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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

「教室のエアコン設置」親の経済力で教育条件に大きな差別

2017年11月21日 | こども危機
  《子どもと教科書全国ネット21ニュースから》
 ◆ 冷房もない教室と職員室 千葉の教育の現状
   「子どもの貧困・格差」と「千葉県教育予算削減」の象徴

前田恒久(千葉県立高等学校教職員組合書記長)

 エアコンの整備費用を県が負担しない千葉県では教室等へのエアコンの整備費用を県が負担しない。
 見るに見かねた保護者達が自分達でお金を出すなら県が許可するとして、普通教室等にエアコンがついている。その数97校(それ以外に5校は自衛隊等の騒音対策として県が設置)。
 しかし、貧困の中で幸せ薄い人生を送らざるを得なかった生徒が集まる22校は、保護者が負担できないため、教室等にエアコンがない〈17年6/1現在〉。
 その教室の室温は何度か。松戸のある高校は今年7月朝6時過ぎでさえ32度、市川のある高校は昨年7月午後3時過ぎで34度。「30度以下が望ましい」とする国基準が全く守られていない。
 特に悲惨なのが体育の後だ。生徒たちは真っ赤になって、ゆで上がっている。一人一人が熱源となって、暑い教室をさらに暑くしている。教室で熱中症になるので、養護教諭からは「授業中水を飲ませて下さい」と朝会で連絡がある。
 まじめに制服をきちんと着る生徒や、Yシャツから透けるのを防ぐためにベストも着る女子生徒は、ますます熱中症になりやすい。
 ◆ 教育条件に大きな差別
 今年7月のアンケートに生徒達はこんな声を寄せている。
 「暑くて頭が痛い」「勉強に集中できない」「教室が汗臭い」
 「シャツやズボンが汗で引っ付き、授業受けていてもイラつく」
 「窓を開けても涼しい風が入ることは少なく、虫が入るばかり。飲み物はすぐなくなり、勉強に集中できない」
 「扇風機一台では後ろの子に風が来ず、不満を言ったりしている。汗のかきすぎで教室の臭いが気になり、モワッとして嫌だ。体育授業後など相当キツイ。」
 「グランドで体育後の教室授業は、あまりの暑さに死にそうです」
 「他校はついている。ものすごくうらやましい」
 「123校中101校にエアコンがついているのに22校にないのは不公平」
 「同じ公立の他校にあり、本校にないのはおかしい。平等にすべき問題だと思う。暑すぎるのは我慢ならない」。
 しかし、「エアコンの費用を親が払うことを考えると、いらない」と言う。

 こんな理不尽なことが許されていいのか。県が出すべきお金を出さないために、親の経済力で、教育条件に大きな差別が作られ、等しく教育を受ける権利が侵害されている。
 神奈川県でも千葉と同様、保護者にエアコン代を肩代わりさせ83校に設置し、60校で未設置だった。
 しかし、13年から3ヵ年で県費による整備を完了させている。千葉県との姿勢の違いは明らかである。
 ◆ エアコンのない職員室・準備室はどんな世界か
 県内75%の県立高校職員室等にはエアコンがない。職員室にないのは関東では千葉だけである。
 ただし、県は1年に4校ずつ職員室等にエアコンを設置しているが、このペースでは全県立高校につくのは20年以上先となる。
 そこの温度は何度か。ある8月の朝8:30の職員室温度は実に35度。そして、湿度59%、針は「危険」を刺していた。
 また、最上階の4階にある書道準備室は天井が前日の熱をため込み、朝8:45で38度。隣の書道室も夏休み中ほぼこの状態。この中で書道部生徒は活動していた。
 昼はさらに温度が上がる。風の強い日は畑の土が入るので、窓も開けられない。まさに灼熱地獄だ。
 教師は自腹で冷蔵庫や業務用扇風機を買って生徒を守った。別の学校では、2階の職員室の下に巨大なエアコンの室外機があり、風向きによっては熱風が職員室に入ってくる。35度などの時にさえエアコンもない職員室の窓を閉めなければならなかった。
 また二期制の学校では夏休み直前まで授業がある。体育の先生は1日に3,4時間炎天下等で授業を行うため、何人もの先生が具合を悪くした学校もあった。保健の授業で熱中症を教えている体育教諭でさえ、である。
 ◆ 夜間定時制の給食の「試行的廃止」
 千葉県では定時制5校で給食が「試行的廃止」されている。
 最も貧困で、まともな食事がとれていない生徒が少なくない定時制で試しに廃止して代わりに購買に入ってもらって、生徒はどうなるか、いわば人体実験してみようというものである。
 これが「食育」の名前で行われているが、本音は教育予算削減である。

