音楽療法のライブ日記

音楽療法士がお届けする、日々の活動記録と情報発信のブログです。

『延命治療』から『延命措置』へ

2022-10-01 21:15:36 | ひとりごと
日本医師会 生命倫理懇談会は、令和2年5月に
『終末期医療に関するガイドラインの見直しとアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の普及・啓発』
の答申を発表しました。

27ページに亘る答申は生命倫理懇談会において議論を積み重ねた内容だと感じました。
現代の終末期医療に関する問題は数年前とは大きく異なる価値観を共有するためであり、
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の普及・啓発はその最前線の価値観を意味するものと
考えています。
終末期医療の問題点、医師及び医療関係者からの一方通行ではなく、
患者本人の意思確認(出来ない時のことも含む)、及び家族との共有認識を
話し合うことも記述されています。

以下、一部抜粋します。
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 前回の答申から10 年以上の月日を経て、終末期医療に関するわが国の状況にも
 相当の変化が生じた。それらを列挙すれば、少なくとも次のような点を、
 ガイ ドラインの改訂を促す事情としてあげることができる。
 ・ 超高齢社会の急速な進展
  ・ それに伴う在宅及び介護施設における療養・看取りの増加
  ・ 地域包括ケアシステムの構築が進められていること
  ・ いずれの状況にお いてもかかりつけ医の果たす役割が期待されていること
  ・ 医療・医学の進展(ここには遺伝子診断・治療の進展や、緩和医療の進展が含まれる)
 ・ 認知症患者の増加
  ・ 長期の高齢期に対応するべく、早期にACPを行うことの重要性が意識されるようになったこと
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終末期医療として4人の家族を見送ってきた私としては、以下の項目が重要だと感じています。

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 <3.人生の最終段階における医療・ケアの方針決定の基本的手続き>
 延命措置の開始・差し控え・変更及び中止等、特に差し控え・中止に際しては
 その行為が本人の死に結びつく場合がある。
 したがって、医師は、本人の意思決定支援における ACPの重要性を認識するとともに、
 人生の最終段階における医療・ケアの方 針決定を行う際に、特に慎重でなければならない。
 その上で、延命措置の開始・差し 控え・変更及び中止等に際しての基本的な手続きとして、
 以下のことがあげられる。
(1) 本人の意思が確認できる場合には、担当医・かかりつけ医等の医療従事者による
適切な情報提供と説明に基づく本人の意思を基本とし、それを尊重した上で
医療・ケアチームによって決定する。その際、医師等は押し付けになら ないように
配慮しながら本人・家族等と十分な話し合いを行う。
本人の意思は変化し得ることから、時間の経過、病状の変化、医学的評価の変更等応じてその都度説明し、その意思を再確認する。 
この説明に当たっては、家族等も含めた十分な話し合いを行うことが必要である。
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上記の内容で私自身が体験とともに感じていた「延命措置」という言葉でした。
この答申の終わりの(注)に記載されていました。

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 注 6) 従来、延命治療といわれてきたが、現在では、これはもはや「治療」ではな いとする
 考え方も有力になりつつあるため、本ガイドライでは、延命措置と いう言葉を用いた。
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既に2年以上前の答申ですが、実際の医療の現場ではどのような関わり方の変化が
あるのでしょうか?本人と家族との話し合いは十分にされているのでしょうか?
「それは単にガイドラインですから・・・」
と施設の面談で言われた時は唖然とし、在宅介護への意思を決定させる言葉になりました。
その後、家族の気持ちに寄り添っていただいた在宅での看取りを終えた時には
溢れる感謝の気持ちとともに、家族皆が穏やかな気持ちを共有していたことに安堵しました。

尚、冒頭には以下のように記載されています。
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 日本医師会の横倉義武会長より、「終末期医療に関するガイドラインの見直しと
 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の普及・啓発」に関する議論の取りまとめを
 行うようにとの諮問を受けて発足した。
 その後、年号が令和に改まる中で、次のように議論を積み重ねた。
 第1回:平成31年2月21日 第2回:令和元年6月27日 第3回:令和元年10月3日
 第4回:令和2年1月23日 第5回:令和2年5月25日
  (第5回目は新型コロナウイルスの感染拡大によりやむを得ず懇談会は中止し、
   答申案などの最終的検討についてはメール審議で代替した)
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