どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

夢にまつわる昔話・・スワファムの行商人、味噌買橋ほか

2020年09月12日 | 昔話(日本・外国)

 古来から夢をみつづけた人間。読み進めると、この国にも同じようなものがあると知ると、なにか楽しくなります。「話千両型」というのですが、夢をみた人が他の人から、その意味を教えてもらうものと、話そのものを買うという二つのパターンがあるようです。


スワファムの行商人(イギリスとアイルランドの昔話/石井桃子編・訳/福音館書店)

 スワファムというところの行商人が、夢に導かれて、ロンドン橋に行きます。しかしいつまでたってもいいたよりは耳にはいってきません。

 しかし近くの店の主人が自分も夢をみたといって、行商人の家の果物畑のカシの木下を掘ると宝物が見つかるという話をします。

 店の主人は、ばかばかしいと思って話をしますが、この話を聞いた行商人が家に帰ってカシの木の下を掘り起こすと宝物が出てきます。
 
 足元をみつめてごらんなさいといったところか。

 また、<新編世界むかしはなし集1 イギリス編/山室 静・編著/文元社/2004年初版>では、「ロンドン橋の上で」という題名です。


あの連中(マン島の妖精物語/ソフィア・モリソン・著 ニコルズ恵美子・訳 山内玲子・監訳/筑摩書房1994年初版)

 同じイギリスのマン島の話です。
 「スワファムの行商人」と同じ内容なのですが、夢ではなく「小さなやつ」にいわれて、ロンドン橋にいくというでだしです。
 「小さなやつ」とは、妖精のことですが、マン島の人たちは妖精とはいわず「ちっちゃいやつら」「あの連中」とも。
 このあたりは、「ハリーポッター」のヴォルデモートと同じでしょうか。ヴォルデモートも名前はいっていけない人物としてあらわれます。

 おもしろいのはマン島。世界最古の議会をもち、1979年には議会千年祭がひらかれたといいます。人口は8万人ほどですが、歴史を調べてみると興味深いことばかりです。


ハンスのゆめ(世界むかし話 フランス・スイス/八木田宣子・訳/ほるぷ出版/1988年)

 スイスの昔話です。
 牧夫のハンスは、びんぼうでしたが、男ぶりのいい男。金持ちの美しいむすめに恋しますが、娘の父親は許可をだしません。

 ある日、ハンスは不思議な夢をみます。橋の上にたっていると、一人の男がそばにきて、一生ハンスをたすけてくれるようなことを、なにかいおうとしましたが、その前にハンスは目が覚めてしまいます。
 ハンスは町の橋の上で夢の中の男にあおうとしますが、何時間まっても、夢の中の男はあらわれません。
 辛抱強く待ち続けるハンスでしたが、そばをとおりかかった男が自分がみた夢を話します。
 それはハンスが住む山小屋の床下に金銀の入った壺をみつけたというものでした。
 この話を聞いたハンスが小屋の床板をあげてみると・・・。

 スイス版は、ほかのものよりストーリー性があります。


悪魔の宿屋(新装世界の民話11 地中海/小澤俊夫・編/ぎょうせい/1999年新装版)

 コルシカ島の話ですが、コルシカ島といえばいうまでもなく、ナポレオンの出身地。
 同じ夢でも、15フランで三つの忠告を買うもの。

 ひとつは、よその人のことに頭をつっこまないこと。二つ目は、新しい道のために古い道をすててはいけない。三つ目は、見ざる聞かざること。忠告を買うという話も、アジアからヨーロッパに広く分布しているといいますが、ヨーロッパのものはあまり紹介されていない気がします。

 舞台は悪魔が経営をする宿屋。うんと醜い顔をした悪魔の息子に、客が同情して、どうしたと尋ねようものなら客は地下の国へ(地下の国は地獄?)。

 悪魔の息子に同情する客のおかげで、地下の国はいつもいっぱい。

 貧しい母親から幸運をつかむようにいわれた三人兄弟の上の二人は、やはりこの宿屋の犠牲に。

 末っ子も兄と同じように15フランをもってでかけますが、途中であったのは美しい貴婦人。貴婦人は幸運を探す出すには15フランで忠告を買うことだといいます。

 新しい道をいかなかったので、命がたすかり、大喧嘩をしている二人にかかわらないことで、やはり命が助かります。
 そして、宿屋で見ざる聞かざるを貫いたので、末っ子は無事に旅を続けることができます。

 末っ子が幸運をみつけたかどうか、話し手は知らないとやや冷たく終わります。

 旅の途中にでてくるのはおばあさんだったりおじいさんが多いのですが、ここでは貴婦人。婦人は聖マリアさまです。

 ことわざや忠言には、人生の教訓がこめられているので、先人の教えを大切にしなさいということでしょう。 


・秋田県の「徳五郎翁の昔ばなし」のなかにある「話を買った男」では、「大木の下に長居するな」「訳のわからないご馳走になるな」「短気は損気」という3つがでてきます。


味噌買橋(日本) 

