チベットの昔話/アルバート・L・シェルトン 西村正身・訳/青土社/2021年
<月すら見えないときに泥棒はヤクの子を盗む・・チベットのことわざ>
むかし、大きなダイヤモンドをもっている王さまが、太陽の光にきらめいているのをみて楽しんでいた。不誠実な召使が、王さまから、疑いの目を向けられることのないように宝石を盗んでやろうと策をねった。
王さまがいつものように宝石を外に持ち出し、離れたところにおいてみると、それはきらきら輝いていたが、そのきらめきがだんだんと弱くなっていき、ついには王さまの目の前で消えてしまった。王さまと召使がさがしまわったが、みつけることができなかった。こうして王さまは、かけがえのない宝石を失ってしまったのだ。
召使たちが、王さまの目を欺くために氷を使っていたからである。王さまの目の前で消えたので、誰一人責任を問われることがなかった。
<ところで、氷の調達は?>