濃さ日記

娘もすなる日記(ブログ)といふものを父もしてみんとて・・・

胸騒ぎの十一月

2018-11-13 01:56:21 | Weblog
同期生の中から、ちらほら認知症の仲間の報告を受けるようになった。
しかし、ひときわ悲しかったのは、後輩の死を知らされたときだ。
自分もとっくに死から数えた方が早い年齢になっているのだろう。
つらい思いをしているとき、「生きすぎた罰」を背負っている自分の姿が頭に浮かぶこともある。
ある老批評家は次のようなことを告げていた。

「老境……累積する膨大な過去の記憶のなかで、死者たちとの濃密な対話によってこそ、未来性が獲得されてゆく。」(三上治)

話題は変わり、共通テストの試行調査が実施されたが、それに対応した模試の作成依頼を某予備校から受けた。
大騒ぎするほどには評判の芳しくない入試改革だが、予備校講師などの嫌がる仕事でも快く引き受けるのが、スキマ産業のトップランナーである我が使命である。
早速、テストを解いてみたら、次の文章に突き当たった。

花そっくりの花も、花より美しい花もあってよい。
それに香水をふりかけるもよい。
だが造花が造花である限り、たった一つできないのは枯れることだ。
そしてまた、たった一つできるのは枯れないことだ。(吉原幸子)


入試の出典にしてはもったいない、ふと立ち止まってみたくなるような文章だ。
君は「枯れる」ことを引き受けるのか、「枯れない」ことに賭けるのか、
不惑の年齢をとうに過ぎているというのに、胸騒ぎがする十一月である。