みなさんこんにちは。
のこのこせそこの瀬底です。
つい先日始まったばかりと思っていたら今回が最終回となりました。
最終回に相応しい内容って何だろう?
と考えていたのですが、紹介していない事柄も沢山あり過ぎて一つに絞るのは難し
いというのが本音です。
僕は沖縄のアート業界を総括して語れるような立場でもないし、それ程の知識があ
る訳でもありませんが、業界の片隅にいる人間として感じることを書こうかと思い
ます。
まず第一に「もったいない」というのが正直な気持ちです。
沖縄は本土とは違った歴史、風土や地理的な条件のおかげで独特の文化を持ってい
るのは周知の事実です。また、沖縄県立美術館ができたことで美術に対する注目も
それなりに上がってきているはずです。そういった状況にありながら沖縄のアート
シーンはまだ本来の力を発揮できていないように思えます。
連載中に取り上げた照屋勇賢さんのように単身で海外へ渡り評価を受けた人もいれ
ば、宮城光男さんのように沖縄の伝統に立脚しつつ先端的表現で注目を集める人も
います。どちらも個人の才能と努力があってのことですが、沖縄という土地の影響
があってこそ彼らが活きている部分も多々あると思います。上の世代で言えば、名
嘉睦稔さんや幸知学さん、若い世代だと豊永盛人さんや山城知佳子さん、pokke104
さんなど才能のある方が次々とでてきています。沖縄県の出身者ではありません
が、学生時代から沖縄で育ったアリカワコウヘイ!さんも沖縄の影響を受けて開花
した作家さんではないかと思っています。
このように沖縄からアーティストが育っているのは確かですが、まだ少ないと思い
ます。本当であればもっと数多くのアーティストが世に出てもおかしくない土壌が
沖縄にはあります。実際、音楽シーンを見ると安室奈美恵さんのようなポップスタ
ーからりんけんバンドのような沖縄に立脚しながら世界的な音楽を作っているバン
ド、古典音楽では偉大な奏者が数えきれないほどいますし、モンゴル800やHY、
ORANGERANGE、HIGHandMIGHTYCOLORなど全国的に人気のあるバンドも出ています。
昨年、僕が代表を務める沖縄アートセンターと沖縄タイムス社で主催したイベント
の沖縄アートフェスティバルではまだ知られていない沖縄のアーティストからも多
くの応募がありました。東京都庭園美術館の副館長を務める塩田先生には展覧会に
際して頂いた文章の中には「沖縄にはすばらしい文化的伝統、アジア諸国ときびす
を接する地理的優位性、栄光と苦渋に満ちた固有の歴史等々があるのだから、本土
の美術館など望むべくもないユニークで創造的な活動ができるはず」と沖縄の可能
性を語っていました。
ただし、コンテンポラリーアートに限って言えば、沖縄の作家は少々勉強不足の感
があります。昔、ロンドン芸術大学の教授にお会いしたことがありますが、中国や
日本の作家はヨーロッパとは別の文化的背景があるため、個人としての才能、個性
なのか母国の文化的素養なのかが分からないことがあると言っていました。沖縄県
民の多くは文化的素養としては大きな財産を持っていると思いますが、その上に築
かれるべき個性としての知識と経験が不足しがちなのではないかというのが率直な
感想です。コンテンポラリーアートの世界ではヨーロッパを中心として発達したア
ート文脈と時代性という両輪があって評価されるのといのが僕の解釈ですが、こと
文脈に関しては沖縄のアートシーンはまだまだ弱いと思います。逆に言うとその部
分が解決されてけば活躍する世界的に活躍できるアーティストが更に増えることで
しょう。また、文脈を踏まえて美術評論ができる人や場ができると更に盛り上がる
でしょう。
沖縄のアートシーンは可能性に満ちていると思います。でも正直言って、発表の場
が少ないです。沖縄に限らず地方は雑誌メディアが弱いためアート業界以外の人へ
の発信力も弱いと言わざるを得ません。
また、僕自身も沖縄のアートを知りたい、という方の為の水先案内人にならなれる
よう精進していく必要をヒシヒシと感じている今日この頃です。
書きたいことは山ほどありますが、長くなり過ぎるのでこの辺で。
最後に、折角ですので来月行われるカイナアートフェスタのご紹介。
沖縄のアートイベントの先駆けであり沖縄でアートを広げる功労者的イベントであ
るカイナアートフェスタをご紹介。
カイナアートフェスタ(以下、カイナ)は2001年から続くアートイベントです。
カイナの何がすごいかというと11月7日・8日に開催される今回で8回目を迎えること
です。沖展のように沖縄タイムス社という大きな会社が主催するイベントであれば
継続性があるのも納得できますが、カイナは徳元佐和子さんという一人の女性の情
熱によって維持されている面が大きいです。彼女がいなければ沖縄の若手クリエー
ターの活躍の場はもっと少なかったかもしれません。
カイナはフェスタの名に相応しい、アート好きな人たちのお祭りです。当日は作品
を観て楽しむことはもちろん、気に入った作品の購入も可能です。出展者も来場者
も多く、明るく賑やかな会場ですので作家さんと直接会話しやすい雰囲気なのも素
晴らしいです。また、継続していることで知名度があがり、普段は美術館やギャラ
リーに足を運ばないアートファン以外の人やメディアやデザイン会社等が時代の寵
児になりえる作家を発掘すべく多数訪れているようです。おそらく、カイナからク
リエーターとしてのチャンスをつかんだ作家さんも数多くいることでしょう。
カイナアートフェスタ
http://kaina-okinawa.com/
text:瀬底 芳章
★沖縄観光の旅行雑誌を作る会社が素顔の沖縄を紹介するサイト
のこのこせそこの瀬底です。
つい先日始まったばかりと思っていたら今回が最終回となりました。
最終回に相応しい内容って何だろう?
