どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

むだな時間

2019年11月05日 | 星 新一

        ゆきとどいた生活/星新一YAセレクション/和田誠・絵/理論社/2008年

 

 テレビをみているとつい煩わしくなるのが、コマーシャル。それもいいところでコマーシャルがはいってきて、引き続き見ろといわんばかり。しかし民間テレビが無料で視聴できるのもスポンサーの広告料のおかげ。

 これまでかずかずの新発明を世に送り出してきたエル博士は80歳をこえていた。息子は50歳ぐらいで広告会社を経営。

 久しぶりにたずねた息子は、父親から一つの発明をしたことを聞かされる。テレビのコマーシャルを消してしまうというもの。たしかにテレビをみていると、番組と番組との間に、コマーシャルはなかった。

 テレビにコマーシャルが流れないと息子の広告会社はなりたたなくなる。父親にたずねると、コマーシャル消し器は、コマーシャルが流れると、自動的に反応し、無害の睡眠電波を視聴者にあてるので、その間だけ人間が眠るという仕掛け。

 息子は、装置をつけた家庭は泥棒にはいられる、立っていた人は倒れる、発作が起こってもすぐ薬をのめないなどと欠点をあげ、個人的な利用にとどめてくれとたのみこみます。

 その後、息子は広告業にせいをだし、エル博士はのんびりとテレビをみたりする平穏な日々。

 エル博士が天寿を全うする日がおとずれたとき、息子は、老後をのばせるという薬を常用すれば、病気に負けないといいますが、エル博士はコマーシャルをみないので、そんな薬があるのを知らない。

 息子は老後を一割のばせるというキャッチフレーズをつくっていました。父親は「なにも残念がることはない。いままで見ないできたコマーシャルの時間だ。それを見直すなら、その分だけながいきさせてやるといわれても、わしは、ことわるよ」と。

 テレビのコマーシャルの時間を積み重ねるととんでもない時間になりそうですよ。NHKもやたらに番組の広告が多い。それもBS。BSを見ない人には余計なおせっかい。 


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