どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

赤ずきん

2020年07月31日 | グリム

 「赤ずきん」で楽しいのは、赤ずきんとおおかみのやりとりでしょうか。

 「おばあさんは、なんておおきな耳をしているんでしょう」
 「おまえの言うことがよく聞こえるようだよ」
 「なんて大きな目をしてるんでしょう」
 「おまえのことが、よく見えるようにだよ」
 「なんて大きな手をしてるんでしょう」
 「おまえを、よくつかめるようにだよ」
 「なんて大きな口をしてるんでしょう」
 「おまえを、一口に食えるようにだよ」

 リズムがあるやりとり。怖さが段々ます場面です。

 ところで、でだし、かわいい女の子が登場するのですが、やはり可愛くなければいけないのでしょうか。おおかみが食べるのに見た目は関係ないのですが、男の視点でしょうか。

 かわいい女の子は、おばあさんからつくってもらった赤いずきんが気にいって、ほかのものをかぶろうとしなくなったというのですが、ペロー以前の原型では少女は赤い頭巾をかぶっておらず、この部分はペローが加えたといいます。

 赤ずきんがでかけるのは三十分ほどの森の中に住んでいるおばあさんのところ。
 森の中に危険がありそうにもかかわらず、おかあさんは赤ずきんをわざわざ一人でおばあさんのところにやるのは、いろいろ体験をさせるためなのでしょうか?

 おばあさんが森の中に住んでいるのは、年老いた者を捨てる背景があるという解釈も読んだことがあります。

 赤ずきんがおばあさんのところにもっていくものをケーキとワインと訳しているのもあれば、お菓子とぶどう酒と訳しているものもあります。

 おおかみがおばあさんを飲み込んでから、ねまきとナイトキャップをかぶるところは、ねまきとずきんとしているものもあります。

 狩人と猟師とでは、どちらが聞いていてわかりやすいでしょうか。

 「赤ずきん」というと、最後、おおかみのおなかをハサミで切ると、おばあさん、赤ずきんがでてきますが、これはグリム兄弟がくわえたもので、原型では、赤ずきんが食べられるところでおわります。(世界むかし話 フランス・スイス/八木田宣子・訳/ほるぷ出版/1988年)

 ほるぷ出版版では、赤ずきんがおばあさんのところにもっていくのは、ケーキとバターの壺です。ワインやぶどう酒と訳されているのが多く、小さな子にお酒?を持たせたというのにひっかかっていましたが、ケーキとバターで、すっきりしました。さらにほるぷ出版のものでは、おばあさんが住んでいるのは、森ではなく、村で水車小屋のそばです。

 フローラ・アニー・スティールが編者になっているというイギリスの昔話(夜ふけに読みたい不思議なイギリスのおとぎ話/吉澤康子・和爾桃子:編・訳/平凡社/2019年)では、「赤ずきんちゃん」というタイトル。

 赤ずきんがおばあさんのお見舞いにもっていくのは、ケーキとバター。赤ずきんは自分の意思でお花を集めに行き、オオカミに食べられたところでおわります。オオカミとのやり取りには足もでてきます。

 「おばあさん、ずいぶん腕が長いのねえ!」
 「おまえをぎゆっと抱きしめられるようにさ」

 「おばあさん、ずいぶん足が大きいのね!」
 「早く走れるようにさ!」

 「おばあさん、ずいぶん目が大きいのねえ!」
 「よく見えるようにさ!」

 「おばあさん、ずいぶん歯が大きいのねえ!」
 「おまえを、ぱっくと食べられるようにさ!」

 訳がいろいろあると、どれを選択するか悩むところです。

 「赤ずきん」は、もともと北欧神話で、オオカミのフエンリルという冬の魔物が太陽を飲みこむので、北欧の冬はまっくらという。じつは赤ずきんの正体は太陽で、オオカミはフエンリルといいます。



    赤ずきん/バーナディット・ワッツ・絵 生野 幸吉・訳/岩波書店/1976年

 ワッツ絵では、赤ずきんが住んでいる家は、4階建て、おばあさんがすんでいる小屋は、鬱蒼とした森の中。赤ずきんが寄り道したのは、おばあさんに花をもっていくためですが、どうしても摘んでみたい花です。
 メガネをかけたオオカミがチャーミングに見えちゃうのはご愛敬です。
 石を詰められたオオカミのおなかには、ちゃんと縫ったあとがあって、倒れてしまうところは4枚の絵で表現されています。


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