濃さ日記

娘もすなる日記(ブログ)といふものを父もしてみんとて・・・

「いのち学事始め」(アンチエイジング)

2013-08-23 21:43:57 | Weblog
酷暑の続く八月だが、何とか誕生日も無事に終え、いよいよシルバーエイジの仲間入りを果たすこととなった。
とはいえ、正直なところ、「これって悪い冗談だろ!?」という思いを禁じ得ないのだが・・・
自分の人生を自分で切り開いてきたという自負などもちろんないが、単調なように見えて意外と起伏の多かったこれまでの半生を振り返るなら

また越ゆべしと思ひきや命なりけり小夜の中山(西行)
命なりわづかの笠の下涼ミ(芭蕉)


という悠揚迫らず、己の運命を素直に受け入れていく詩人の姿勢が、自分にとっての実感と無理なく重なってくる。
とりあえずは我が命を救ってくれた多くの人々に深く感謝しつつ、今後も馬齢を重ねていくしかないようだ。

その一方で、ちょうどこの日を「美しいたましい」の誕生日として祝福されるべき方がいるわけで、そう思うと感慨無量でもある。
いずれにせよ、毎日が「残された人生の最初の日」である。
せめて新鮮な気持ちで一日一日を大切に過ごしていきたい。
ここで、以前のブログで紹介したヤマトタケルの歌を再び引用してみよう。

命の全けむ人は 畳薦 平群の山の 熊白橿が葉を 髻華に挿せ その子

長寿をまっとうするには、故郷に自生する木の葉や草花の生命力を取り入れ身につけていくがいいということで、このとき、自然治癒力を重視するヤマトタケルの眼力の鋭さが垣間見えてくるのではないだろうか。
「命」とは周囲の自然の霊やたましいとの交感でもあるのだ。
ところで、こうした外的な自然(客体)と自分(主体)の生き生きとした交感を失ったのが現代であり、それでも長寿を願うとすれば、どうすればいいのか。
いわゆるアンチエイジング効果をPRする某化粧品メーカーのHPを参照してみよう。

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「自己美肌力」とは、肌全体がどれだけ若々しくエネルギーに満ちた肌細胞で満たされているか、ということです。
そして、この力を維持するのに大きく関与しているのが、肌細胞の誕生を担っている全ての細胞の母、“幹細胞”なのです。
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ということになるが、近年は幹細胞治療と称して、自分の幹細胞を身体から抽出し、それに何らかの操作を加えて、再び身体に戻して、身体を活性化するという方法も試されているようだ。
ここでは自分の身体(主体)をいったん客体化して、それを再び主体化するという複雑なルートで命の再生を図っていることになるが、そのベースとしてある「霊」とか「たましい」の働きが見失われているのは間違いない。
いくら若返ったとしても、それはいわば、たましいの抜けたマネキンの美しさにほかならないようにも思うがどうだろうか。