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父親は必要なのか?(1) №222

2014-07-28 13:54:38 | 日記
 母親かまたはその代わりに母親役をしてくれる存在がなければ子どもは育たないが、「父親は子どもの成長や発達に不可欠なものとして必要なのか」という問いかけが、精神科医の岡田尊司氏の著書「父という病」(ポプラ社刊)の冒頭部分にあります。
 父親としての権力を絶対的なものにしていた家父長制度が終わり、乗り越えるべき父権がなくなり、フロイトのいうエディプス・コンプレックスが存在しなくなり、母子一体の段階から、子どもも母もなかなか抜け出せなくなります。そこで生じる様々な葛藤が著者の前作「母という病」(ポプラ社刊)に書かれています。
 しかし、母親の過剰な支配や干渉に苦しむ人が増えたのも、逆に母親から見捨てられた寂しさを抱えている人が増えたのも、そこには父親の不在が横たわっているのではないか、というのが岡田尊司氏がこの本を書いた動機ということです。
 自分の思い通りに子どもを育てたい母親は、その支配権を強固なものにするために父親の様々な欠点や問題行動をあることないこと子どもに吹き込み、父親に対する愛着を嫌悪や憎しみに変えようとします。だらしがない、不潔だ、お酒やたばこ臭い、横暴だ、というような父親に対するネガティブな感情は、ほとんどすべてが母親の仕組んだたくらみによるものだと岡田氏はいいます。
 しかし、母親が子どもを思い通りに出来るのは、せいぜい思春期までです。やがて、子どもは気づきます。自分にとって必要だったかもしれない父親を放り出し、憎しみを持たせたのは母親の身勝手な都合によるものだったのではないか。自分が子どもを独占したいために父親を閉め出しただけではないのか。あなたになんか、独占されたくなかった、と子どもは怒りを母親にぶつけ始めます。母親を殴り、暴言を吐き、それが出来ない子は、自傷行為や拒食症になり、自らを痛めつけたり、損なうことで間接的に母親に怒りと苦しみを味わわせます。子どもは一人の親に独占されるよりも、両親に共有され、父親にも母親にも愛されたいと願っています。ところが、誰よりも信頼し、愛していた母親が実は最大の裏切り者として父親を奪ったといことに怒りの矛先を向けます。
 母親は慌てます。こんなにも苦労して自分を犠牲にして育ててきた我が子が、歯向かい、怒りをぶつけてくることが理解できず、情けなくなり、悲嘆にくれます。こんなに一生懸命この子のために尽くしてきたのに、なぜ自分がこんな目に遭わなければならないのか。自分が子どもから父親を奪ってしまったことが原因であることに気づく母親は希です。



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