
☆ 「これでいいのか!?デジタル教育」
木村@草津・滋賀です。
昨日は、標記をテーマとした講演会に参加しました。
その副題は、“教育IT先進国スウェーデン、タブレットを使う教育をやめました”です。
講師は、大阪教育文化センターの田中康寛さん。
今デジタル教育がもてはやされる中、その問題点が明らかになっていると考え、講演報告します。
まず、副題にあるように、教育IT先進国スウェーデンの状況から解説され、同国は、2010年から「一人1台」のデジタル端末をという政策を進め2014年に実現、紙の教科書からデジタル教材に移行。
これに関して、10年後の昨年末同国教育相は、
「学校のデジタル化が軽率に行われ、スクリーンの数が増え本の数が減り・・読み書き、算数などの基本的なスキルを学ぶ生徒には、本、紙、ペンを使った教育が最適であるという科学的裏付けがあるにもかかわらずです。」
として、「デジタル推進」から「アナログへ回帰」へ転換したということでした。
そして、デジタルによる発達阻害として、数学・読解力が急激に低下したスウェーデンの実態、またそれは基本的運動能力の低下まで招き、具体的にハサミを使えない、前回りができない、後ろ向き歩きができないなどの生徒の増加があるとのことでした。
これをスクリーンを見る時間が長すぎることなどから「三次元の危機」と表現されました。
さらに、交わり、共同の低下があり、それが犯罪増加にもつながっていると。
このような状況はノルウェーでも顕著になり首相が一昨年末にデジタル化の見直しを表明。
さらに、「学力世界一」のフィンランドでも、学力が急低下し、たとえば分数の引き算で通分ができない子どもが8割を超えたという。
ある自治体では、デジタル教材を紙の教科書にかえたという。
同様のことは、北欧に限らず、先進的なニュージーランドなどでも。
シンガポールでは、慎重な対応を進め小学校ではデジタル端末を導入せず、中学校では、保護者の協力と関与を重視した端末管理を進めているとのこと。
一方、アメリカ・カナダなどではデジタル格差が広がり、貧困、低学力等の課題を抱える公立学校では民間委託が進み、子どもはパソコンに向き合い、安上がりのICT教育が進み「教員が消えた」という状況が生まれているとのことです。
これに対して、生徒自身がストライキを行う事態にまでなっていると。
そこでの子どもの主張は、
「金持ちの家の子どもは少人数制で授業を受けるが、僕たちの公立学校の生徒は何時間もオンライン学習をさせられている。このようなことを拒否します」と。
そして、この教育現場の状況は、ICT企業が教育を通じて、生徒の個人情報(名前、メールアドレス、出席状況、人種、性別、経済状況、先生からの行動観察、成績の昇進、テストの点数、等々)をその同意なしに収集しているという。
さらには、その個人情報データを販売している事態が続いているとのことでした。
ここまで聴いて私は、このような事態は、すでに日本もデジタル化が軽率に進み、このままいけば学力低下や、「三次元の危機」も現実的問題となっていくのではないか。ICT企業の個人データの流出販売も日常茶飯事であり、他国のことだとしてみていてはだめだと感じました。
そのうえで、講師は、ユネスコの報告で、ICT教育は、教育そのものが困難な地域などでは効果があるが、すでに整っている地域では効果はなくマイナス効果もみられると報告していることを紹介されました。
そして、デジタルテクノロジーの教育効果はほとんどない、教員による教育指導を大切にし、あくまで道具としての活用が重要だとされました。
さらに、「全国学力調査」でもICT利用時間が長くなるほど平均正答率が低下していることが数値的に明らかになっていることを紹介されました。
とにかく、小中学校での記憶と思考の学習は、ペンとノート、つまり紙と手書きがデジタルよりも理解力が高いことが国立教育政策研究所の調査からも明らかであるとのことでした。
また、「簡単にできたことは簡単に忘れてしまう」、つまり脳に負荷をかけないと勉強にならないと。
脳の形成過程でのICT利用は大問題だということ。パソコンで学ぶと、書いたり話したりしなくなる。前頭前野を活発に働かせることが重要等々。
ネット・スマホの依存性と中毒性、怖さを正しく教えることが大切。
オーストラリアでは、このことについて親が4日間の研修を受けている。また16才まではアカウント禁止している。(子どもへの規制ではなくIT企業への規制として。)
IT企業はただで使わせている代わりに、同意なしにデータを集めてデータを商売に使っていることを知るべきである。(Googleの利用規約では、サービスを利用することで、お客様のデータの転送・処理などの同意をするものとします、とある。)
ここまで、講演の一部であるが、私なりに理解したまとめです。
現在学校教科書の二次元コードの大幅な増量が進み、次にはデジタル教科書が出てくる方向になっています。
しかし、そこにある弊害をしっかり見据え、「軽率な」デジタル化にはブレーキをかける必要があると強く感じました。
講演レジュメと講師の著書を添付します。
子どもと教科書 市民・保護者の会
事務局 木村幸雄
yu-kimura@nifty.com
2025/05/11 17:53
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