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清水 誠先生

2012-02-10 17:40:57 | 日記
今日、量子物理学の本を読んでいたら、ふとアインシュタインとベルグソンの
相対性理論についての論争のことを思い出した(ってなんて俺は変態的なことか)。

さっそくインターネットで検索してみると、
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PDF]
アインシュタインとベルクソン

e-lib.lib.musashi.ac.jp/2006/archive/data/j4102-17/for_print.pdf

ファイルタイプ: PDF/Adobe Acrobat - クイック ビュー
アインシュタインとベルクソン 清水 誠. ニュートンの古典物理学においてそれが用いる空間概念と時間概念は、. それらがわれわれの日常的知覚経験を裏書きするということがあって、そ. のまま哲学においても使用されることになっている。例えばカント哲学な ...
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とある。
これはいい!
何がいいかというとPDFデータであることがいい。
大体、哲学論争は「なにをいっているのかわからん」ことがほとんどで、
少なくとも私のような素人は2,3回読んでようやく内容が理解できる。
ネットのページだと、どのような検索経路を踏まえたかを覚えておかないと
二度とそこに行きつけなくなるのだ。

とさっそくこの論文をダウンロードして読んでみた。

論文のタイトルや著者のことはそっちのけで早速内容を読んでみると、
なんと20年前はちんぷんかんぷんであったこの二人の巨星のやり取りが
わかる(気がする)ではないか。
まあ、多分7割も理解していないだろう(私が苦手な数式もでてくるしね…。)

それでも面白かった。十分に興味をもって読んだ。

論文の著者は誰かと思い、ページの最初に戻ると「清水 誠」とあった。
何をかくそう、この方は私の恩師である。

師とは院生の頃の2年間、毎週一対一の講義をうけていた。
内容はベルグソンの『時間と自由』だった。
もちろん、フランス語の原文を読むのである。

私の稚拙なフランス語の能力では、哲学論議とはならず、まるで
読解の授業だった。上記の書籍は岩波文庫から出版されていたが、
数年後に訳文を読んだが、それでもさっぱりわからんかった。(笑)

私が額に汗して一生懸命フランス語を読み解いているうちに、
師はコクリ、コクリと居眠りを始める。そういうことが多々あった。
もうかなりのご高齢であったし、誰もが私の講読しているところを
見たら、眠くもなるわい!(笑)。

先生は温和でおっとりとした方であったが、内面非常な厳しさをもっていた。
先生の業績を私ごときが語るすべはないのであるが、彼の思想の行きついた先には
「メルロ・ポンティ」がいたと認識している。
一度でいいから、先生にメルロ・ポンティについて教わりたかった。

(…)

先生、2009年にお亡くなりになっていたのですね…。

先生、私はダメな生徒でしたが、今でもなんとかかんとか生きています。
そして今でも懐かしむように、小難しい哲学書を読んでいますよ。
私が卒業するとき、無言のまま真っ先に手を差し伸べてくださったのは清水先生でした。

「君がさっき話していたこと、君は「これは幻想かも知れない」といっていたが、
もしかしたら、そこにこそ真実があるのかもしれないね…。」

と言ってくださったこと、いまでも心の励みに生きています。

世間からの評価などいらない。
批判されても馬鹿にされても相手にされなくてもいい。
そんなことどうでもよくなってきた…。

へん!!、俺は俺の信じた道をいくんだ…。

先生、ありがとうございました。
そして心よりご冥福をお祈りいたします。



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