗国歌が強制されるべきではないとの意見を持っていて(19条1項)、
○卒業式の開式前に保護者に向かって意見を表明したことが(19条2項)、
○「公共の福祉」に反するとして刑事罰を科せられた(19条3項)。
これは、自由権規約19条違反の公権力による言論弾圧事例です。政府は不適切な判例を引用しました。
4,自由権規約19条には存在しない「公共の福祉」
規約19条(意見及び表現の自由)は、
1項で「意見の自由」について、
2項で「表現の自由」について定め、
3項では表現の自由を制約できる条件を具体的に明示しています。
その条件とは「立法」「目的」「必要」の3つです。
すなわち、①制約の条件をこの条文のように明文化し、
②具体的に(a)(b)に例示された正しい「目的」のためにだけ、
③守るべき利益と比例した必要最小限の方法で行われるべき、との3つです。
(『一般的意見34』パラ22~36の要旨)
日本政府報告書の「公共の福祉による制限」が、この要件を満たしていないことは明らかです。
D-1,政府報告書パラ3&4の問題点
「表現の自由」制限には、国内法の「公共の福祉」ではなく、規約19条3項が適用されなければならない。
D-2,板橋高校卒業式事件の概要
D-3,「公共の福祉」で人権を制約したわが国における過去の裁判例
(1)板橋高校卒業式事件最高裁判決の本文に引用された過去の4つの確定判決
(2)2008年自由権規約委員会総括所見 par.26で懸念されたビラ配付事件(立川反戦ビラ・葛飾政党ビラ)
D-4,「表現の自由」の国際標準に照らして本件を検討する
(1) 一般的意見34の当てはめ
(2) 「表現の自由」に関わる、国連への個人通報の先例から
D-5,フォルホーフ教授による『第6回政府報告書に対する意見書』ダイジェスト
http://wind.ap.teacup.com/people/html/20130722itabashicounterreport.pdf
◎ 「表現の自由」を「公共の福祉」で制約するのは国際人権規約違反!!
国旗国歌の強制に反対意見を表明した元教員への刑事罰を正当化する日本政府報告書に反論
板橋高校卒業式事件から「表現の自由」をめざす会
(元「藤田先生を応援する会」)
(元「藤田先生を応援する会」)
1,国連にカウンターレポートを提出しました。
国内的には最高裁判決(2011年7月7日)上告棄却で決着がついたかに見えた「板橋高校卒業式事件」ですが、日本政府が国連自由権規約委員会に提出した報告書(2012年4月)の中で、「"公共の福祉"で"表現の自由"を制限した判例」として、この最高裁判決を引用してくれたことで、逆にこの判決こそ"公共の福祉"を人権制限に誤用した、国際社会では通用しない悪い見本であることを、カウンターレポートとして国際社会に向けて訴える必要が生じてきました。
というわけで、私たちは、2013年7月末にカウンターレポートを提出しました。2013年10月に日本政府報告に対する事前審査が行われ、2014年7月に、本審査が行われる予定になっています。
2,「公共の福祉」概念の曖昧な使用を止めるように勧告されていた日本政府
わが国が「公共の福祉」を名目に、様々な人権行使を制限していることは、国際社会から注目されており、1993年(第3回)、1998年(第4回)に続き、前回(2008年第5回)の『総括所見』でも次のように勧告されていました。
※2008年自由権規約委員会総括所見 パラグラフ10
10.委員会は、「公共の福祉」が、恣意的な人権制約を許容する根拠とはならないという締約国の説明に留意する一方、「公共の福祉」の概念は、曖昧で、制限がなく、規約の下で許容されている制約を超える制約を許容するかもしれないという懸念を再度表明する。(第2条)
締約国は、「公共の福祉」の概念を定義し、かつ「公共の福祉」を理由に規約で保障された権利に課されるあらゆる制約が規約で許容される制約を超えられないと明記する立法措置をとるべきである。
これに対し、今回(第6回)の日本政府報告書(2012年)で、「公共の福祉」の使い方について最高裁判例を引用しつつ、釈明を試みました。『報告書』のパラグラフ3と4です。しかし後述するように、規約違反を自認するものです。
※2012年日本政府報告書(日本国憲法における「公共の福祉」の概念) パラグラフ3,4
