日本の民話9 太平の天下/瀬川拓男・松谷みよ子・編著/角川書店/1973年初版
アラビアンナイトの「背中にこぶのある男」は、人を殺したと思い込んだ仕立て屋が、死んだと思った男を医者の家に、医者は料理人へ、料理人は商人とたらいまわししていく。
人を殺した罪で商人が死刑になりそうになるが、かかわった者が正直に自分が殺したと次々に名乗り出て、実は死んでいなかったという落ち。
知恵の権六も、死体をたらいまわすところは、同じですが、この話は死体のままです。
ある村に同じ名の権六が6人。
頭のいいのが知恵の権六
田を作っている百姓権六
米屋をしている米屋権六
手癖のわるい、どろぼう権六
ならずもののばくち権六
一番年上の庄屋権六
知恵の権六が、かかあがどこかの男が一つ布団に寝ているのをみて、かっとして割り木で思い切り男をどやすと、当たり所が悪かったか、男は目を回して死んでしまう。よくみると男は庄屋の権六じじい。
こまった知恵の権六は、かかあに背負わせて、田の水口へ庄屋権六を置きます。
百姓権六が、田の水どろぼうと思って、鍬で黒い影を突き出すと、黒い影は水の中にころがり、よくみると庄屋権六。
百姓権六が、知恵の権六に銭はいくらでもだすからと相談すると、死体を米屋の権六の米俵に入れるようにいわれます。
次にこの米俵を盗んだのがどころぼう権六。あけてみると庄屋の死体が入っているのをみて、どろぼう権六も知恵の権六に相談に行きます。
今度はばくちの権六のところへ。
そして最後は庄屋のところへ。
庄屋のばあさんをうまくだまして、熱病で亡くなったことにおさめます。
みんなから、金でたのまれた権六。一夜のうちにたいそうな金もうけをします。
子どもには遠慮したい話ですが、大人のためのおはなし会だったら語ってみても楽しいかなと思わせます。
「背中にこぶのある男」のような結末も考えられそうです。
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