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The Okinawan spirits ~泡盛百花~vol.3 稲垣千明 

2009年07月15日 | 水曜(2009年7~8月):稲垣千明さん
一足お先に梅雨明けした沖縄は、連日、真夏の空模様。
これから毎週末のように各地でお祭りが開催されます。夏から秋にかけては、
沖縄も、伝統的なお祭りの多いシーズンです。




 伝統的なお祭りは、神様へのお祈りから始まります。というより、
本来はお祭り自体が神様にささげる目的で行われたものだったわけですから
お祈り無くしては始められませんよね。そして、その神様へのお祈りに欠かす
ことができないのが、泡盛です。


目の前のお供えを喜んでいるように見えませんか?

見えづらいですが、泡盛で清められています
   
     
 昔は、地方の役人が、首里王府からの賜り物として、地域で行われた
お祭り(神事)に泡盛を奉納したといいます。
その泡盛は、お祈りが終わると、神事に列席した人たちの間を回され、人々は盃を押し戴いてから、
ほんのわずかずつの泡盛を、ありがたく味わいました。

  

 首里王府が存在しなくなったこんにち、その提供元は、今度は地域の
企業や団体などへと変わりましたが、泡盛は変わらず、お祭りに奉納されています。
さらには、お祭りを運営する資金を補うための記念販売物としての泡盛も
登場しています。時代とともに、新たな役割も生まれているのですね。

 少し観点は変わりますが、神様に供える泡盛にまつわる、大変、面白い
エピソードをひとつご紹介したいと思います。

 沖縄は国内でも有数の移民県としての歴史を持っていますが、今から
三十数年ほど前に、アメリカのロサンゼルスの沖縄県人会を訪問した方が
県人会婦人部の老婦人とお話をしていたときに、そのご婦人が、こう
おっしゃったそうです。
「島酒(泡盛)じゃないとウガン(拝み)が通らん(神様に通じない)さぁ」(!!!)。

 沖縄では祖先を神様として拝むしきたりがありますが、このご婦人は、
ロサンゼルスでも、いえ、もしかしたら異国の地に暮らし続けているからこそ、
いっそう祖先を拝みたいと思われたのでしょう。
そしてきっと、洋酒か何か手に入りやすいお酒をお供えにして拝んだものの、
その拝みが届かなかったというふうに感じられて、このようなことを
おっしゃったのでしょうね。

 沖縄の神様には沖縄の酒・泡盛。時代が変わってお祭りの形式が変わっても、
異国の地で拝みをしようと思っても、やはり泡盛なくしては、はじまらないようです。




text:稲垣千明





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