濃さ日記

娘もすなる日記(ブログ)といふものを父もしてみんとて・・・

ニュースな日本語2 ブレる/ブレない

2009-02-02 12:21:11 | Weblog
私はブレない

などという発言が最近目立つようになった。
確かに、「ブレる」は「ブラブラ」や「フラフラ」などと同根で、頼りなく情けない状態を表す言葉だから、「ブレない」と宣言をすることで、朝令暮改を繰り返すどこかの政治家とは違うんだぞ、といわんばかりに首尾一貫した態度を示すことができ、好感度も高まっていくわけだ。

だが、その反面、「ブレる/ブレない」が、カメラの「手ブレ」に似た操作感覚の問題にすぎなくなり、戦前の「転向する/転向しない」といった思想的重々しさを失ってしまっている気もしなくはない。

1 私はフレない。(清原選手の引退時、愛用のバットに向かって一言)
2 私はブラない。(益川教授教授のノーベル賞授与決定時のインタビュー)
3 私はフラれない。(某女子大のミスコン女王の発言)
4 私はブテない。(SMの女王の引退時、愛用のムチに向かって一言)

そもそも「ブレる」の語源は「ふる(振る・震る)」であり、上の例の4以外は同じ仲間になる。原義は、物が生命力を発揮して生き生きと小刻みに動くことだそうだから、心臓や筋肉がプリプリ動いて、いたって健康そうな様子を示しているともいえる。あるいは、「前ブレ」などのように、敏感に何かを察知するアンテナでもあるわけで、とすれば、その振れ幅が問題となるのだろう。

私見では、「ふる」や「ふく」などのh音は、風や息のオノマトペから生まれてきたように思われる。これについて吉本隆明は

風の音を「ヒュウ、ヒュウ」という擬音語であらわすのは、事実としての風の音をそれに一番近いと感じる母音と子音固有の結合体系で言語化することだ。(中略)自然現象の動きは自然が言葉をしゃべっていることだとみなす認識をもっているのは、逆に言えば、人間の言葉を自然現象の動きと等価だとみなす認識を語っている。(母型論)

としている。
とまあ、こんなところで、面白半分にブレア前英首相を検索してみたら、彼が、奥方の要望で、イギリス国教会からカトリックに改宗したという記事が見つかった。さすが、かなりのブレ屋であるようだ。

コメント
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