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10代の有権者の3人に1人しか投票していない現状は、わが国の教育の失敗を示している

2019年09月11日 | こども危機
  《週刊金曜日 黒風白雨》
 ◆ 民主主義の危機と主権者教育
   宇都宮健児


 今年7月21日に実施された参議院選挙は、消費税増税問題、年金2000万円不足問題、憲法改正問題など重要な争点があったにもかかわらず、「れいわ新選組」旋風のような注目すべき動きもあったが、全体としては盛り上がりに欠ける選挙であった。
 盛り上がらなかった参院選を象徴するのが48.80%いう低投票率である。
 総務省によれば、国政選挙としては過去最低であった1995年の参院選(44・52%)以来24年ぶりに50%を割り、同年に次ぐ低投票率となったということである。
 また、18歳の投票率は34・68%、19歳の投票率は28.05%、18歳と19歳を合わせた投票率は31.33%ということで、若者の投票率は全体の投票率をさらに下回る結果となっている。
 参院選で「勝利」を口にした自民党の棄権者を含めた全有権者に占める得票割合を示す「絶対得票率」は、比例代表の得票率が16.7%、選挙区の得票軍が18.97%で、いずれも2割に満たない。政権最大与党といっても、全有権者の5人に1人しか支持を得ていない計算となる。
 主権者である国民の2人に1人しか主権を行使しない低投票率は、わが国の民主主義が危機的状況に陥っていることを示している。
 また、教育の重要な目的の一つが民主主義社会における主権者を育てることにあると考えれば、10代の有権者の3人に1人しか投票していない現状は、わが国の教育の失敗を示していると言える。
 私が昨年視察してきたスウェーデンでは、2014年の総選挙の投票率は85.81%であり、昨年の総選挙の投票率は87.18%であった。
 もちろん、18歳、19歳の投票率も80%を超えている
 スウェーデンでは民主主義社会における主権者教育に力が入れられている。
 また、4年に1回行なわれる総選挙に際しては、若者が中心となって「学校選挙本部」を立ち上げ、全国の中学生と高校生を対象とした模擬選挙を総選挙とまったく同じ形式で実施している。
 現在、早急な地球温暖化対策を求める1人のスウェーデン女性の訴えが世界に広がってきている。
 スウェーデンの高校生グレタ・トゥンベリさん(16歳)は、昨年夏から毎週金曜日授業をボイコットして首都ストックホルムの議会前で早急な地球温暖化対策を求めて座り込みを続けている。
 グレタさんに共鳴する動きは今年に入って欧州各地に広がり、英国やドイツ、ベルギー、スイスなどでは若者たちが週1回授業をボイコットし、デモを行なっている。
 ベルギーでは、毎週木曜日教室を飛び出した1万人以上の高校生を中心とした若者がデモを行なっている。
 今年の2月21日のブリユッセルのデモにはグレタさんも加わったほか、ドイツやオランダの高校生も駆けつけた。
 このデモには教師に引率されたベルギーの小学生も参加している。10人以上の小学生と参加した教師は、デモ参加は社会科の実習として、授業時間に組み込むと言っている。
 民主主義社会における主権者を育てるためには、日本でもこのような主権者教育こそが求められていると考える。
『週刊金曜日 1247号』(2019.9.6)

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