親ならば誰しも子供の健康を願うものです。まして自分の子供が長い一生を障害者として暮らすことほどつらいことはあリません。私も医者としてこのようなつらい立場に立って悲しむお母さんの姿を何度となく見てきました。
こんなつらい時に、さらにひどい言葉を投げて親を悲しませる人がいます。「あなたのお子さんが障害を負ったのは、お母さん、あなたの育て方のせいです」という人たちです。
今都知事候補として立候補している小池百合子氏もそうです。 “初の女性都知事に”と売り込む小池百合子氏ですが、自身の公式サイトで、家庭教育支援議員連盟(通称=「親学」推進議連)の勉強会に参加していたこと(現在は削除)を明らかにしています。
「親学」とは、今回の都知事選で小池候補を支持し、日本の過去の侵略戦争を美化する改憲勢力の「新しい歴史教科書をつくる会」の元副会長の高橋史朗明星大学教授が提唱してきたもので、親の育て方と子どもの発達障害を結びつける特異な議論を展開しています。同議連は2012年4月に安倍晋三会長(現首相)、下村博文事務局長(元文科相)という体制で発足し、「親学」にもとづいた子育て観を推進するための法律をつくろうと活動。同年5月には、大阪維新の会がこの考えを「家庭教育支援条例案」に盛り込み、大阪市議会に提案しようとして、「発達障害は親のせいだというのか」との批判が上がり、撤回せざるをえなくなりました。
このような医学的にも根拠のない主張から障害者の父母の悲しみをさらに深めるような主張を許すことはできません。まして東京都政に持ち込むのは大変危険なことです。
小池氏は、保育所への子どもの詰め込みによる待機児「解消策」を示して、批判を浴びています。“女性”を売りにしていても、その主張が多くの親の願いと合致しているとは限りません。