自民党が選挙公約を発表しました。「景気回復、この道しかない。 重点政策集2014」というものです。表紙に安倍晋三首相の写真を載せ細かい文字で26ページという大部なものです。
はじめの6ページは見開きで、イラスト入りで次の三つの重点をかかげています。
「2年間の実績を活かし、地方に実感が届く景気回復を加速させます。」、「アベノミクスで、ここまで来ています。―――15年続いたデフレから脱却のチャンスを、今手放すわけにはいきません。」、「日本再生のためには、この道しかありません。」の三つです。
ここに述べられているのは企業の収益が増えることで雇用の拡大や賃金の上昇が生まれる。消費が拡大することで、景気が更に良くなる。アベノミクスの三本の矢で「経済の好循環」を生む。という、この二年間の政治ですでに間違いがはっきりしている理論です。
並べてある数字はこれまでにテレビ討論など公開の場で批判されつくしているものばかりです。
二年間で雇用は増加した。就業者数は100万人増加、賃上げ率は過去15年間で最高といいます。しかし実態はどうでしょう。たしかに就業者数は増えました。しかし自民党が隠していることがあります。正規雇用の労働者は22万減り、非正規労働者が123万人増えているのです。増えているのはもっぱら非正規労働者なのです。その結果、労働者の35.5%、三分の一以上が非正規になりました。こんな数字を成果として自慢する自民党の気持ちが知れません。
また自民党は賃上げ率のわずかな上昇を自慢しますが、その間の物価上昇のことを隠しています。物価上昇を差し引いた実質賃金で見ると最近15ヶ月間賃金は下がり続けているのです。この結果個人消費は2兆円も減り、「消費の拡大」も「経済の好循環」も、何処にもありません。
一方大企業(資本金10億円以上)は経常利益を7兆200億円から11兆8億円へ大きく増やしています。
こうしてたしかに大企業と富裕層は増えましたが、一方でワーキングプアが増えて格差が拡大しています。
この政策集の後半19頁は個別政策になっています。「経済再生・財政再建」、「「地方創生・女性活躍推進」、「暮らしの安全・安心、教育再生」「地球を俯瞰した積極的平和外交」、「政治・行政改革」、「憲法改正」の6章に分かれています。細かい文字で約二万四千文字もあります。
一番大きなのは経済政策です。その経済政策が上に見たように(故意に)間違った数字から成り立っている訳ですから、内容は推して知るべし、です。
税金については、庶民に消費増税、大企業に法人税減税の方針を崩していません。
雇用については「多様な働き方」という名で非正規雇用を増やす政策を維持することを歌っています。
賃金について、最近総理が経団連に賃上げを要請したとの報道がありましたが、正式の公約にはまったく出ていません。この前の要請はただのポーズだったのでしょう。最低賃金の底上げなどどこにも触れていません。
原発について「重要なベースロード電源と位置付け」「新規制基準に適合する・・・原発の再稼働を進めます」と断言しています。福島第一原発のあの大事故を経験しても、原子力にしがみつく姿勢を露骨に示しています。一方で「再生可能エネルギーの最大限かつ持続的な導入促進」といいながら、最近電力会社が進めている再生可能エネルギーによる電力の買い上げ保留について何も触れていません。今まで通り黙認するつもりでしょう。
社会保障制度については「消費税財源は、その全てを確実に社会保障に使い」と書き、あたかも非常に増額するような錯覚を与えようとしています。しかしこの言い方は今までと同じものです。いままで現実に消費税が増税されても、社会保障費が増えたことはありません。しいて推し量れば「消費税は社会保障に使います。しかしこれまで一般の財源から社会保障に使ってきた金はひきあげます」ということでしょうか。お金に色がついている訳でもないのにごまかしの理屈です。
防衛問題については、「日米同盟強化を進めるとともに、アジア太平洋地域における同盟の抑止力を高めるために『日米防衛協力のための指針』(ガイドライン)を見直しつつ、同盟国・友好国との防衛協力を推進します」と抽象的ながらも集団的自衛権行使による同盟体制を再編することを示唆しています。
またそのなかで「『日米同意』に基づく普天間飛行場の名護市辺野古への移転を推進し、在日米軍再編を着実にすすめます。」と、沖縄知事選に示された県民の意思を踏みにじる意思を示しています。
この政策集の最後に「憲法改正」の章があります。2万4千字の中のわずか150字も満たない文章ですが、「憲法改正原案を国会に提出し、憲法改正のための国民投票を実施、憲法改正を目指します。」とあります。短い文章で最後に書いてあるからと言って軽視してはならないでしょう。この短い文章にいいたいことはすべて書いてあります。二年前の選挙以来安倍晋三首相は憲法改正、九条改悪の野望を隠しませんでした。「九条改憲」「96条改憲」「解釈改憲」と一旦後退したかのように見えましたが、すきあらば明文改憲しようという野望を捨ててないことを、我々も忘れてはならないと思います。
以上自民党の選挙公約を見てきましたが、我々庶民に役立つ公約は一つもないようです。