 ◆ 学校ボロボロ
 「転勤したら自分のクラスの前に水たまりができていた。雨漏りが原因」、
 「窓ガラスが老朽化し、風雨が強いと隙間から雨が入り込み、雑巾を敷き詰めている」、
 「体育館のど真ん中が雨漏りして、卒業式の座席の上に雨が落ちてきた。たらいを置いて対応している。何年も修理されない」
 「職員室の雨漏りがひどく、教員の机の上にブルーシートを敷いている」
 「教室のタイルが大量にはがれ、技能員の修繕では追いつかず、大規模改修を待つしかないが、予算が付かない」。
 各高校が千葉県に要望した整備箇所が15年度2052件、予算が付いたのはわずか296件、16年度は2202件の要望に対し380件しか、つまり10数%しか予算が付いていない。
 ◆ これらの背景に何があるか
 これらの背景には「経済規模が世界第3位の日本国家による、先進国中最下位の教育への公的支出の割合(対GDP比)」と「財政力指数全国4位の千葉県による、生徒1人あたりの教育費が全国46位、特別支援学校費37位」(OECD2017年発表と「統計で見る都道府県のすがた2016」総務省)。
 これは新自由主義政策を推進する安倍内閣と日本会議の代表委員である森田健作県政によって強いられている教育の貧困である。
 ◆ 私たちはどう闘ってきたか。
 16年度、千葉県立高等学校教職員組合は、「ブラック」学校阻止のために、例えば生徒1人あたりの公立高等学校費(全国46位)と全国平均の差が約15万円であり、公立高校在学者数約10万5千人を掛けると約157億円、つまり、全国平均にするだけで157億円もの財源が出てくることを追及した。
 基準修業年限(全日3年、定通4年)を越えた生徒には修学支援金が出ず、授業料を自己負担しなければならない。これをゼロにするのにいくらかかるか県教委に試算させると550~700万円。先の157億円からすればわずかな額だ。
 同様に県内高校から大学進学する生徒1/3に国立大学授業料に相当する50万円を給付するのに45億8千万円、30万円給付は27億5千万円、全てが4年生大学だとすると×4という額になる。
 千葉県の財政力だけで実現可能な額だ。
 高校35人学級も75億6千万で可能。その場合943人教員の増員となり、学校数で割ると1学校約7人ずつ教員を増やせる計算になる。(1学級増について2.67人の教員を必要とし、増員に係る費用を1人800万円として県教委が08年に試算)。
 全県のエアコンリース代は年間約6億円で、残りの学校に県が出したとしてもわずかな額である。
 県との交渉で追及し、県議会の各会派に議会で取り上げるよう要請した。

 学校にはノートパソコンさえ配布されていないことに自民党議員達も驚き、今年一人一台パソコン配布が実現した。
 また、学校ボロボロを訴え、学校運営充実費(各学校で自由に使える予算)が50万から80万円に拡大され、修繕費等の不足を補う予算がついた。
 また、都議選後、県議会で自民党議員から教員増の必要性が話され、県民の声に背を向けられなくなってきたことがうかがえる。
 3月の知事選でできた信頼関係を元に市民連合等とも貧困と格差の問題としてこれらの問題に取り組む共同が広がっている。今年は教員増や県費によるエアコン設置をぜひ勝ち取りたい。
 (まえだつねひさ)

『子どもと教科書全国ネット21ニュース 116号』(2017年10月)

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