 「スワファムの行商人」と同じ内容ですが、味噌買橋にでてくるのは正直な炭焼きです。
 夢、橋、自分のそばに宝物がねむっているというのが共通の要素です。

 イギリスの話に、にていると思っていたら、「味噌買橋」は、岐阜県高山市の小学校の先生が翻案したものが広まったものといいます。

 橋は、村の境にあることが多く、地上と水界が接するところでもあり、異郷との接点でもあるといいます。


夢を買った話(宇治拾遺物語/川端義明/岩波少年文庫/1995年初版)

 宇治拾遺物語に、夢占いの女のところで、備中の国司の長男が相談しているのを聞いた郡司が、夢を引き取り、ひたすら勉強し、やがて遣唐使になって、長い間学問や技術を習い覚え、やがて大臣にまで任命されます。ただし、この夢はきっかけになっただけのようです。 

 当時の役職なので少しイメージがわきにくいところがありますが、話はシンプルですから、語ってもよさそうな話です。


 このほか日本の昔話/柳田国男/新潮文庫/1983年にも、夢がテーマになっている昔話があります。   

・「夢見小僧」は正月二日に見た夢を話すことからはじまりますが、ここでは最後になってみた夢を話します。

・「夢を買うた三弥大尽」は、夢をお酒で買いとります。

 日向の国の三弥という貧乏な旅商人が、仲間と二人連れで旅の途中、一休みしていると、連れが珍しい夢をみたといいだします。近くの山に金がいっぱいになっているところがあるというのです。
 三弥は、何日の後に、一人でこの土地に戻ってきて、山を捜しまわり、外録という金山を見つけ出します。ところが、三弥が死んでしまうと、すぐに大地震がおこって金山が崩れ、今では沼になっていると結んでいます。話を聞いた人が、本気にして探さないように忠告したのかも。
  
・「夢と財宝」(福井県)

 越前のある村の源治という一人者の男がいましたが、源治はろくに働きもしないで、何か楽に儲けられないかといつもいつも思っていました。

 年の瀬を迎えた早朝、あたりには霜が降りてすっかり白くなるなかで、隣に住む働き者の爺さんが、霜の降りている庭に出て何かを探していました。

 隣の爺さんは「菅笠程のサイズで丸く霜の降りてないところを掘ると、宝が出てくる」という夢のお告げがあったことを話します。

 それを聞いた源治は、夜の間に爺さんの家の前に菅笠を置いて、丸く霜の降りていない場所を作ります。翌朝、そうとも知らない爺さんは、源治の作った丸い場所を見つけて、さっそく掘り始めます。

 源治は冗談のつもりでしたが、なんと驚いたことに本当に小判の詰まった壺がでてきます。これには源治も驚き、自分の家の庭でもやってみようと考え、その夜、源治は沢山の菅笠を買って自分の庭に敷き詰めますが・・・。

 

夢見(群馬)(いまに語りつぐ日本民話集8/動物昔話・本格昔話/監修:野村純一・松谷みよ子/作品社/2001年)

 正月の夢見の晩に、主人が奉公人を集めると「いい夢をみたもんにゃ、たんとお金を出して買うから、みんないい夢をみてくんろ」といいます。次の日、主人は一番番頭からひとりひとり夢を聞いては買っていきます。

 ところが一番最後の小僧が夢を売ることはできないと言い張ります。怒った主人は小僧を箱につめ、川に流してしまいます。

 小僧の入った箱は岩や石にぶつかりながら流れていきますが、川の中ほどで、でっかい石にぶつかりこわれてしまいます。そこへカッパがチョチョロと泳いできました。

 小僧はカッパから川たびを、すこしだけと借りだし、ショロショロと川を下っていきます。小僧がなかなかかえってこないので心配になったカッパでしたが、もどってきた小僧にかえすようにいうと、ただでかえすわけにはいかないといいだした小僧。

 やむをえず、カッパは、生き針、死に針というたからものを小僧にあげてしまいます。

 川から上がった小僧が、家にかえる途中、ある大尽の家で、娘が死んだと大騒ぎ。カッパからもらった生き針で娘を生きかえすと、小僧は、娘の婿になってほしいといわれますが、これを断わります。

 次の村で、また大尽の娘が死んだと大騒ぎ。ここでも生き針で娘は生き返ります。ここでも婿になってくれるよう頼まれますが、小僧はこれも断ります。

 ところが、あとから二人の娘がおっかけてきて、婿になってくれるよう小僧の両袖をひっぱります。

 小僧が「いてぇ、いてぇ」というと、ひとりの娘が手をはなします。そこで小僧は手を離した娘の婿になって、いつまでもしあわせに暮らします。

 生き針がでてきたら、死に針の出番もありそうですが、ここでは出番がありませんでした。死に針がでてきたら、もっと長い話に。


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