どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

亀と猿・・フィリピン

2024年06月12日 | 昔話(東南アジア)

      比島民譚集/火野葦平・著 川上澄生・絵/国書刊行会/2024年

 

 類似といっても ところかわれば・・

 川を一本のバナナの茎が流れているのを見た亀が、木はふたりで、葉は亀がとるという約束で、岸にあげると、猿が葉のついている方を自分でとり、亀には根元しか残らなかった。内気な亀は、猿と喧嘩することは思いもよらなかったので、それを森に植えた。亀の方には、やがてふさふさしたバナナの実がなった。

 バナナが熟れたことを知った猿は、友だちの亀をおとずれた。亀が、「君が木にのぼって、バナナのみをもいできてくれるなら、君にバナナを半分やろう。」というと、猿は、またたくまに木のてっぺんにのぼり、がつがつと食べてしまうと、皮は下にいる友人に向かって投げつけた。

 「ただではおかぬ」と亀はひとりごとをいい、さきの尖った枝を拾い集め、バナナの木のまわりにさすと、大声で「猟師がきた。漁師がきた」と叫んだ。驚いた猿は逃げようとして飛び降りたが、、鋭い枝につきさされて、まもなく死んだ。

 猿が死ぬと、亀は猿の皮をはぎ、肉を干して、近所にいる猿たちにそれを売った。ところが皮をはぐときに、亀が不注意であったため、肉のあちこちに毛がくっついていた。このことから、肉を買った猿たちは自分の仲間を殺したのが亀であることを知り、亀をつかまえ、裁判することに。

 猿の親方が、かれを焼いてしまえというと、亀は、「火は僕を焼くことはできないよ。親父がたびたび僕を焼こうとしたんだ」
 猿の親方が、「火がだめならこなごなに切り裂いてしまえ」というと、亀は、「僕の背中は切傷だらけだ。親父がなんどもなんども僕を切り裂こうとしたんだ」
 猿の仲間のうちでもすこし頭のよいのが、「湖につれていっておぼれさせてやろう」というと、亀はよろこんで、こわそうなふりをして、湖に投げ込むのはやめてくれと哀願した。
 猿たちはすぐに亀を湖につれていって、投げ込んだ。いったんしずんだ亀は、やがて水面に顔を出して、大声で猿たちを笑った。


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