と考えていたのですが、紹介していない事柄も沢山あり過ぎて一つに絞るのは難し
いというのが本音です。
僕は沖縄のアート業界を総括して語れるような立場でもないし、それ程の知識があ
る訳でもありませんが、業界の片隅にいる人間として感じることを書こうかと思い
ます。
まず第一に「もったいない」というのが正直な気持ちです。
沖縄は本土とは違った歴史、風土や地理的な条件のおかげで独特の文化を持ってい
るのは周知の事実です。また、沖縄県立美術館ができたことで美術に対する注目も
それなりに上がってきているはずです。そういった状況にありながら沖縄のアート
シーンはまだ本来の力を発揮できていないように思えます。
連載中に取り上げた照屋勇賢さんのように単身で海外へ渡り評価を受けた人もいれ
ば、宮城光男さんのように沖縄の伝統に立脚しつつ先端的表現で注目を集める人も
います。どちらも個人の才能と努力があってのことですが、沖縄という土地の影響
があってこそ彼らが活きている部分も多々あると思います。上の世代で言えば、名
嘉睦稔さんや幸知学さん、若い世代だと豊永盛人さんや山城知佳子さん、pokke104
さんなど才能のある方が次々とでてきています。沖縄県の出身者ではありません
が、学生時代から沖縄で育ったアリカワコウヘイ!さんも沖縄の影響を受けて開花
した作家さんではないかと思っています。
このように沖縄からアーティストが育っているのは確かですが、まだ少ないと思い
ます。本当であればもっと数多くのアーティストが世に出てもおかしくない土壌が
沖縄にはあります。実際、音楽シーンを見ると安室奈美恵さんのようなポップスタ
ーからりんけんバンドのような沖縄に立脚しながら世界的な音楽を作っているバン
ド、古典音楽では偉大な奏者が数えきれないほどいますし、モンゴル800やHY、
ORANGERANGE、HIGHandMIGHTYCOLORなど全国的に人気のあるバンドも出ています。
昨年、僕が代表を務める沖縄アートセンターと沖縄タイムス社で主催したイベント
の沖縄アートフェスティバルではまだ知られていない沖縄のアーティストからも多
くの応募がありました。東京都庭園美術館の副館長を務める塩田先生には展覧会に
際して頂いた文章の中には「沖縄にはすばらしい文化的伝統、アジア諸国ときびす
を接する地理的優位性、栄光と苦渋に満ちた固有の歴史等々があるのだから、本土
の美術館など望むべくもないユニークで創造的な活動ができるはず」と沖縄の可能
性を語っていました。
ただし、コンテンポラリーアートに限って言えば、沖縄の作家は少々勉強不足の感
があります。昔、ロンドン芸術大学の教授にお会いしたことがありますが、中国や
日本の作家はヨーロッパとは別の文化的背景があるため、個人としての才能、個性
なのか母国の文化的素養なのかが分からないことがあると言っていました。沖縄県
民の多くは文化的素養としては大きな財産を持っていると思いますが、その上に築
かれるべき個性としての知識と経験が不足しがちなのではないかというのが率直な
感想です。コンテンポラリーアートの世界ではヨーロッパを中心として発達したア
ート文脈と時代性という両輪があって評価されるのといのが僕の解釈ですが、こと
文脈に関しては沖縄のアートシーンはまだまだ弱いと思います。逆に言うとその部
分が解決されてけば活躍する世界的に活躍できるアーティストが更に増えることで
しょう。また、文脈を踏まえて美術評論ができる人や場ができると更に盛り上がる
でしょう。
沖縄のアートシーンは可能性に満ちていると思います。でも正直言って、発表の場
が少ないです。沖縄に限らず地方は雑誌メディアが弱いためアート業界以外の人へ
の発信力も弱いと言わざるを得ません。
また、僕自身も沖縄のアートを知りたい、という方の為の水先案内人にならなれる
よう精進していく必要をヒシヒシと感じている今日この頃です。
書きたいことは山ほどありますが、長くなり過ぎるのでこの辺で。
最後に、折角ですので来月行われるカイナアートフェスタのご紹介。
沖縄のアートイベントの先駆けであり沖縄でアートを広げる功労者的イベントであ
るカイナアートフェスタをご紹介。
カイナアートフェスタ(以下、カイナ)は2001年から続くアートイベントです。
カイナの何がすごいかというと11月7日・8日に開催される今回で8回目を迎えること
です。沖展のように沖縄タイムス社という大きな会社が主催するイベントであれば
継続性があるのも納得できますが、カイナは徳元佐和子さんという一人の女性の情
熱によって維持されている面が大きいです。彼女がいなければ沖縄の若手クリエー
ターの活躍の場はもっと少なかったかもしれません。
カイナはフェスタの名に相応しい、アート好きな人たちのお祭りです。当日は作品
を観て楽しむことはもちろん、気に入った作品の購入も可能です。出展者も来場者
も多く、明るく賑やかな会場ですので作家さんと直接会話しやすい雰囲気なのも素
晴らしいです。また、継続していることで知名度があがり、普段は美術館やギャラ
リーに足を運ばないアートファン以外の人やメディアやデザイン会社等が時代の寵
児になりえる作家を発掘すべく多数訪れているようです。おそらく、カイナからク
リエーターとしてのチャンスをつかんだ作家さんも数多くいることでしょう。
カイナアートフェスタ
http://kaina-okinawa.com/
text:瀬底 芳章