3.憲法における「公共の福祉」の概念は、これまでの報告のとおり、各権利毎に、その権利に内在する性質を根拠に判例等により具体化されており、憲法による人権保障及び制限の内容は、実質的には、本規約による人権保障及び制限の内容とほぼ同様のものとなっている。したがって、「公共の福祉」の概念の下、国家権力により恣意的に人権が制限されることはもちろん、同概念を理由に規約で保障された権利に課されるあらゆる制約が規約で許容される制約を超えることはあり得ない。
4.このような基本的人権相互間の調整を図る内在的な制約である「公共の福祉」についての典型的な判例としては、これまでの報告のとおりであるが、最近のものとして、次の最高裁判所2011年7月7日小法廷判決(要旨)等でこの判断が踏襲されている。(以下略)
3,板橋高校卒業式事件とは
卒業式に来賓で招かれた藤田勝久元教諭が、
○学校で国旗国歌が強制されるべきではないとの意見を持っていて(19条1項)、
○卒業式の開式前に保護者に向かって意見を表明したことが(19条2項)、
○「公共の福祉」に反するとして刑事罰を科せられた(19条3項)。
これは、自由権規約19条違反の公権力による言論弾圧事例です。政府は不適切な判例を引用しました。
4,自由権規約19条には存在しない「公共の福祉」
規約19条(意見及び表現の自由)は、
1項で「意見の自由」について、
2項で「表現の自由」について定め、
3項では表現の自由を制約できる条件を具体的に明示しています。
その条件とは「立法」「目的」「必要」の3つです。
すなわち、①制約の条件をこの条文のように明文化し、
②具体的に(a)(b)に例示された正しい「目的」のためにだけ、
③守るべき利益と比例した必要最小限の方法で行われるべき、との3つです。
(『一般的意見34』パラ22~36の要旨)
日本政府報告書の「公共の福祉による制限」が、この要件を満たしていないことは明らかです。
※自由権規約19条(意見及び表現の自由)5,私たちのレポートの概要
1 すべての者は、干渉されることなく意見を持つ権利を有する。
2 すべての者は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。
3 2の権利の行使には、特別の義務及び責任を伴う。したがって、この権利の行使については、一定の制限を課することができる。ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ、次の目的のために必要とされるものに限る。
(a)他の者の権利又は信用の尊重
(b)国の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護
D-1,政府報告書パラ3&4の問題点
「表現の自由」制限には、国内法の「公共の福祉」ではなく、規約19条3項が適用されなければならない。
D-2,板橋高校卒業式事件の概要
D-3,「公共の福祉」で人権を制約したわが国における過去の裁判例
(1)板橋高校卒業式事件最高裁判決の本文に引用された過去の4つの確定判決
(2)2008年自由権規約委員会総括所見 par.26で懸念されたビラ配付事件(立川反戦ビラ・葛飾政党ビラ)
D-4,「表現の自由」の国際標準に照らして本件を検討する
(1) 一般的意見34の当てはめ
(2) 「表現の自由」に関わる、国連への個人通報の先例から
D-5,フォルホーフ教授による『第6回政府報告書に対する意見書』ダイジェスト
E-2,私たちの提言※板橋高校卒業式事件から「表現の自由」をめざす会のカウンターレポート全文(日本文)
(1)日本政府は、報告書において「公共の福祉」概念の使用した裁判例として、板橋高校卒業式事件を引用したことが不適切であったことを認め、自由権規約第19条が保障する表現の自由の権利保護のために必要なあらゆる措置を早急にとるべきである。
(2)日本政府は、表現の自由に対する安易な刑事罰が民主主義社会を危うくする事態が繰り返されないよう、国内の何人にも確実に国際水準の人権保障が受けられるように、その第一歩として締約国の最低の義務として『自由権規約第1選択議定書』を一日も早く批准するべきである。
(3)人権委員会は、締約国が自由権規約第18条および一般的意見34のパラ38を尊重し、地方自治体を含む国全体において、「国旗」や「国歌」が公立学校における卒業式や入学式などの学校行事において何人にも強制されないよう、十全な措置をとることを要請する。
http://wind.ap.teacup.com/people/html/20130722itabashicounterreport.pdf
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