銀のかんざし/世界むかし話 中国/なたぎりすすむ・訳/ほるぷ出版/1979年
鼻が長くなるといえば、日本の昔話だと長者の娘の鼻を長くする、ヨーロッパだとお姫さまの鼻を長くして、それを治す見返りに、大金などを手にします。
この中国の話は、二人兄弟の弟が長くなった鼻を元に戻そうとして、欲をだし、鼻が顔の中にへこんでしまうというもの。
兄弟がでてくると、弟の方をがメインとして物語が進行するのが多いのですが、この物語では兄がメイン。
世間にでて、一旗揚げようと出かけた兄弟、弟は兄が路銀にもっていた巾着の袋が重いだろうと、荷物を交換し、しばらくいくと、今度は、具合が悪いから少し休みたい、どこかで熱い湯をもらってきてくれないかと兄に頼みます。
弟の心配をした兄は、道ばたの畑で働いているおばあさんを見つけ、お茶をいっぱいもらって弟のところにもどりました。ところが弟は金をもって、どこかへいってしまいます。
がむしゃらに先を急いだ兄が、あずまやをや見つけ、一晩とまることにします。このあずまやは「遊仙亭」とよばれ、二階が見晴らしになっていました。石に横になって休んでいると、ふと何人かで話すこえがします。
毎年8月15日には、仙人があつまって宴会をするのです。
ひとりは、一度叩けば、いろいろなごちそうがでてくるこんぼうのことを話します。もう一人は、苦泉の苦い水がでるのは、泉のそばのマツの木の下にいる青ヘビを殺せば、真水にかえることができると話し、西の村の橋が12年たってもできあがらないのは、橋の下に金貨の詰まったかめが四つに、銀貨の詰まったかめが四つもあるのが原因だと話し声がしました。
これを聞いた兄は、それぞれのところで解決方法を教えます。
こんぼうを持ち帰った兄は、食べものを出してもらってはくらしはじめます。
苦泉が真水にかわり、西の村の橋がついにできあがったのを聞いた皇帝は、さっそく大臣を兄の家に使わせ、金銀財宝をおくります。人民の苦しみをすくった兄にほうびを与えるというのも、よくできた皇帝です。
ある日、弟が兄の家の前をとおり、自分もと「遊仙亭」にでかけますが、仙人に鼻を一丈二尺もの長さに ひっぱられてしまいます。
大金もちになった兄は、こんぼうをかえし、弟の鼻をなおす方法をおしえてもらおうと「遊仙亭」にでかけます。
仙人は、「こんぼうで12回打って、12回名を呼び、12回「はい」と返事すれば、鼻はしっかりもとどおおりになる」と、話をしていました。
これを聞いた兄がいそいで家に帰り、こんぼうを12回うって、12回弟の名前をよび、弟が12回「はい」とこたえます。ところが、弟は、何を思ったのか、もう一回たたいてくれといいだします。
もう一度叩くと・・・・。
一丈二尺は45cmほど。白髪三千丈のお国にしては、遠慮気味です。
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